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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第1章

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第16話 ーーー冒険者と家探しーーー

 




 ここは、マイルーム。亜空間の俺の部屋です。ここには、リーナとミミーそして、何故か皐月がいます。


 俺は、皐月に尋問されてます。声が大きいです。正座で足が痛いです。心が折れそうです……


 この部屋の存在がバレた以上、正直に話そうと思います。そして、その後どうなるか、後で考えようと思います。



 ◇◇◇



「じゃあ、四郎兄は、トラックで死んで女神様から能力をもらって異世界に転生する事になったのに、生き返っちゃって、でも、能力はそのまま持ってて、しかも、異世界に一日一回行かないといけなくて、リーナさんとは、異世界で知り合って、悪魔だというのね」


「はい……」

「この部屋が、四郎兄の能力なの?」

「はい……」

「何で部屋?」

「それは、俺にもわかりません」

「私の部屋は?」

「はい?」

「私の部屋がないなんてずるい!」

「そう言われましても……」

「私も異世界に行ってみたい」

「えっ?」

「私も行くの!連れてかないと、みんなにバラすわよ!!」

「マジ危ないんだって。平和な日本と違うんだからーーいつ殺されても……」

「バラすわよ!!」

「はい。わかりました」


 俺は、根負けした。リーナ達はケーキを美味しそうに食べている。


「しかし、不思議な部屋ね〜〜新聞広告を持ち込めば、ここで買えるなんて」

「はい」

「私にも何か買って!」

「と言われましても……」

「四郎兄だけずるいでしょう」

「でも、タダじゃないんだよ。日本円は稼げないから、異世界で稼がないと」

「四郎兄は、何してんの?異世界で」

「一応、冒険者などしてます……」

「じゃあ、私もそれやる。お金を稼げばいいんでしょう」

「そういう問題じゃなくて、その……」

「じゃあ、どういう問題?」


「シロウ、サツキは大丈夫。魔力高いし」

「えっ?私、魔法とか使えるの?リーナさん」

「練習は必要。私が教える」

「ありがとう。リーナさん」

「ミミーもおしえるでちゅう」

「ありがとう。ミミーちゃん」


「俺も教えてほしいなーー」

「えっ?四郎兄、異世界に行ってて魔法使えないの?」

「使えるんだけど、まともに練習した事ないんだよ」

「今まで、何してたの?」

「いろいろ……」

「いろいろって?」

「部屋の構想考えたり……とか?」

「馬鹿なの?」

「……………」


「でも皐月は、向こうの言葉理解できないんじゃないかなぁ」

「そうか。異世界だもんね。四郎兄はどうしたの?」

「女神様の加護でもらったんだ」

「トラックに跳ねられた時、死んで転生するはずだったから?」

「そうみたい。だから、諦めた方がいいと思うよ」


「言葉なら、私が魔法で習得させる」

「リーナ。そんな事できるの?」

「私は、冥府の王女。女神以上の力がある」

「すごい。すごい。リーナさんって王女様だったの。どおりで綺麗なはず。でも、なんでリーナさんみたいな方が、冴えない四郎兄と一緒なの?」

「契約したから、いつも一緒にいないといけない」

「ミミーも契約したのでちゅう」

「そうなんだ。契約って、何か約束したの?」

「そう。シロウが死ぬ時、魂をもらう」

「ミミーは、シロウの血をもらっちゃのでちゅう」

「そ、そうかーー悪魔なんだもんね……」

「そう、悪魔。冥界の住人」

「でも、こんな綺麗な悪魔なら、四郎兄も嬉しいでしょう?」


「嬉しいというか、大変というか……」

「今、シロウ。私を大変と言った!!」

「そんな事ないよ。言葉のアヤだよ」

「本当にーー?」

「ほんと、本当だよ」

「わかった。そう理解する」


「ふ〜〜ん。これで四郎兄の違和感がわかったよ。リーナさんとの関係も不思議だったんだ。胸のつかえが取れた感じだよ」

「皐月は、鋭いからな。隠すのに苦労したんだ」

「それと、あの三人に何かしたでしょう?」

「あっ、ごめん。でしゃばるつもりはなかったんだけど、つい、見てられなくて……」

「いいよ。親切でしたんでしょう。私も困ってたから、正直嬉しい」

「それなら、良かったよ。覗いてた罪悪感が少しは減るよ」

「うむ。覗いてたって、何?」

「あーーそれは……」

「覗いてたんだ。私の事。何。どこまで?この変態兄貴!!」


 俺は、皐月のパンチをモロに食らったのだった。




 ◇◇◇



 俺達は、レヴィアタンの入江があった近くの砂浜にドアを開いた。


 こっちの世界は、夜。月とみられる光が優しく波を照らしていた。


「わっ!海だ。ここ、本当に異世界?」

「そうだよ。ドアを開くと入った時と同じ時間軸に戻るんだ」

「そうなんだ。本当にあの部屋は、時間がないんだね」

「不思議だよね」


「シロウ、転移で宿に戻る。留守だと不審がられる」

「リーナわかったよ。サツキ。王都の宿に行くよ」

「うん。でもどうやって?」


 リーナの黒い影が俺達を包む。一瞬で王都の宿に転移するのだった。


「すごーーい。ここが、異世界の宿なの?魔法って本当にあるんだ」

「俺は、宿の女将さんにサツキの宿泊代金を払ってくるよ。留守いいかな?」

「わかった。私は、サツキに言語習得の魔法をかけておく」

「よろしくね。リーナ」

「わかった」


 俺は、代金を払いに下の階行く。仕込みがあるので誰か起きているだろう。やはり、厨房から音がする。


「あのーーすみません」

「なんだい?おーーあんちゃんか?」

「すみません。急に妹が国から出てきて合流したんです。もう一部屋空いてますか?」

「あーー空いてるよ。確か、あんちゃんは21号室だったよな。隣の22号室が空いてるからそこを使ってくれ。鍵はっと、これだ。料金は大銀貨2枚だ」

「はい。じゃあ、これで。夜分にありがとうございました」

「いいってことよ。こちとら商売だ。もうけ話なら大歓迎だよ」

「ハハハハ。そうですか。じゃあ、お借りします」

「あいよーー」


 部屋が空いててよかった。しかし、宿代も馬鹿にならない。マイルームを展開するときも、神経を使うし……いっそ。家があればいいんだけど……


 この間の報酬で買えるかな?買えたら、能力使うときも気にしなくてもいいし、もし、この世界でサツキと逸れても、家があれば合流できるし……


 ……よっし!家を買おう!でも、買えるかな?……


「シロウ。サツキの言語習得終わった。あと念話もできるようにしといた」

「念話も。ありがとうリーナ。でも、契約してなくても念話できるの?」

「精度は落ちるけど、私の魔法なら簡単」

「そうなんだ。ちょっとやってみるね」


『サツキ、サツキ聞こえる?』

『何これ?どうして?』

『念話っていうんだ。頭の中でその人を思い浮かべて話すとできるらしい』

『テレパシーみたいなものね。理解したわ』

『サツキは、頭がいいからな』

『えへへへ。でも、便利ね魔法って』

『そうだね。でも、魔法使える事、日本では、内緒だよ。バレて家族に迷惑かけたくないし』

『そうだね。一歩間違えば危険な力よね。わかったわ。バレないようにする』

『そうそう。二葉姉や三季姉にバレたら、どうなるか想像もつかないよ』

『そう?私は、大丈夫だと思うけど……』

『おいおい。バラすなよ』

『わかってるわよ。バカ兄貴!』

『はいはい』

『はい、は一回でいいの!』


「リーナ。サツキと念話できたよ。ありがとう」

「これくらい普通」

「そうだ。俺、家を買おうと思うんだけど、どうかな?」

「家?」

「そう。宿代もバカにならないし、ドアを開く能力も気にしなくてもいいし、それに、サツキと万が一逸れても家があれば合流できるし」

「それはいい考え。シロウに賛成」


「四郎兄、家なんか買えるお金あるの?」

「前、報酬でもらったんだ。そのお金で買えればいいけど」

「へーー少しは頑張ったのね」

「まあな」


「じゃあ、明日は、みんなの冒険者登録と家探しだ。今日はもう休もう」


 その後、俺達は部屋割りでもめたが、結局俺一人が新しい部屋で寝ることになった。




 ◇◇◇




 次の日、冒険者ギルドに向かうと俺の顔を覚えていた街の子供達が


『のぞき魔、のぞき魔、わ〜〜い、わ〜〜い』


 とはやし立て、俺は、妹の前でいたたまれなくなり、フードを深く被ってやり過ごした。


 サツキは、異世界の街並みに感動してたが、シロウを見る街の人があまりにも冷たいので、不思議に思い、更に子供達の早し立てる言葉に確信した。


「シロウ兄、何やったの?」

「何も……」

「そんなわけない。こんなに、周りが騒いでるのに、正直に話さないと、あとでお仕置きするわよ!」


 ……どっちが年上か、わからなくなるよ。もう……


「実は……」


「えっーー!王女様の着替えを覗いて、裸で街一周の刑にあったのーー?」

「誤解なんだ。初めて異世界に来た時、ドアを開けたら王女の部屋に繋がってたんだよ。故意じゃない。信じてくれ」

「シロウ兄がそんな大胆な事できると思えないし、信じるよ」

「ふぅーー良かった……」

「よくないわよ。一緒にいるリーナさん達がかわいそうでしょう?」

「そうだよね。すまん」


「シロウは、悪くない。私は大丈夫」

「ミミーもへいきなのでちゅう」


「ほんとに、もうシロウ兄は、何やってんだか……」

「面目ありません……。あっ。ここだよ。冒険者ギルド」




 ◇◇◇



 俺達は、冒険者ギルドに入り、受付の冷たいお姉さんにリーナ、ミミーそして、サツキの冒険者登録をお願いした。

 すると、満面の笑みで物凄く愛想の良い感じで、


「シロウ様。ようこそ冒険者ギルドへ。ギルド長からシロウ様が来られたらお部屋に通すように言われております。どうぞ、奥のギルド長室へ」


「は、はい。わかりました」


 ……この間は、すごく冷たい感じだったのに……なぜ?……


 俺は、ギルド長室の扉をノックした。


「スズカゼ シロウです」

「おーーシロウ殿か入ってくれ」

「はい」


 王都ギルド長ロベルトの軽快な声が届く。


「先日は、ご好意をお断りしてすみません」

「な〜に、気にするな。よくある事だ。そちらにお嬢さんが前、言ってた草原で倒れてた子かい?」


 ……ギルド長の好意を断る設定だったよな……


「そうです。リーナと言います。こちらの女の子がリーナの連れで、妹のように育ったミミーです。そして、こちらが、俺の実の妹のサツキです」


「おーー妹さんか?そう言えばどことなく似てる気がするよ」

「今日は、この子達の冒険者登録をお願いしたくてまいりました。身寄りのない子達ですので、よろしくお願いします」

「そうか、そうか。じゃあ、少し話そうか?」

「はい」


 その時、サツキから念話が入る。


『わ〜〜シロウ兄がまともに話してる〜〜!』

『なんじゃ、それっ。俺だって、敬意を払う相手には、きちんと話すよ』

『わ〜〜みんなに言いたい。話したい、喋りたいーー」

『サツキ、頼むから、今、黙っててくれ』

『は〜〜い』


「シロウ殿。冒険者は、命の危険が伴う仕事だ。規定で15歳 成人してないとなれない決まりだ」

「そうですか。リーナは、15歳なので大丈夫です。ミミーとサツキはまだ、成人前ですので、ダメですか……」

「規定ではな。ギルド長の推薦があれば大丈夫なんだが、見たところ難しいな」

「その、推薦ていうのは、どういう条件なんですか」

「はっきり言って、強い。それだけだ。強さは、自分も仲間も守れるからな」


 ……ミミーは強いけど、サツキはこの世界に来たばかりだ。今回は、諦めるか……


「でも、単独での仕事はできないが、シロウ殿が必ず仕事につきそうというのなら、仮登録という事で俺が推薦してもいい。何せ、この王都を救った英雄殿だからな」


「本当ですか。必ず付き添いますから、お願いします」

「わかった。ちょっと待っててくれ」


 そう言ってギルド長は部屋を出て行った。すると、サツキが


「ねえ、シロウ兄。王都を救った英雄ってシロウ兄のこと?」

「結果的にそうなっただけで、俺が強いわけじゃないよ」

「ふ〜〜ん。そうなんだ……」

「シロウは、強くなる。私が保証する」

「シロウおにいちゃんは、ちゅよいのれす」


 ギルド長のロベルトが事務員の女の子を連れてもどってきた。


「その女の子達の冒険者登録を頼む。俺の推薦だ」

「えっ、いいのですか?どう見ても成人前ですが……」

「仮登録だ。シロウ殿が仕事の時は必ずつきそうという条件つきの」

「そうでしたか。わかりました。では、女性の方は、私について来て下さい」


 リーナ達は言われるまま、その事務員の人について行った。


「ところで、シロウ殿に相談なんだが……」


「私にできることでしたら、ギルド長には、いろいろお気遣いいただいてますし……」


「そうか、最近、この王都もキナ臭い事ばかり起こるんでな。この間の魔人騒ぎや疫病騒動。今度は、隣国の戦争なんて話もある」


「戦争ですか?」


「隣国のサラマー国が獣人の国ルワンダ国に宣戦布告したそうなんだ。そのせいで、冒険者も借り出されそうだし、もちろん、Cランク以上のパーティーなんだけどな。こっちの仕事が溜まるばかりで困ってたんだ。特に、南の穀倉地帯では、畑が荒らされて困ってると何度も突かれてな。仕事を冒険者に斡旋したいんだが、戦争の件があるから、仕事を休んで出兵の準備に忙しくしてるようで、受けてくれないんだ。シロウ殿どうかな?」


「南では、魔獣が畑を荒らしているんですよね」


「あーーキングウルフという群れをなす狼の魔獣らしい。本当は、シロウ殿のランクでは、頼めない仕事なんだが、英雄殿だし、受けてくれると助かる」


「わかりました。お受け致します」


「そうか。そうか。助かったよ。これでこれの肩の荷も降りるよ。それと、王宮から連絡があって、研究施設に埋もれてたシロウ殿の荷物が出てきたそうだ。時間がある時にでも取りに行ってくれ」


「そうですか。わざわざ、ありがとうございます。それから、俺からも相談なんですが、この王都で家を買うとなると、どこに行けばいいんでしょうか?」


「家か……それなら、商人ギルドに行けば斡旋してくれると思うよ。何、家を買うのか?」

「お金が足りればの話ですけど……」

「そうか、そうか。是非とも家を買って、王都に腰を落ち着けてくれ。俺もその方が、いろいろ助かるよ」

「ありがとうございます」

「商人ギルドには、俺から連絡しておくよ。午後にでも行ってくれ」

「何から何まで助かります」

「そういうなって、それと、南の件頼むぞ。詳細は、受付で聞いてくれ」

「はい。わかりました」


 一通りの話が済むと、リーナ達が登録を終えて戻ってきた。俺達は受付で南のキングウルフ討伐の詳細を聞き、近くの食堂でお昼休憩をするのだった。




 ◇◇◇




 俺なんかみたいなFランク冒険者に今回の仕事を頼むのはどうしても不自然だ。俺は、ギルド長が何か隠してるんじゃないかと疑っていた。


 しかし、依頼を断るつもりはない。ここでの生活で資金が必要なのも事実だ。おまけに、うちには、食べ盛りの食いしん坊ばかり。いつか、甘いものを買えなくなってしまったら、魂を食べられてしまうかもしれない。


「これから、どうするの?シロウ兄」

「商人ギルドがあるらしいんだけど、そこに行こうと思う。家を紹介してくれるみたいだし」

「わかった」

「それから、仕事を受けたから、明日、行くよ。キングウルフの討伐だって」

「それって、魔獣なの?」

「そうだよ。あとで、サツキの武器を買いに行こう」

「うん。なんか冒険者らしくなってきたわ」

「あんまり、調子のるなよ。一歩間違えば、死んじゃうんだから……」

「わかってるわよ」

「不安だなぁーー」


「リーナどうしたの?」

「今のサツキでは、キングウルフは危険」

「そうだよね」

「ちょっと、サツキと出かけてくる」

「えっ!」

「加護をもらえば、少しは安心」

「そうだけど……」


 ……あの火だるま鳥のところに行くのか?大丈夫か、サツキ……


「サツキどうする?」

「それって強くなれるの?」

「強さは、己自身の鍛錬。加護は死なないための保険」

「じゃあ行くよ」

「ミミーはどうする?」

「ミミーもいきたいでちゅう」

「じゃあ、午後は別行動だ。何かあれば念話してくれ」

「わかった」


 俺達は、それぞれの目的で別行動をするのだった。




 ◇◇◇



 商人ギルドは、豪華な作りで、建物内も閑散していた。

 俺が、受付で要件を伝えると、中から、中年の紳士が出てきた。


「シロウ様ですね。話は、ロベルトから伺っております。どうぞこちらに」


 そう言って案内されたのは、豪華な応接室だった。


「私は、この商人ギルドの運営を任されているシモンズです。どうぞよろしく」

「スズカゼ シロウです。シロウが名前です」

「ロベルトから話は伺っておりますが、家をお探しとか?」


「はい。何かいい物件ありますか?」

「失礼ですが、予算はどれくらいでしょうか?」

「手持ちは、金貨300枚ほどです。できれば、200前後に抑えたいのですが……」


「うーーむ。そうですねーー。ある事はあるのですが、ちょっと治安の悪い地域です。歓楽街のすぐ近くなので……」

「この予算では、難しいですか?」

「あとは、郊外ですね。一軒、西の湖の近くにありますが、そこは、王都から一時間程度離れてますし、魔獣も出ます。ですが、土地は広いですし、湖で魚も取れますよ。前に住んでいたのは、錬金術師の方でしたようで、地下室もあります」


「そうですか……一応、それを見せてもらいたいんですけど……」

「地図を書きますので、都合の良い時に見てください。代金は、金貨220と言ってたのですが、200まで値下げは可能です」

「そうですか。では、場所を教えて下さい」

「わかりました。少しお待ちください」


 そう言ってシモンズは、部屋を出て行った。


 リーナとミミーは、魔獣が出ても大丈夫だろうし、人目のない所の方が助かる。


 俺とサツキには、危険だけど……


 ……う〜〜ん、悩むなぁ……


 シモンズが地図を書き持ってきてくれた。俺は商人ギルドを後にして、ベンチに座り、全マップ探索でその場所を確認する。確かに湖に面していて、土地も広そうだ。でも、建物は古く使い物になりそうもない。


 ……ガキだと思って足元を見られたのか……


 この世界でも、家はかなり高価らしい。俺は、大きくため息をついた。


 ……まだ、時間がある。王宮に行って、俺の荷物を取りに行こう……


 その足で、王宮に向かうのだった。




 ◇◇◇



 王宮の裏口、通用門の衛兵に、俺が訪れた理由を話し、身分証を提示して王宮内に入った。


 王宮内は、少し騒ついていて、忙しそうだ。俺は、衛兵の受付前で待っていると、事務官筆頭のドリトスがやってきた。


「シロウ殿、お久しぶりです。荷物の件ですね。こちらへどうぞ」


 俺は、言われるまま王宮内に入り案内された部屋に通された。


 そこは、どうみても普通の人が入れるようなところではない豪華な作りになっており、俺みたいな者がこの場にいて申し訳ない感じになる場所だった。この世界では、珍しい豪華な装飾のフカフカのソファー、見事な彫刻を施された家具類。ここは、きっと一級の応接室だ。


 すると、慌てた様子で誰かが入ってきた。よく見るとアンリエット第一王女だった。もちろん、目つきの怖い侍女のソランジュもいる。


「お待たせ致しました。シロウ様」

「アンリエット様、何故、ここに……」


「ここは、王宮です。アンリエット様がいらっしゃるのは当然です!」


 ……相変わらず、この人怖い……


「失礼しました。荷物を取りに来ただけでしたので、てっきり衛兵の方が来られると思ったのです。王女様にお会いできるなんて思ってもいませんでしたから……」


 すると、今度は第二王女カトリーヌと侍女の怖い目二号も入ってきた。


「シロウさん。こんにちわ」

「これは、カトリーヌ様。こんにちは」


 ……俺の世話係をしていたメイドは第二王女の侍女のだったのか……


 今、俺の前には、この国の王女二人とその両脇に怖い目つきの侍女1号2号がいる。二人の侍女の目つきはいつもに増して険しい。


 ……あーー、空気が重たい。重力加多で圧死しそうだ……


「あのーー」


 俺は、この場の雰囲気が耐えきれず声を出す。


「何でしょう?」


 待ちわびたように話すアンリエット王女。


「荷物が見つかったと連絡を受けたのですが……」

「はい。研究所を片しておりましたところ、シロウ様の荷物が見つかったと私も報告を受けてます」

「そうでしたか。これは、どうもありがとうございます」

「いいえ。シロウ様にお返しするのは当然の事ですわ」


「…………」


 ……どうしよう。話題が続かない。こんな時、普通どうするの?……


「シロウさん」

「はい」

「私、疫病にかかって苦しんでいたんですけど、完治したんです」

「それは、大変でしたね」

「はい。それで……その……」

「どうかされましたか?カトリーヌ様」

「シロウさんが、助けてくれたんですよね」

「はい?」


 ……何、この直球。なぜに、どうして、バレたの?……


「私のような者が、疫病を治す事などできるわけないですよ」

「いいえ、あれはシロウさんでした」

「私のような者が、王宮に入れませんし、人違いかと思いますよ」

「それは、そうなのですけど……」


「きっと、ベランダから来られたんですよね。私と目が合いましたもの」


 ……何、この変化球。アンリエット王女にまでバレてる。どうして、こう感が鋭いんだ。女性は……


「ベランダから王宮に入るなんて、そんな大それた事できませんよ。カトリーヌ様が完治されたのも民を思う優しいお気持ちを察して、神様が手を差し伸べてくださったのではないでしょうか?」


 ……両隣の怖いメイド達が頷いている。いける。この流れでいいんだ……


「そうでしょうか……」

「そうですよ。きっと神様のおかげだと思います!」


 ……ごめんなさい。俺、嘘をついてます……


「そうですわよね。疫病が流行ったと思いましたら、すぐに鎮静化致しましたし、神様以外こんな偉大な事できませんわね」


 アンリエット王女は、少し寂しそうだった。


 ……仕方がない。バレて騒がれたら、また、何されるかわかったもんじゃない……


 ……何か話題、話をそらす話題はないか?………


「あのーー王都には図書館はありますか?一千年前の戦争の話を調べてみたいのですが……」

「図書館はありますけど、どの様なことを知りたいのですか?」

「戦争の経緯ですとか、どの様な戦いだったのかを知りたいです」

「それでしたら、私がお話し致しますわ」


 ……えっ、この場を逃げる口実なのに、もっと、面倒なことになりそう……


「いいえ。王女様のお手を煩わしたくありません。ご迷惑がかかりますし」


 ……両脇のメイドも頷いている。そうですよね〜〜……


「いいえ!是非とも私がお話しいたしますわ。明日、また、いらっしゃって下さい。史料も揃えておきますから」


 ……メイドが睨んでる。怖い……


「えーーっと」

「お待ちしておりますわ」

「シロウさん、私も一緒に姉様の話をお聞きしたい。いいでしょう?」

「えーーっと」

『シロウ様!』

「はいーー!」


 ……やってしまった。女性に強く出られると断れない……


「では、明日お会いいたしましょう」


 ……荷物取りに来ただけなのに何でこうなるの?……






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