第15話 ーーー鈴風 皐月ーーー
私は、鈴風 皐月 12歳。四郎兄と同じ中学に通う1年生。リーナさんとミミーちゃんが来たあの日から、四郎兄の様子がおかしい。
あの四郎兄が、家族以外の女の子と話すのを見た事なかったのに、リーナさんとは、凄く仲良さそうに話をしている。確かに、リーナさんは、髪も綺麗な銀髪だし、目も大きくて素敵。四郎兄には、勿体無い美少女。
普段の四郎兄なら、緊張して話もできないはずの存在なのに、家族同様に話してる。リーナさんが話してた外国の孤児院が閉鎖されたとしても、わざわざ日本の孤児院に来るって、おかしい。きっと何かある。
もしかしたら、リーナさんの弱みを握って四郎兄が……
四郎兄は、そんなことしない。できる訳ない。わざわざ、厄介ごとに首を突っ込むなんて、そんな器用じゃない。
じゃあ、リーナさんが四郎兄の弱みを握って……
それも無いと思う。リーナさんが四郎兄を見つめる目は、好意をもってる目だ。それに、四郎兄の言葉でモジモジしてるし、好きなんだと思う。
それに、遊園地での件はどうなの?四郎兄とリーナさん、それにミミーちゃんまで、いきなり現れたドアに入って消えたと思ったら、すぐに出てきた。四郎兄達が行った後、ドアがあった場所まで行ったけど、何もなかったし……わからないよ。どうなってるの?……
「鈴風さん。鈴風さん」
「えっ?」
「鈴風さん。今は授業中ですよ。校庭ばかり見て、どうしたの?ちゃんと聞いてて下さい。ここ、大事なところですから」
「す、すみませんでした」
……いけない。授業中だった……
……あっ、また、あいつらニヤニヤしてる。私が何したっていうの?あんたの好きな人が私を好きだったなんて、私には関係ないじゃん。それに、あんな格好つけてばかりの男、趣味じゃないっつーの!……
……また、ありもしない事、SNSに書かれるんだろうな。嫌だなぁ……
◇◇◇
学校は素晴らしい場所だったんだと初めて思った。ここには、俺に絡む女神も怒ると怖い悪魔達もいない。俺の天国は、こんな普通の所に存在していた。
リーナ達は、家にいる。昼間は、二葉姉がいるから、問題ない……けど……
『シロウ テレビって不思議ね。こんな薄いのに人がいるよ』
『お腹がすいたでちゅう。シロウおにいちゃん……』
『シロウ お昼ね。ラーメンというのを食べたの。はじめての食感よ』
『シロウおにいちゃん。ラーメンでちゅう。おいちいでちゅう』
と、引っ切り無しに念話がくる。
……これ、着信拒否できないのか?そうだ。皐月のあの事、調べなきゃ……
俺は、全マップ探索で皐月の教室を見ることにした。休み時間に誰かと話してる。あんまり仲が良さそうじゃないみたいだ。皐月の顔が嫌悪してる。
……話の内容がわかればなぁーー。そうだ。スキルポイントで音声と視点変更を獲得しよう……
俺は、それぞれに10P振り分けて、その能力を獲得した。プライバシーに関わるので、ためらったが、妹が抱える問題を解決するのも兄の役目だ。
皐月に集中すると、声が聞こえてきた。視点変更で、上からの視点を横にずらす。まるで、その場にいるような感覚になった。
『何、授業中、外みてんの?』
『あんたのあほズラ、アップしたから』
『放課後、用あんだけど、付き合ってよ』
……皐月を苦しめている奴らはこの三人か!よし、チェックだ……
内容からすると、SNSあたりに何か悪口でも書かれているみたいだな。そのサイトがわかれば、詳しい事、わかるんだけど……
皐月が使ってるとしたら、RINEかな?俺ともそれで、やりとりしてるし……
皐月は、学校でも家でもあまり携帯を使わない。皐月のを覗くのは、無理そうだ。
あの三人は、きっと、頻繁に使ってるだろう。あの三人が使っているのを覗き見しよう。
罪悪感はなかった。それより、憎悪が湧いてくる。リーナがいたら、魂が美味しそうと言うかもしれない。
◇◇◇
皐月をいじめている三人組を、今日一日覗いてわかったことは、好意を寄せていた男性が皐月の事を好きだと聞いて、逆恨みで嫌がらせをしているみたいだ。
そいつらのグループのRINEには、皐月の悪口が満載だった。もちろん皐月に身に覚えのない事ばかりだと思う。
こんな事して、虐めてた相手に何かあったら、こいつら三人どう責任とるつもりだ。皐月に限って、そのような事は無いと思いたいが、この世に悪魔が存在する以上、魔がさすこともあるのだから……
……どうしたものか……そうだ!……
俺は、リーナに念話をする。
『リーナ、リーナいる?』
『聞こえてるよ。何?』
『人間の魂の美味しい部分は、悪い感情の部分だよね』
『そうだよ』
『人間って、悪い感情ばかりじゃ無いよね』
『そう、人間は複雑』
『魂って、一部分失っても再生するの?』
『するよ。半分以上失うと、正気を失うけど、また、再生する』
『リーナは、人間の美味しい部分だけ食べる事ができる?もちろん、半分以上食べないで』
『できるよ。今までそうしてきたし』
『そうなんだ。そうすると、食べられた人間はどうなるの?』
『だいたい真人間になるよ。でも、時間が経てば、また、変わるのが人間』
『そうか。実は、食べてもらいたい人間がいるんだけど……』
『いいの?』
『あぁーーでも、悪い部分だけ、つまり美味しそうなとこだけなんだけど』
『わかった。今?』
『うん』
『ミミーも連れてっていい。きっとミミーも食べたいだろうし』
『わかった』
『俺がいいよって言ったら、俺の所に転移してきてくれる?』
『うん』
『それと、二葉姉には、気づかれないようにね』
『大丈夫。少し寝てもらうから』
『そうか。じゃあ後で』
『わかった』
俺は、全マップ探索で人気のないとこに移動して、リーナ達を呼ぶのだった。
◇◇◇
俺は、午後の授業をさぼり、空き教室に移動した。リーナ達に念話をいれると、この教室に転移してきた。
二人に古代魔法を使ってもらい気配と姿を消してもらう。俺は、黒翼のマントで同じく姿を消した。
皐月の教室に移動する。一年一組だ。英語の授業だったようで、一郎兄の奥さん由香里先生が教鞭をとっていた。
『じゃあ、打ち合わせ通りに頼む』
『わかった』
俺は、リーナ達に皐月を虐めていた三人のおいしい部分の魂を食べてもらう事にした。起きていても問題なくできるみたいで、リーナ達は慣れた様子で次々と食べていく。食べられた子達は一瞬、ボーっとしてたが、少し疲れた様子ぐらで身体に悪影響はなさそうだ。
……随分、簡単に食べれるもんなんだ。魂って……
俺は、皐月のところ覗くと教科書が破られ、マジックで酷いことを書かれていた。それをみると、胸が苦しくて、少し泣けてきた。
すると、ミミーが俺のとこにジャンプしてきた。俺は、慌てて気配を一瞬消せなかった。皐月に見られたかもしれない……
皐月は、「えっ」と小さな声を出したのだ。
『マズイ、マズイ、みんな撤収ーー!』
『こっちもちょうど終わったよ』
俺は、リーナに捕まってさっきの空き教室に転移した。
「ふぅーーさっきはまずかったなーー。気づかれて無ければ良いけど」
「サツキは、他の人間より魔力があるし鋭い」
「ごめんなさい……」
「ミミーは悪くないよ。それより、二人ともありがとう。助かったよ」
「ここで、あっちに戻る?家に帰ってからじゃ難しいでしょう?」
「皐月の様子が気になるから、放課後まで待ってくれ。呼び出されているみたいだし、様子を見てから二人を呼ぶよ」
「わかった。ミミー行こう」
「シロウおにいちゃんといちゃいでちゅう」
「それは、私もよ」
「透明になっててくれれば、いてもいいよ。見つかるとマズいけど……」
「本当?人族の学校ってどんなとこか見てみたかったんだ」
「じゃあ、何かあったら念話して」
「わかった。ミミー、姿を消して探検」
「はいなのでちゅう」
全マップ探索で二人の行動はわかる。俺は、この時間の授業が終わるまでここで、休むのだった。
◇◇◇
放課後、俺は皐月の動向を見ていた。皐月はあの三人に呼び出されて体育館の裏手に来ていた。
皐月は、凛としているが、内心は穏やかじゃなさそうだ。
「こんなとこに呼び出して何か用なの?」
この場面で、こういう事が言える皐月が誇らしく思える。
「あの……ごめんなさい」
「えっ?」
「あのーー皐月ちゃん。虐めてごめん」
「何、どうしたの?」
「悪いことだってわかったの。私のわがままだって……」
「私も、調子乗っちゃってわるかったわ。RINEの書き込み削除したから」
「私も、ごめんなさい」
「うん。私は大丈夫よ。謝ってもらったから、この件はこれでお終いね」
『……ほんと、ごめんなさい』
……音声と視点変更でその場にいるように感じる。どうやら、上手くいったみたいだ。こんな、チートな解決方法は良くないのかもしれない。でも、このままほっといたら、危険な状態まで追い詰められる事もある。これで解決できれば御の字だ。過去にイジメを受け命を絶った人や今現在悩みの最中にある人には、申し訳ないが、妹は俺にとっても家族にとってもかけがえのない存在だ。チートだろうが、悪魔だろうが使えるものは使ってやる……
「呼んだ?」
「あっ、リーナか。驚いたよ」
「サツキ上手くいった?」
「多分大丈夫だ。今回、リーナ達に助けられた。ありがとう」
「私は、シロウのもの。シロウが望めばなんだってやる」
「リーナはリーナだよ。リーナの好きなようにすればいい」
「うん、そのつもり」
そう言いながらリーナは俺の腕を組んできた。
……何?俺、もしかしてモテてるの?……
「あれっ、ミミーは?」
「さっきまで、ここにいたのに……」
俺は、ミミーを全マップ探索で探すのだった。
◇◇◇
「おかしい。おかしい。絶対におかしい!」
さっきの英語の授業中に四郎兄がいた。しかも、ミミーちゃんも一緒だった。一瞬だったけど、絶対にあれは四郎兄だ。
それに、あの三人組、急に謝ってくるなんておかしすぎる。四郎兄が何かしたに違いない。どういう方法なんてわかんない。でも、私の感がそう言ってる。
「あれって、ミミーちゃんよねーー。なんで学校にいるの?」
やはり、さっきのは四郎兄だ。四郎兄を探さなきゃ。きっと、ミミーちゃんの行くとこに四郎兄がいるはず。
ミミーちゃんが空き教室に入って行く。あの教室に四郎兄もいるはず。
◇◇◇
「ミミーは、校庭にいるみたいだ」
「念話で呼んでみる」
『ミミー聞こえる。さっきの教室に戻ってきて。向こうの世界に行くわよ」
『わかったのでちゅう』
「もうすぐくるわ。シロウ、何やってるの?」
「ほらっ。この教室勝手に使ったでしょう。せめて、掃除をと……」
「こんな時まで、掃除をしなくても……」
「ちょっとモップを持ってくる」
「モップって?」
「掃除の道具だよ。ドア開いておくから行ってていいよ」
「ミミーが来てから行くよ。でも、トイレ行きたい」
「ミミーは、俺が連れてくよ。先行ってて。【ドア1オープン】」
「先にいってるね」
「あーー」
……こんなもんかな。あんまり掃除しちゃうと不審がられるし……
俺はモップをロッカーに仕舞おうとしたらミミーがやってきた。
「ミミー、部屋に行ってて。リーナもいるから。俺もすぐ行く」
「わかっちゃでちゅう」
ロッカーを閉めたら、全マップ探索で周囲を警戒する。すると、何故だか皐月がこの教室の前にいる。
……なんで?ヤバイ。ヤバイ。バレる……
俺はドアに向かおうとしたが、制服の上着がロッカーに挟まってる。
……こんな時に……
すると、教室のドアが開き、
「四郎兄いるんでしょう!!」
皐月の声が鳴り響いた。俺は、皐月に見つかってしまった。




