第13話 ーーー日本ではただの次男坊ーーー
俺は、鈴風 四郎 、15歳。今しがた、異世界から戻ったばかりです。今、鈴風家では、緊急の会議が執り行われています。
議題は『鈴風家次男 鈴風 四郎』についてです。しかし、鈴風家での会議は、会議とは名ばかりの断罪場です。俺の意見は取り合ってもらえなし、一方的に、口頭攻撃を受けるだけです。異世界の市中曳き回し張り付けより、精神的にくるものがあります。
◇◇◇
「シロウ、どういう事なの。ちゃんと説明して!」
二葉姉は、今日の事で、仕事を休んでます。
「えっーーと、こちらがリーナで、この子がミミーです」
「そういう事を聞いてるんじゃないの!」
「リーナちやん、ミミーちゃんこっちに来てね。服を着替えましょう。シロウ!ちゃんと聞かせてね!」
……今日の母さんは怖い……
「シロウ。あのリーナちゃんが彼女?外人さんじゃん。どこで知り合ったの? ミミーちゃんは、リーナちゃんの妹? ねぇーー?」
……もう、三季姉は、何が言いたいの?……
「四郎兄は、不潔!!」
……グッサッ!皐月の攻撃が一番応える……
「四郎兄ちゃんは、変態なの?」
……グッサッ!グッサッ! 睦美の攻撃が一番だった……
『四郎、ちゃんと答えない!!』
……答えられるものなら、答えたいが、無理。言えない……
すると、着替えを終えたリーナとミミーがやってきた。
「私から、お話します。私は、サリーナ=アスモ15歳です。この子がミミー=ベルゼ 7歳です。私達は、外国の孤児院にいました。二人とも両親はいません。お世話になっていた孤児院が閉鎖されることになり私達は日本語を話すことができたので、日本の施設を紹介されました。
しかし、来てみると、その施設は、どこにもありませんでした。どうやら、厄介払いをされたみたいです。
途方にくれ数日彷徨っていた所シロウが買い物帰りに通りかかって私達に声をかけてくれました。
私は、遠慮したのですが、ミミーが限界だったので、お言葉に甘えてお邪魔させて頂き、お風呂を頂きました。そして、皆さんが帰ってこられたのです。私達のせいで、シロウに迷惑をかけてすみませんでした」
……えーーと、誰?この子。リーナがこんなに話すの始めてだ……
「えっ、そうだったの。大変だったねリーナちゃん、ミミーちゃん」
「シロウやるじゃんか。声かけて正解だよ」
「辛い目にあったんですね……」
「四郎兄ちゃんは、変態じゃなかたんだね」
「そういうことなら、しばらくうちにいなさい。狭いけど、気兼ねなんていらないから。そうそう、お腹空いてんじゃないの? 四郎、何か作ってあげなさい。これは、母さん命令よ」
「はい、はい」
『はいは、一回でいいの!』
なんとか誤魔化せたのか……リーナに感謝だ……
みんなは、リーナ、ミミーと仲良く話している……
俺の家族が単純で良かった……
俺は、急いで台所に向かい、冷蔵庫を漁って、あり合わせのもので料理を作るのだった……
◇◇◇
俺はある事を忘れてた。今は、治っているが、足が折れていた事を……
それに、異世界の服でこちらの世界に来てしまった。あの騒ぎで気づかれてない事を願ったが、感の鋭い皐月だけは誤魔化せてなかった。
「四郎兄、足、ギブスとっちゃったの?それに、その服、何?」
「えーーと、良くなったから自己判断でとっちゃった。普通に歩けるし痛くない。服は、タンス探してたらこんな服があったから来てみたんだ。似合うか?」
「馬鹿じゃないの? 心配ばかりかけて、それに、センスゼロだよ。おめでとう」
「ありがたくないよ!皐月は、ひどいなーー」
「それに、リーナさんにあったばかりなのに、随分仲良さそうじゃん。あれ、本当のこと?」
「あーー間違いないよ。外人さん相手だからこんな感じ普通なんじゃないか?」
「ふ〜〜ん」
……流石に皐月は鋭い。他の姉妹は、リーナやミミーに夢中なのに……
『シロウ、聞こえる?』
……リーナの念話だ……
『聞こえるよ。さっきは助かった。ありがとう、リーナ』
『シロウの記憶を覗かせてもらった』
『そうか、いいよ。リーナなら』
『うん、この人達はシロウの大切な家族。私も仲良くしたい』
『ありがとう。でも、心配なのはミミーだな。大丈夫そうか?』
『ミミーでちゅう。だいじょうびゅでちゅう』
『ミミー何かあれば、リーナか俺にいうんだぞ』
『わかったでちゅ』
『ミミーのことは、ちゃんとみてる。シロウはゆっくりして』
『わかった。助かるよ』
『うん』
「四郎兄、四郎兄どうしたの? ニヤニヤして」
「俺、にやけてたか?」
「うん。キモかった」
「明日は、日曜日だし、みんなでどこか行こうか?リーナ達も案内してあげたいし」
「いいの?受験勉強は?」
「大丈夫さ。追い込み頑張るから」
「わかった。みんなに言ってくる。四郎兄の奢りだって」
「おい、待て、皐月ーー」
……俺のバイト代、まだ残ってたかな?……
◇◇◇
今日は、朝から兄弟姉妹で、都内中央にある野球場隣接の遊園地に来ている。
はじめは、ネズミマークのところ行こうとしたのだが、この人数だと移動費だけで、結構な額になる為、近場で楽しめるところという事でここに決まった。
そして、もう一つの隠れた理由。それは……今、この遊園地はあるアニメとコラボしている。
そう。あの「魔法巻毛少女くるくるパッツン」とです。俺がここを推したのもこれがあると知ってたからで、ここだけで買える限定ミニ フィギュアを購入する為です!
……つい力が入ってしまった……
この事は、俺だけの秘密。みんなが、遊園地の乗り物に、夢中になっている隙に、購入予定だ。その、シナリオはもう、頭の中に組んである。
それと、今回は、一郎兄や由香里先生も来ている。俺にとっては会うのは久し振りだが、この世界軸では、つい先日、結婚式で会ったばかりだ。
リーナとミミーは、こちらの世界の乗り物や人の多さにびっくりしていたが念話でサポート済みだ。多分、大丈夫だろうと思っていたが、
『シロウ あれ何?』
『これ、おもちろいでちゅ』
『あの人なんで変な格好してるの?』
『見て見てシロウ、あの馬車、面白いわよ』
『変などうぶちゅがいるでちゅう』
『この世界のお金、紙なの? なんで?すぐ燃えちゃうよ』
引っ切り無しの念話に、俺の脳内はフル回転だ。
……これは、予定を組み直さないとアレが買えなくなる……
ここは、面倒見の良い三季姉を使おう。三季姉はああみえて、可愛い物が大好きだ。おとぎ話から出て来たようなリーナやミミーの可愛さに夢中なはず。資金を少し渡して、食べ物で釣る。これだ。これで行こう……
「三季姉、これで、リーナ達に美味しそうなもの食べさせてあげてくれる?俺、こういうとこ、良くわかんないし……」
「いいよ。じゃあ、遠慮なくもらっておくね。リーナちゃん、ミミーちゃん美味しいもの食べに行こうーー」
……シメシメ、これで、俺の単独行動の時間ができる……
「じゃあ、四郎、あれ、乗ろう!!」
「待って、二葉姉。俺、こういう高いとこから落ちるものダメなんだよーー」
『ギャッーー!』
……失敗した。二葉姉の存在を計算できなかった。そろそろ、リーナ達が食べ終わって、戻ってくる。今なら誰もいないはずだ……
「四郎兄、ちょっと付き合って……」
「どうした? 皐月」
「あれ乗りたい」
「あ、あれかい?」
「うん」
『ギャッーー!』
……また、失敗した。皐月はああみえて、スピード系が大好きだ。捻りも入るこの乗り物を逃すはずがない。また、計算し直さなければ……
「四郎お兄ちゃん。あれ乗ろう」
「あれ乗るの?」
「うん」
『ギャッーー!』
……またまた、失敗した。睦美は、意外性のあるものが大好きだ。水が跳ねるこの乗り物を逃すはずがない。俺は、あれを買えるのか?……
「シロウ、何疲れてるの?」
「リーナか。美味しかったか?」
「うん。冷たくて甘い。こんなおいしいもの始めて」
「そうか、アイスを食べたんだ」
「シロウ、元気ない?」
「そんな事ないよ」
「買いたいものがあるんでしょう?」
「なんで?あぁーーリーナには、隠せないもんね」
「シロウの記憶見た。もう、全てを知ってる」
「幻滅したでしょう。最低な男で」
「ううん。その逆。もっと、一緒にいたいと思った」
……何だろう。このリア充感……
「さぁ買いに行こう。シロウの好きなもの」
「そうだね。一緒に行こう」
俺は、念願のあれを手に入れることができた。はじめからリーナと行けばよかったのか?いろいろ苦労したが、俺は、満足感でいっぱいだった。
◇◇◇
「そうだ。リーナ。俺、一日一回、女神との約束であっちの世界に行かなければいけないんだよ。家に帰ると、ドアを開けそうもないし、ここで開こうかと思ってるんだけど、リーナはどうする?」
「私はシロウといつも一緒。私も行く。ミミーも連れてかないと心配」
「そうだな。じゃあ、人気のないとこに行こうか。ミミーを連れて来てくれる」
「わかった」
リーナは、そう言ってミミーを探しに行った。きっと、三季姉と一緒にいるはずだ。俺は、全マップ探索を使い周囲を警戒しはじめた。注意深く見てると、一瞬、俺のマップ探索にある人物が表示され、消えた。それには、確か冥府の第一王女リーゼ=アスモ=サタンと記載されていた。
『リーナ。リーナ』
『どうしたの?』
俺は、リーナに念話していた。
……うむ。このまま、素直に伝えていいのか?一応、リーナの仇だし……
『この世界にも、悪魔はいるのか?』
『いると思うよ。さっきも、悪魔の気配を感じた。その事?』
『そういえば、リーナの気配探知は凄かったよね』
『殆どの事は、探知できるけど、さっきのは、一瞬だったから勘違いかと思った』
『そうか……ミミーは見つかった?合流しよう』
『うん。すぐ行く』
合流した俺達は、人目の無いところでドアを開き、部屋に入った。
俺は、その時、ある事を忘れていた。全マップ探索で周囲を警戒する事を。
リーナの姉、リーゼが何故、この世界に、と考えていて、使い慣れなれていないスキルを忘れていたのだ。それを、皐月に見られていたなんて……
◇◇◇
俺の部屋は、広くなっていた。およそ12畳ほどある。これなら、キングサイズの某ホテルオリジナルのベッドを置くと新しく出来た部屋がほぼベッドで埋まってしまうだろう。でも、半分の6畳分余る事になる。充分だ。
俺は、自分のステータスを確認し、スキルポイントが1000P増えている事がわかっていた。俺は、迷わずキングサイズのベッドにスキルポイント800を投入しベッドを購入した。配置は、この部屋の間取り図がスキルで表示される。俺は、新しく広がった部屋のところにそのベッドを配置したのだ。
亜空間から、ベッドが出てくる。俺のテンションはMAXだ。
「凄い。これが、シロウが言ってたベッド?」
「どうだ。凄いだろう〜〜」
俺は、きっとドヤ顔だ。
「フカフカなのでちゅう」
「ミミーそんなに跳ねては、スプリングがへたるーー!」
「わーーい。わーーい」
「気持ちいいわ。これなら、ゆっくり寝れそう……」
「リーナまで……」
……でも、当然だ。このベッドにはそれだけの魅力ある……
「毛布とかないの?」
「そうだよね。ちょっと待てって……」
俺は、スキル マイルームで、そのベッド付属寝具一式を200ポイントで購入する。すると、俺の部屋には、某ホテルと同じ空間かと思わせるぐらい素敵なベッドが完成したのだ。
俺は、この感動を横になって味わいたい。思いっきりクッションを抱きしめたい。ところが、リーナとミミーが既にその瞬間を味わっていた。
リーナ達は、ベッドでゴロゴロ転がっていたのだ。
「わかる。わかるぞ。その気持ち。でも、俺にもやらせてくれーー!」
俺達はひとしきりベッドの魅力を堪能したのだった。
そういえば、お腹が空いた。遊園地で姉や妹に乗り物を付き合わされ、食事を食べるのを忘れていた。それに、女神様にプリンを買うのも忘れていたのだ。
「うーーむ。何かないか……」
「俺は、亜空間バックではない自分のリュックをあさる。そこには、最安値チェックの為の、新聞の折り込みチラシがあるだけだった」
「そうか……入院中のも含めてあとで見ようとこのリュックに詰めておいたんだっけ……」
俺は、ぼーっと近所のスーパーのチラシを見ていたら、そこには、日本の貨幣単位と合わせて、異世界の貨幣単位も並んで記載されていた。
……何で? ここが亜空間だから?……
しかも、俺は、凄い事を発見してしまったのだ。スキルマイルームから見ていたチラシの商品を購入できてしまうって事を……。
俺は、持ってきたチラシを手当たり次第、見始めた。これも、あれも購入できそうだ。
「これは、ノーベル賞ものだぞーー!」
俺が一人で騒いでると、
「うるちゃいでちゅーー」
「シロウ、ノーベル賞って何?」
二人の可愛らしい悪魔達から、ツッコミが入った。
「このチラシの中身が、ここで買えるみたいなんだ」
「ほんとでちゅか?」
「あーー本当だ」
「ねーーノーベル賞って何なの?」
……リーナ。そこは素直に喜ぼうよ……
「ノーベル賞ってのは、新しい発見や偉大な功績を成し遂げた人に贈られる人類最大の賞の事だよ」
「シロウは、そのチラシでノーベル賞を貰えるの?」
「いやいや、そういう真面目な意味で使ったのではなくて、驚きの発見にその言葉を借りただけだよ」
「人間って、複雑ね。悪魔には、理解できない」
「すみません。という事で、このチラシに載ってるものが手に入ります。何がいい?」
「何がいいと言われても、あっ、この丸いのおいしそう」
「ミミーは、これがいいでちゅう」
二人が選んだのは、イチゴや果物が満載のホールケーキだった。俺は、マイルームから、大銀貨2枚を投入。貨幣は亜空間に消える。すると、亜空間からそのケーキが現れた。
「ちゅごい。ちゅごい」
「おいしそう……」
このままでは、かぶりつくしかない。俺は、違うチラシを見て、食器類を購入した。大銀貨5枚だった。
テーブルもないと……
某庶民的家具屋のチラシから、テーブルを購入する。これも、自分の部屋ができた時に買おうと思ってた一押しのテーブルだ。シンプルで安いが高級感がどことなくある物だ。因みに、異世界のお金で大銀貨5枚だった。
……日本でのお金じゃ足りなくて買えないし、異世界の貨幣だと割高になるのか……
俺は、お菓子や、お弁当、ジュースなどを購入し、そうそう、女神ようにプリンやケーキを購入しておいた。
この部屋では、束の間のおやつパーティーが開かれたのだ。




