第19話 ーーー転校生はーーー
「おいシロウ。今日、転校生が来るんだってよ」
「こんな時期にか?」
「なんか外国の子らしい。女の子だって話聞いたぜ」
「そうか。俺は、今、そんな事で喜んでる余裕ないんだよ」
「相変わらず、お前は二次元オタだな」
「バカ。それ言うなって……」
「あははは」
俺と話しているのは、同じ都営団地に住む幼馴染の大林 隼人。俺のオタグッズを匿ってくれている自分部屋を持つ羨ま、けしからん奴だ。
今は、学校の授業前。もうすぐ担任が来そうだ。
俺達は、あれから、宿屋に戻り、みんなでマイルームに入って日本に戻った。そして、俺は、今、窮地に立たされている。南の穀倉地帯に現れるキングウルフの討伐と、王女達に一千年前の戦争の事を教えてもらう日がダブルブッキングしている。
……あの時は、テンパってて忘れてたんだよーー……
それに、あの孤児院の件も早めに解決しなければ、被害が出てからでは遅い。そして、この間行われた模試の返却があった。高校受験など少しランクを落とせば余裕と高をくくっていたのが裏目に出た。このままだと、更にランクを落とさなければ高校に入れない。
……あーーどうしてこうなった?………
「よっし。お前ら席につけ。今日は、転校生が来てる。みんな仲良くな」
銀髪の美少女が教室に入ってきた。
『何、すげーー美人きたーー!』
『可愛いーー!』
何故かリーナが俺のクラスに転校してきたのだ。
……マジかーー!今朝、何も言ってなかったのに……
「とある外国の小国から転校してきました、サリーナ=アスモです。リーナとお呼び下さい。皆さん宜しくお願いします」
『おっーー!!』
『やったーー!!』
『綺麗な銀髪ねーー』
『可愛いーー。お人形さんみたい』
すごい歓声だ。主に男子だけど……
「お前ら、騒ぐな。うるさいぞ!そこ、写真撮るな!じゃあ、サリーナさんそこの空いてる席に座って下さい」
「いいえ、私は、日本に来たばかりですから、いろいろ教えて頂かないといけません。それに、私は、シロウ スズカゼ のものです。シロウの隣の席を希望します」
……この子、何言ってんのーー、日本でそんな事言ったら……
『えっーー!!』
『何々、鈴風と付き合ってんの?』
『マジかよーー!』
『何、それーー!何で鈴風?』
「いやいや違うんだ。リーナは……」
『リーナだってーー!ヒューヒュー!』
『シロウ死ね!今すぐ死ね!』
……こうなるよねーー……
「こらっ!お前ら静かにしろーー!じゃあ、鈴風の隣でいいよ。田中悪いけど席、変わってあげてくれるか?」
「は〜〜い」
リーナは、俺の隣の席になってしまった。学校は、唯一、落ち着ける場所だったのに、これで、学校は、最も最悪の場所に変わってしまった。
……あーーみんなの視線が痛い……
俺は、リーナに念話をする。
『リーナ。聞こえる?』
『聞こえる』
『転校ってどうやったの?』
『ちょっと精神魔法かけた』
『……そうか』
『何で言ってくれなかったの?』
『シロウをビックリさせる為、この方法を選んだ。シロウの記憶にある』
『俺の記憶でこうなったらわけね』
『どう、驚いた?』
……悪魔なんだけど、可愛いんですけど……
『驚いたよ』
『そう、良かった』
『ミミーは?』
『シロウの側にいる』
『えっ!透明になってるの?』
『違う。変術で蠅になってる』
「ハエーー!?」
「おい、鈴風。嬉しいのはわかるがうるさいぞ!」
「す、すみません……」
……声に出てた……
『あっ、あれ、ミミー』
『そう。飛んでる』
俺の周りにハエが飛んでる。時より、髪の毛や肩に着地している。
『ミミー聞こえる』
『きこえるでちゅう』
『変装辛くない?』
『だいじょうぶでちゅう。どちらもミミーでちゅう』
『何かあったら、リーナか俺に言うんだよ』
『わかったでちゅう』
『ミミーを一人で置いとけない。ミミーは小さいからこうしてもらった』
『そうだったんだ』
『でも、どうして学校に』
『契約者はいつも一緒にいるのが当たり前』
『そうか。リーナ、せっかくだから学校生活楽しんだら』
『うん、そのつもり』
『だけど、能力、人間レベルに抑えてね。これ、絶対だから』
『わかってる。シロウは目立つの嫌いって知ってる』
……でも、もう無理だよね。休み時間が怖い……
◇◇◇
案の定、休み時間は、リーナの周りに人集りが出来ていた。質問責めにあっている。
俺は、その人並みに弾き出され、肩に乗った蠅のミミーと廊下に出ていた。すると、リーナから念話が入る。
『シロウ、何、この死体に群がる蛆虫どもは?』
『そう言うと、リーナが死体になっちゃっうよ』
『失言した。シロウ、この蛆虫ども、殺していい?』
……蛆虫は失言じゃないんだね……
『いやいや、みんな悪気は無いんだよ。リーナと友達になりたいのさ』
『友達?この蛆虫どもが?』
『しばらくしたら収まるから我慢してね』
『わかった。シロウがそう言うなら……』
『ミミー。リーナ相当まいってるみたいだよ』
『蛆虫どもは、殺せばいいんでちゅう』
『もう、ミミーまで……ダメだからね。殺しちゃ』
『シロウがちょういうなら……』
向こうから一郎兄の奥さん由香里先生が歩いてくる。
「リーナちゃん転校してきたんでしょう」
「あっ、由香里姉じゃないや先生」
「姉さんでいいのよ。でも、しばらく大変そうね。リーナちゃん。綺麗だし。シロウ君も大変ね」
「騒がしいのは慣れてるけど、これは、しばらく大変そうです」
「そうね。リーナちゃんを守ってあげなさいね」
「わかりました。由香里先生も一郎兄に守られてるの?」
「やっだぁーー、何言ってんの。もう〜〜」
そう言って由香里先生は、顔を赤くして去っていった。新婚さんをからかうのは、なんか楽しい。
次の授業中、リーナはぐったりしてた。すると、念話が入る。
『シロウ 逃げたでしょう!』
『逃げたんじゃなく追い出されたんだよ』
『こんなに疲れたの初めて……』
『すぐに収まるよ』
『シロウは許さない。甘い物を要求する』
『あとでたくさんあげるよ』
『わかった……』
……あれっ?あの子、確か神屋代 鈴音だよね。何で俺達、見られてるの……
授業中にも関わらず、不審な目を向けるクラスの女子。
俺は、気になりながらも、異世界の日程をどうしたら良いか考えていた。
◇◇◇
『シロウ兄、リーナさん。お兄のクラスに転校してきたんだって?』
午前の授業が終わる頃、サツキから念話が入った。
『あーー俺もビックリしたんだ』
『私も、クラスの男子から聞いて驚いたよ』
『もう、一年生まで、知ってるのか?』
『こういう情報は生物だよ。新鮮なうちじゃないと傷んじゃうからね』
『お前は、どこぞの芸能レポーターか!』
『エヘヘヘヘ』
『サツキは、どうだ?クラスの様子とか……』
『おかげさまで、過ごしやすいよ。あの三人すっごい良い人になっちゃって、今じゃクラスの人気ものだよ』
『そうか……良かったよ』
『お昼に会える?ソラちゃんにご飯食べさせたいし……』
『いいよ。例の空き教室で待ってて』
『わかった。ブチッ』
……この通話の切れ方、少し慣れたよ……
『リーナ、サツキがソラスにご飯食べさせたいんだって。ミミーも食べないとお腹空くし……』
『わかった……』
……えらい疲れようだな。確かに、休み時間の度、あれじゃあ、疲れるよね……
俺も、話したこともない人から敵意を向けられるし、困ったもんだ。
また、あの視線。神屋代だ。俺達が何したっていうんだ……
◇◇◇
昼休み、何とかリーナにまとわりつく人達の目を逃れ、空き教室に入る。全マップ探索全開だ。そこへサツキとソラスがやって来た。ソラスは、姿を消している。俺達は、マイルームに入り一息つくのだった。
「シロウ、何故人間はゾロゾロ湧いてくる。異常」
「確かに、あれでは疲れちゃうよな」
「黒炎の姫よ。我が成敗しましょうか?」
「ソラちゃん、ダメだよ。リーナさんが綺麗だから友達になりたいんだよ」
「サツキ様がそう言うのなら、致し方ありませんな」
「ミミーおなかちゅいたでちゅう」
「そうだね。お昼食べよう。リーナには、デザートをあげるよ」
「我は、ぶどう酒をもらおう」
「ワインね。わかった」
……昼から酒かよ……
チラシから、リクエストのものを購入して、みんなで食べる。
俺は、異世界の予定の件で頭を悩ましていた。
「シロウも疲れた?何か元気ない」
「シロウ兄、また、何か悩んでるの?」
「そういうわけじゃないんだが……」
「何か隠してるね。シロウ兄!」
「隠してるわけじゃないんだけど……」
「あーーうじうじして、なんなの。早くゲロっちゃいな!」
「サツキ、そういう下品な言葉はどうかと思う……」
「うるさいっ!じゃあ 何なの?」
「実は………」
俺は、異世界での出来事をみんなに話す。すると、
「何やってるの?約束あるならきちんと断ればいいでしょう」
「サツキ、そう言っても王女様の件、断る事出来るか?」
「出来るよ。先約があるって言えば済む事じゃない」
「あの時は、テンパってて忘れてたんだよ」
「キングウルフの討伐は、私一人で大丈夫」
「ミミーも手伝うでちゅう」
「そう?じゃあミミーと二人でする」
「では、我は、孤児院とやらの様子を見ておきましょう」
「ありがとう、ソラちゃん」
「容易いご用です」
「シロウとサツキは、王女の話を聞いてくればいい。サツキがいれば、シロウはこれ以上面倒に巻き込まれないで済む」
「みんな、助かるよ。ありがとう」
「あと、シロウは、勉強をしなければならない」
「そうだった……」
「しかし、シロウ兄が王女様と知り合いなんて初めて知ったよ。裸、覗いたんでしょう? よく仲良くなれたね」
「それは、俺が一番知りたいよ……」
「どこでもフラグ立てるからそういうことになるんだよ」
「なっ、何言ってんの?俺は、普通の生活ができればそれでいいんだよ」
「まぁシロウ兄らしいけどね」
「では、悪いけど皆さんのお力をお借りします。礼は、美味しいものをご馳走するということで、お願いします」
「わかった」
「僭越ながら、手助けしてあげましょう。ホーホケキョ」
「ミミーもわかったでちゅう」
俺達は、ドアのプレートを裏返し、このまま異世界に行く事にした。




