第2話 ーーーマイルームって何?ーーー
俺の怪我は、全治一ヶ月、左足の骨折と頭に七針を縫う怪我だった。トラックの運転手が犬好きで女の子の連れていた犬が自分が飼っている犬と同じ種類だったらしくスピードを落としたところに俺が車道に出てきたみたいで、頭は打ったが内蔵は大丈夫だったらしい。
頭を打った衝撃で気絶状態から、心臓が止まり俺が病院で目を覚ました時は医者の死亡宣告がなされた後だったみたいだ。
医者が病室を出て行き、家族でお別れをしている時に、目を覚ましたのだから、みんな驚いていた。だけど、二葉姉だけは、医者が出て行き俺が目を覚ますまで諦めず心臓マッサージをしながら俺の名前を叫んでいたそうだ。
再度検査をして、脳内に出血などの異常も見られず、ショック状態からの心停止だったのではないかと医者が言っていた。
「俺がこうしていられるのも、二葉姉をはじめ、家族のおかげだ」
俺は、みんなに感謝するとともに退院したらみんなに美味いものでも作ってあげよう。特に、二葉姉の好物の唐揚げを大奮発しようと決めていた。それより、俺が入院していて家の事が回るのか心配だったが、「みんなが協力してやってるよ」と三季姉がお見舞いに来た時言っていたので、余計に心配になった。
それと、受験の事は気になるが、俺は自分で言うのもなんだが、割と勉強ができる方だ。ランクを落としても、それなりの高校に入れるだろうと呑気に考えていた。
また、一郎兄の結婚式を伸ばそうという一郎兄と由香里先生の意見があったが、順調にいけば、俺は退院しているはずで、松葉杖を付きながら出席できそうだ。
「あとは、バイトの新聞配達か……」
バイトは、高校受験もあり、学校にも内緒でしていたので辞めることになった。
「あのグッズの品々が……」
買えなくなる事が、一番残念だ。もう一つ、入院中に学校で体育祭が行われたと皐月が言っていた。運動は、どうも苦手なので得した気分だった。
入院中は、リハビリ以外何もする事がないので、受験勉強と本を呼んで時間を過ごす。
入院部屋はトラック会社の好意で個室が与えられていた。トイレも付いていて家よりも快適だが、あの騒がしくて狭い家に無性に帰りたかった。
目を閉じると、あの時のことを思い出す。あの白い部屋の目の大きな女性は誰だったのだろうか……何がしたかったのだろうか……
もう顔も思い出せないが、不思議な体験としての記憶が残っている。
頭の怪我の抜糸が済み、あと3日で退院できると聞いた夜、目を閉じるとチカチカと小さな光の点滅が見える様になった。気になる程ではないがスッキリしない。
「頭を打った時の後遺症か……?明日、先生に聞いてみよう」
そう思いながら、その点滅を見つめていると表みたいな表示になった。
「あれっ!この表示は、ゲームなんかのステータス表みたいだ」
そう、心で呟いた時、俺のステータス表がはっきり映し出された。
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シロウ スズカゼ(14) 人族 平民 職業 学生
Lv 1
HP 8/15
MP 15/15
左足骨折 頭部怪我 全身打身
SKILL(100P)
鑑定 Lv 1
マイルーム Lv 1
家事 手伝い Lv 1
獲得経験値10倍
全マップ探策
言語能力(日本語 Lv 5 英語 Lv 1 ミリエナ共通語 Lv 1)
【称号】 鈴風家四人目 家事担当者 折り込みチラシ研究者 趣味道楽家 造形美愛好家 隠蔽者 女神の失態目撃者 奇跡の生還者
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「なんじゃ、これはーー!」
これは、ゲーム?いや、ラノベやアニメで馴染みの異世界転生もののステータス表示だ。こ、これはどういうこと……?
そう考えれば……
あの時会った、目の大きな女性……慌てた様子で叫んでた……
「鈴風さん、どうかしましたか?」
突然、看護士さんが入ってきた。
「あっ!何でもないです……」
俺は、声を出して叫んでいたみたいだ。平静を装って返事をする。
「四郎君、もう消灯時間過ぎてますよ。大丈夫そうなら休んで下さいね」
そういって、看護士さんは部屋を出て行った。
病院で、この事を調べるにはまずい気がする。アニメ何かだと、誰かに知られたら最悪研究施設送りのパターンだ。誰にも知られない様にしないと……
俺は何故かそう思う事が良いと判断した。
俺はさっきのステータス表を検証してみた。
ステータス表は「ステータス」と念じると開くみたいだ。「名前、年齢、人族?」これは、人間だという事だろう。
「平民?」確かに貴族じゃないし…「職業 学生」これは、そのままだ。「勇者」とかじゃなくて、なんか納得した。「HP、MP」これはゲームで馴染みの体力と魔力だ。
「もしかしたら、魔法が使えるのか?この日本で……」
MPの数値記載されているから、もしかしたら……なんかワクワクしてきた。
SKILLは、能力なのだろう。うん、きっとそうだ。記載されているのは、「鑑定」「マイルーム?」「家事 手伝い」「獲得経験値10倍」「全マップ探索」「言語能力」……マイルームって? 何、それ? 獲得経験値10倍って、これ、チートだよね。
これがこの日本でどう反映されるのか……?う〜〜ん。わからないのは後回しだ。
【称号】 鈴風家四人目 家事担当者 折り込みチラシ研究者 残念趣味道楽家 造形美愛好家 隠蔽者 女神の失態目撃者 奇跡の生還者
鈴風家四人目、家事担当者は理解できる。折り込みチラシ研究者ってひどくない?
確かに、家の間取りを見るのは好きだよ。それに、スーパーの安売り情報とか……
そうか……言ってて納得した。
残念趣味道楽化 造形美愛好家 これは、趣味の関係だ。うん、うん、って残念って何? 俺の趣味は確かに、世間一般から白い目で見られる事があるけど、アレは、至高の品々だよ。それを残念って……この件については、まぁーーあとで考えよう。
隠蔽者って、趣味を隠してた事でついたのか?称号の判定基準がわからない……
女神の失態目撃者って俺の事?曖昧だけど、あの時のことかもしれない……
あの人、女神だったんだ……
奇跡の生還者、医者が俺の事をそう言ってたと聞いた。う〜〜ん、よくわからん!
ステータス表示がリアルで見られる事が奇跡みたいな事だから、あまり深く考えても仕方がないのかもしれない。
「そうだ。これ、俺以外の人でも見られるのか?」
もし見られるとしたら、これはこれでとても便利だ。明日、皐月が来るって言ってたから、その時に試してみよう。家族なら、もしバレても安心だしね。
あとはスキルだ。
「鑑定」は、どうすればいいのだろう?もしかして、ステータス表示が鑑定なのか? 俺は、枕を見つめて「鑑定」と念じた。すると、
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枕 素材 ーーー
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「おっーー!できた。ステータス表示みたいに見える」
俺は面白くって目につくものを鑑定しまくった。すると、『ポニャ』って頭の中で音がなり、鑑定のレベルが2に上がったのを理解した。
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枕 素材 ーーー
寝るときに頭を乗せる寝具。
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表示されるのは、名前だけだっのが、意味までわかるようになった。なんか、ワクワクする。レベルが上がればもっと詳しくわかるのかもしれない。これは便利な代物だ。
「鑑定様、様だ」
というか、こんなんでレベル上がるの? いいのこれで?
きっと「獲得経験値10倍」のスキルが凄すぎるのでは……。10倍ということは一回の鑑定で10回分の鑑定をした事になるのか? やっぱチートだ!
次は、見慣れないマイルームだ。確かに俺は自分の部屋が欲しいよ。でも、スキルでマイルームってどうなの?攻撃系のものじゃなさそうだし、それに「家事 手伝い」って、俺は『主婦か!』確かに家の家事してたけど、これってスキルなの?このまま異世界行ってたら、獲得経験値10倍と役に立ちそうな全マップ探策あるけど戦闘力無いし「即、終了!」だったんじゃないの?
「マジ生き返って良かったと思う」
しかし、このマイルームってどう使うの?ヘルプ機能とかないのか……
すると、ステータス表示なようなものが開いて出て来た。
ーー[マイルーム]ーー
亜空間に自分の部屋を作る能力。スキルポイントで拡張、物品を購入出来ます。
「ウォーー!何これっ!最高じゃないかーー!まさに、俺のためのスキルだ。これを使えば、亜空間に俺だけの部屋が作れる?すごいっ!すごすぎるっ!!やったーー!これで、念願のフィギュア達が飾れるーー!」
すると、
「鈴風さん!まだ起きてるの?」
さっきの看護士さんが入ってきた。
「若いから元気が余ってるのかもしれないけど規則だから、休んでくだいさね。じゃないと太〜〜いお注射しちゃうから」
「すみません……」
「じゃあ、四郎君、おやすみ……」
そう意味深な言葉を残して看護士さんは出て行った。
「ヤバイ、ヤバイ。今日はこの辺にしておこう……」
俺は、興奮が収まらないまま、朝を迎えてしまった。
◇◇◇
翌日は、眠くてリハビリ中に転けそうになった。皐月がお見舞いに来るまで少し寝ようと思う。
「お兄、お兄……」
皐月の声がする……
「お兄……バカ兄っ!」
「おぉーー皐月か?おはよう……」
「何言ってんの?バカなの?もう夕方よ」
「そうか……」
「お兄が言ってた本、持ってきたよ。はい!」
「おぉーーありがとう。これで、暇が潰せる」
「お兄は呑気でいいわねーー。私も入院しようかなぁ」
「健康な人が言っていい言葉じゃないぞ。全国の入院患者に謝れ!」
「お兄見てると、文句言いたくなるんだからしょうがないでしょ」
皐月の顔色が何か優れないような気がした。そうだ。あれを試してみよう。
【ステータス オープン】
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サツキ スズカゼ(12) 人族 平民 職業 学生
Lv 1
HP 9/12
MP 24/24
気鬱状態(小)
SKILL
言語能力(日本語 Lv 6 英語 Lv 2)
【称号】 鈴風家五人目 家事補助者 勤勉家 努力家 お兄大好きっ子 イジメられっ子 我慢耐性保持者
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皐月のステータスが表示された。もちろん、皐月には見えてない。
魔力高っ!それに、言語能力が俺より優ってる……。
お兄大好きっ子って……これは、一郎兄の事か?……もしかして……俺の事?
……皐月の尊厳の為に見なかったことにしよう。そうしよう……。
すると、俺は気になる項目が目に付いた。
『気鬱状態(小)』『イジメられっ子』
皐月はイジメを受けてるのか?いつから?今までそんな素振り見せた事無かったのに……、俺が気づかなかっただけか?他の姉妹は?母さんは知ってるの?嫌、皐月の性格からして、イジメられてる事を話す事は無い。皐月は、いつも自分で抱えてしまう子だから……
「お兄、どうしたの?アホずらして」
「皐月さん、お兄ちゃんにそんな酷い言葉をなげかててはいけませんよ」
「だって、ボーーっとしてたよ」
「それはね。深淵の暗闇を覗いていたんだよ」
「何言ってんの!キモい」
皐月の言葉と同時に石膏で固めた左足にチョップがくだる。
「痛たたーー。くっついた骨がまた、折れるだろう」
「お兄が悪いの!」
「何でじゃーー」
と軽いツッコミを入れてみた。皐月の顔に笑顔が戻る。
「そうだ。冷蔵庫に、二葉姉が買ってくれたオレンジジュースが入ってるよ」
「ちょうど喉乾いてたんだ。もらうね」
………
「皐月……突然だけど、何か悩んでる?」
「ほんと、突然ね。何で?」
「いやーー、ただ何となくさ」
「特に無いよ」
「そうか……もし自分に抱えられなくなったら俺に言うんだぞ。これは、兄貴命令だ」
「何偉そうに言ってんの。もし、何かあっても四郎兄には言いません。一郎兄に言います」
「そんなに俺、頼りないか?まぁ一郎兄には負けるけど……」
「頼りない言っていうか、お兄の今の姿みたら、そんな言葉出てこないと思う。だって、左足ギブスマンだよ。おまけに松葉杖使いだし、満身創痍のゴーレム状態だよ。良いとこ無いじゃん」
「ごもっともです」
俺と皐月は笑いあった。少しは元気になってくれたらと思う。イジメの内容はわからないけど、俺の可愛い妹を泣かす奴は許しておけない。退院したら制裁しなければ……
「もう帰るね。何かあったらメールして。じゃあ、行くね」
「おう、また来いよ」
「明後日退院でしょ。何言ってんだか」
「そうだった」
「じゃあ」
そう言って帰って行った皐月の顔は、少し明るい皐月に戻ってた気がした。
◇◇◇
俺は、病院では能力を試すのをためらっていたが、皐月の件もあり、最善の解決を能力を使えばできるのではないかと思い気になっていた『マイルーム』を試す事にした。発動はきっと鑑定などと同じく念じればOKの筈だ。
今は、まだ5時前、夕食までは1時間半ある。この間に、看護士がこの部屋に来る事は無いと経験上からわかっていた。
俺は、【マイルーム】と念じてみた。
すると、ヘルプ機能が展開して色々な項目が出現する。
ーーマイルームーー
マイルーム基本セット(100P)
部屋サイズ約6畳(高さ2、5m、フローリング ベーシック壁紙)トイレ 浴室完備 スモールキッチン ドア1 窓1 照明
ーーマイルームカスタマイズーー
[部屋のサイズ]
3m×3m (30P)
5m×5m (50P)
10m×10m (100P)
[部屋の高さ]
1m (10P)
2m (15P)
3m (20P)
[床]
合成材フローリング (5P)
畳 (5P)
絨毯 (5P)
無垢材フローリング (10P)
[壁]
ベーシック壁紙 (5P)
和風 (5P)
煉瓦 (5P)
無垢木材 (10P)
[設備機器]
水洗トイレ (10P)
洗面、浴室 (20P)
キッチンセット (20P)
[窓、ドア]
窓(小) (10P)
窓(中) (20P)
ドア 1 (10P)
ドア 2 (20P)
[照明]
基本セット (5P)
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他にも、家具や小物、電化製品など色々ある。
これは困った。カスタマイズ出来るらしい。自分の趣味を基調として細かく選びたい。だが、希望のカスタマイズをするとポイントが足らない。散々悩んだ挙句、俺はマイルーム基本セットにする事にした。セットということでカスタマイズりもお得になっている。
スキルポイント全部つぎ込むのは、少し抵抗あったが、どうやってらポインが溜まるのかわからない以上、深く考えない事にした。
「スキルポイント100をマイルーム基本セットに投入」
そう念じると、木目調のありふれたドアが何も無い空間から出現した。ドアの前には『シロウの部屋』と表札のような取り外しのできるネームプレートが付いていた。
俺は期待と不安の混じった気持ちでドアを開ける。すると、よく見るワンルームの部屋がそこに存在していた。
「おぉーー!」
俺は、感動して言葉が出なかった。夢にまでみた自分の部屋がそこにあるのだ。家具がないため殺風景だが、それでも、感動で胸がいっぱいだ。このスキルをくれたあの目の大きい女神に感謝した。
部屋の中をとりあえず見回っていると、俺は元の病室に帰れるのかと不安になった。入ってきたドアを開ければ、戻れると思って俺は、ドアに手を部屋の中から開いた。すると、さっきまでいた病室に戻る事が出来た。ドアは自然と消滅していた。
何となくこのスキル、マイルームがわかった気がした。ポイントと投入すれば、さらに使い勝手がよくなるはずだ。色々試したい事があったが、病室に二葉姉がやって来た。
「ヤバイ、見つかるとこだった……」
俺は、心の中で安堵する。
「四郎ーー、元気してるーー?」
二葉姉の明るい声が響く。
「二葉姉、これから仕事でしょう。無理に来なくても良かったのに……」
「四郎をとりあえず構ってからじゃないと、仕事がはかどんないのよ」
「正直に心配だから見に来たって言えば」
「ほんと生意気になったわねーー。お仕置きよ」
「わかった。グフゥ く、苦しいよ。二葉姉……」
「これに懲りたら、生意気な事言わないのよ。昔みたいに、二葉オネーちゃんって甘えればいいの。わかった?」
「それは、無理だよ。もう子供じゃないし」
「私から見たら、まだまだ子供よ」
「わかった。まいったよ。だから、手を解いてよ」
「わかればいいのよ。四郎はお仕置きしないと物分かりが悪いんだから」
「はい、はい」
「返事は一回でいいの!」
二葉姉のスリーパーホールドは、とても痛気持ちいい。きっと、柔らかい部分が多いせいだ。
「明後日、退院でしょう。迎えに来るわね」
「いいよ。無理しなくて。いつも寝てる時間でしょう」
「大丈夫よ。お酒控えるから。それに、その日は早めに上がらせてもらうわ。もう店長に言ってあるの。だから心配しないで、全部オネーちゃんに任せなさい」
「わかった。ありがとう。二葉姉。あとで腕によりをかけて二葉姉にご馳走するよ」
「ほんと?四郎のご飯が早く食べたいわ。それまで、地獄のようなご飯だったから」
「三季姉も料理したの?よく死ななかったね」
「お腹は壊したけどね。少し痩せたでしょう。そういう意味では、三季は役にたつのよ。でも、もう限界だわ」
「災難だったね。同情するよ」
「あっ、三季には黙っててね。あれでも落ち込むから」
「わかってるよ。安心して」
「じゃあ、私そろそろ行くわね。四郎、ゆっくり休んで」
「ありがとう。じゃあ」
「うん。じゃあね」
そう言って、二葉姉は部屋を出て言った。二葉姉は、ほとんど毎日出勤前にお見舞に来てくれる。その思いに嬉しく思った。
それにしても、あれが見つからなくてよかった。もっと慎重に行動しなければ…
俺は、能力を試す場所と時間を考えていた。




