表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/132

第18話 ーーー残念な1日(2)ーーー

 




 俺は、また、あの噴水のある公園のベンチに腰掛けている。端から見たら勇気を振り絞って彼女に告白したが「シロウくんって良い人よね。でも魅力ないのよねーー。ただのモブって感じーー」って言われ、振られて落ち込んでいる男子学生に見えると思う。


 ……異世界に来たばかりの妹にはあっさり抜かれるし、明日は王宮で怖いメイドに会わなければならないし、俺、自分の部屋にこもりたい……


「そうだ。マイルームに引きこもってしまおう。あそこは、時間がないし明日が来ない。ずっといれば、王宮にも行かなくて済む。そこから、もう絶対、外に出るもんか。そうと、決まれば、さっさと、人目のないところでドアを開こう」


 俺は、全マップ探索で周囲の人気のないところを探した。すると、すぐ近くの路地裏で、五人の如何にも悪そうな男が一人の女性を取り囲んでいる。


 その路地裏は、この近くでドアを開ける絶好の場所だ。


 ……こいつらが、いなければ、そこに行ってすぐにドアを開けるのに……


 俺は、その路地裏に行き、(つる)んでる男達に


「ここから、早く出て行ってくれ。ここは、絶好の場所なんだ」

「何だ。お前!」

「後から来て偉そうな事、言ってんじゃねーーぞ!」

「おいおい、僕ちゃんよ。何言ってくれてんの。覚悟はあるんだろうな」

「お前らこそ、早く、ここを出て行け!俺が、ここを使うんだ」

「ボス、殺してもいいんだろう」

「あーー痛い目の合わせてやれ!」


 一人目の男は、素手で殴りかかって来た。俺の頬に思いっきり当たる、が、全然痛くない……殴りかかって来た相手の方が、腕があらぬ方向に曲がっている。


「何だ。テメーー!」


 今度の奴は剣を抜き、切り掛かって来た。俺は、スローモーションを見てるような感覚になり、サッと避ける。それを、何度か繰り返した。


 俺は、拳を握り殴りかかる。そいつは吹き飛んでいった。


「オメーー何者だ。何しやがった!」


 今度は、三人がかりで切り掛かってくる。俺はさっきと同じように避け相手の三人に拳を向ける。すると、相手の男達は、また、ふき飛んだ。


 俺は、あっという間に五人の男を倒してしまった。しかも、剣を抜いて斬りかかって来た相手をだ。


 ……俺、こんな怖そうな奴ら倒せたの? 俺、本当に強いの?……


 喧嘩などした事なかった俺は、呆然としていた。すると、一人の女性がこちらを見ていた。どうやら、男達に因縁をつけられ、手篭めに合う寸前だったらしい。


「あの……助けてくれてありがとうございます」

「はい」

「宜しかったらお礼をさせて下さい。私は、シンシアと言います」

「シロウです……」

「どうぞ、こちらへ」


 そう言った女性の後を俺はついて行ってしまった。自分が強くなっていたことを、数値上では理解していたが、実践は、はじめなので思考が曖昧になっていたからだと思う。


 俺は、ドアを開く事さえ忘れていた。




 ◇◇◇




「あの……シロウさんは、冒険者なのですか?」


 年は俺より上みたい。素朴な感じの可愛い人だ。三季姉が髪を伸ばしお淑やかにしたら、こんな感じかもしれない。


「はい……」


「失礼ですが、シロウさんは、裸で張り付けにあって、街を回った方ですよね」


 ……直球きたーー!心折れてるのに、もう、耐えられない……


「はい……」

「きっと、何か事情があったんですよね。シロウさんは悪い人に見えませんし……」


 ……もしかして、この人、天使なんじゃないの?……


「誤解だって、わかってくれて、王女様も許してくれました」

「やはり、そうだったんですね。私もそう思っていました」


 ……あーー心の傷が癒されていく。何だろう。とても温かい……


「着きました。こちらです。少し騒がしいですが、お気になさらないで下さい」


「あーーシアおねーーちゃんが帰ってきた」

「ほんとだ。シアねーちゃん」


 ぞろぞろ子供達が溢れて出てきた。


「あーー、このお兄ちゃん知ってる。のぞき魔だーー!」

「ほんとだ。のぞき魔だ」

「今度は、シアねーちゃんを覗いたのか!」

「シアねーちゃんに近づくな!」


 見たことある子供達もいた。そうだ。俺に石を投げつけ囃し立てたガキだ。


「こらっ!やめなさい。この方は、シロウさん。私を助けてくれた人よ。そんなこと言う子は、おねーちゃん、もう、知らないからね」

「えーー、この、のぞき魔がーー!」

「強いの、この、のぞき魔?」

「シロウさんは、強いのよ。五人の悪人をあっという間にやっつけちゃったんだから〜〜」

「へーー」


「あのーー、ここはどういうところなのですか?見たところ兄弟姉妹じゃないみたいですし……」

「あーー、そうですね。ここは、身寄りのない子供達が集まって暮らしているところです。騒がしいですけど、お茶でも飲んでって下さい。今、入れますから……」


 ……孤児院みたいなとこか。それにしても、この人数でこの家じゃ狭いんじゃないかな? ……


「シンシアさんが一人で子供達の面倒をみているのですか?」

「はい。でも、大きな子も手伝ってくれますから、それほど大変ではないのですよ」


 ……これだけの、人数を面倒みるって、ざっと10以上はいるぞ……


「のぞき魔、遊ぼうよ」

「何か面白い話してよ」


 はじめ、警戒してた子供達もすぐ慣れると、髪を引っ張ったり、服を掴んだり、ガヤガヤまとわりついてきた。


「シロウさんが、ゆっくりできないでしょう。はい。お茶を召し上がり下さい」

「はい。ありがとうございます」


「お茶飲んだら、遊ぼう」

「何か面白いことして〜〜」

「抱っこーー」


 ……これは、これで大変だぞ。俺は、まだ、大家族で慣れてるけど……


 俺は、お茶を飲んだ後、子供達と追いかけっこをしたり、お話をしたりして一時間ぐらい遊んでいた。


「すみません。お客さんが来ることないので、みんな珍しがってしまって……おまけに子供達と遊んでいただいて申し訳ありません」

「別に、構いませんよ。うちも6人兄弟ですから、騒がしいのも慣れてますし」

「そうでしたか〜〜どおりで子供達の扱いに慣れていらっしゃると思いました」

「失礼ですが、ここの運営はどうされているのですか?」

「王家から、補助が出てます。それと、教会も方からも支援がありますが、物入が多くて……」

「先ほどの、人達とはどういう関係なのですか?」

「あの人達は、ここら辺を縄張りにしているヤサグレ者です。いつも、ここにきては、難癖をつけていたのですが、これで、少しはおとなしくしてくれれば良いのですが……」

「そうだったんですか……でも、何で難癖をつけてくるのですか?」

「前に、お金を貸してくれたんです。こちらは、断ったのですが、上手いこと言われて、借りてしまいました。それで……」


 ……返せない相手に、無理やりお金を貸し付け、返済と称して、何かを奪おうとするやり方か……目的は、シンシアさんか?……


「奴らの目的は、何なのでしょうか?」

「詳しい事は分かりませんが、この付近を、歓楽街にしたいらしいのです。私達意外にも、被害に遭ってる人も大勢います」


 ……地上げゴロのやり方だ。今時そんなやり方じゃあ、あっ、ここは異世界だ。それなら、通用するかも……


「お金はいくら借りたのですか?」

「金貨一枚です。でも、利息とやらで、今では、金貨五枚を要求されてます」


 ……金貨一枚でこの家屋敷が手に入るのなら安い買い物だ……


 この手の奴らは、お金を返しても別のやり方で攻めてくるだろう。ここは、子供達がいるから、次に奴らがとる手段は明白だ。子供を拐えばいいと考えるだろう。


「今は、借金を背負っていた方が安心です。もし、お金を返せば、次は子供達が狙われると思います」

「子供達に何かあったら……私……」


 きっと、この人は、子供達の為なら、自分を犠牲にするタイプだ。危険でみてられない。


 それにしても、ただのゴロツキが、この王都で歓楽街を作れるのか?背後に権力者がいるんじゃないのか? テレビドラマでは、そういう設定、多いし……


 すると、リーナから念話が入った。


『シロウ、大丈夫?』


 ……そうだ。俺は、宿屋から逃げ出してきたんだ……


『大丈夫だよ』

『サツキが心配してる』

『うん、ちょっと外の空気吸いたかっただけだから大丈夫だよ』

『わかった。そう伝えとく』



「シンシアさん。少し俺に考えさせてもらえませんか。それと、これを受け取って下さい。何かの足しにでもして下さい」


 俺は、金貨10枚を差し出した。


「シロウさん。これは受け取れません。助けて頂いた恩もあるのに、こんな大金まで、受け取るわけにはいきません」


「このお金は、王家から頂いたものです。この間の誤解だという事で頂きました。妹も王都に来たので家を買おうと思ったのですが、諦めました。ですので俺には不要なお金です。使ってくだされば、嬉しいです」


「そんなーー妹さんが出ていらっしゃったのなら、物入りのはずです。これは受け取れません」


「これは、子供達のために使って下さい。では、ご馳走になりました」


 俺は、そう言ってさっさと家を出て行った。


「シロウさん、待ってください!」


 そう声が聞こえたが、俺は足早にこの場を去ったのだった。



 ◇◇◇



 俺は、また、噴水の公園のベンチに座っている。


「あーーまた、面倒なことに首を突っ込んでしまった。それに、お金を置いてきてしまったり、これじゃあ地上げゴロと同じじゃないか。俺は、偽善者だ!」


と、今度はそう落ち込んでいた。端から見たら、公園で頭を抱え急に叫び出し宇宙と交信していそうな、ちょっと残念な頭の人に見えるだろう。


 周りの人は、俺を避けるように近寄らない。結界でも張ってあるみたいだ。


 ……このベンチ、もう、俺専用でいいんじゃない……


 すると、向こうから俺を呼ぶ声が聞こえた。


「シロウ兄、シロウ兄、こんなとこで何やってんの?」

「サツキか……」

「サツキかじゃないよ。急に出て行ったから心配したんだからね」

「そうか、そいえばそうだった」

「もう、シロウ兄はしょうがないんだから、はい」

「これ、何?」

「串焼きリンゴって言うんだって。あっちの屋台で売ってた」

「へーー焼いたリンゴに蜂蜜がかかってるのか」

「甘酸っぱくて美味しいよって、屋台のおばちゃんが言ってたよ」

「ほんとだ。これは、これで……」

「あれっ、サツキの分は?」

「えへっ。お金がなくて、これしか買えなかった」

「そういえば、こちらのお金渡してなかったな。よく買えたな」

「おいしそうって見てたら、おばちゃんがくれたんだよ」

「買ったわけじゃなかったのか。ほら、これ持っておけ。無駄使いするなよ」

「わーー助かる。ありがとう。シロウ兄」


 俺達は、みんなの分の串焼きリンゴを買って、宿に戻るのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ