第128話 ーーーチョロい悪魔達ーーー
翌日、俺とリーゼは、転移して冥府に行く。アザゼル、ルシファー、そして、ソラスの封印の為だ。
「ソラスは、何で封印するのだろう? 」
「あぁ、ソラスは、その配下が厄介だからよ。配下が人族の町を襲ったら、みんな、気持ち悪がるでしょう」
「確かに……」
ある意味、ソラスが最強かも……
リーゼが転移した場所は、俺も知らない場所だった。思ってたより瘴気が溢れている為、むせそうになる。
「凄い、瘴気だ……ミミーは大丈夫なのか? 」
「ミミーは、ゼルゼブブ家に居ると思うわ。あそこは、冥城と同じように、瘴気が入り込まない結界みたいなものがあるのよ」
「じゃあ、リーナも大丈夫なんだね」
「リーナの事が気になるの? 」
「当たり前だろう。契約者だし……」
「本当、それだけ〜〜? 昨日は、人族の王女と良い感じになってたじゃない〜〜」
「な、何でそれを……」
「私が、知らないとでも思ったの? エリックに見つからないように、その間、こき使ってたのだから、感謝しなさい」
「リーゼは、何でもお見通しなんだね」
「これでも、シロウの契約者だし、あの人族の王女も知らない訳でもないしね」
「それ、どういう意味? 」
「それより、この場所よ。アザゼルとルシファーは、必ずここを通るわ。この辺に、ドアを開いておきましょう。お酒もあるし、気配を消して、待ち伏せよ」
その場所は、冥府の飲み屋街の路地で、その奥には『冥府酒店』という看板が出ている店がある。
「確かに……でも、他の悪魔が入ったらどうするの? 」
「だから、気配を隠して、あの2魔が来た時だけ、ドアを開けば良いの。シロウは、少し、頭の回転が悪いのかしら……困ったわね〜〜遺伝したらどうしよう……」
言いたい事言いやがって……遺伝ってなんだよ! ……
俺とリーゼは、しばらくその場所で待っていた。色々な悪魔が前を通りかかる。そして。リーゼが、
「ルシファーが来たわよ。ドアを開いて……」
俺は言われるままにドアを開く。中には、日本酒を始め、冥府では目面しいお酒を置いてある。すると……
「何だ〜〜こんなとこのドアがあったっけ〜〜おっ! あれ、酒じゃん。ラッキー! 」
ルシファーは、部屋の中に入り酒を飲んでいる。俺は、すぐさま、ドアを閉めた。
何てチョロい先輩なんだ……
「ねっ! 上手くいったでしょう? 」
リーゼのドヤ顔が鬱陶しい……
「あっ、今度はアザゼルよ……シロウ、お願い」
「最近お肌の調子が良くないのよね〜〜悪魔印の化粧品がいけないのかしら〜〜ん。うむ。これは、お酒の匂いじゃないの〜〜どこどこ〜〜あったーー! 」
アザゼルも何の疑いもなくその部屋に入り、お酒を飲み出した。俺は、ドアを閉める。2魔の封印完了だ。
こんな簡単で良いの……?
「シロウ、次、行くわよ」
「ソラスだよね。どこにいるか知ってるの? 」
「もちろん。この時間は、冥府の森の木で休んでいるはずよ。捕まって、転移するわ」
俺はリーゼの腕に捕まり、転移した。その場所も瘴気が溢れているが、さっきのところ程ではない。
「じゃあ、この辺にドアを開いて、ウグイスだっけ……その声を流してくれる」
「わかったよ〜〜人使いが荒いなぁ〜〜」
「何言ってんの? みんなの為よ。さぁーー早く」
「はい、はい」
俺は、ドアを開きガラケーを中に置いて、シアンのスマホから録音したウグイスの鳴き声を再生する。冥府の森に『ホーホケキョ』と、ウグイスの声が鳴り響く。
すると、ソラスが羽を広げて飛んできた。その鳴き声に興味があるみたいだ。気配を消している俺達には、気づいてない。ソラスは、ドアをくぐり、部屋の中に入った。その瞬間、すぐ、ドアを閉める。
ソラスも封印が完了した。
何て、チョロい悪魔達なんだ……
「さぁ、長いは無用よ。戻りましょう」
リーゼの腕に捕まり転移してあの丘に戻る。
「あぁ〜〜良かった。こんなに上手く行くなんてね〜〜大成功よね」
「これで、封印完了なの? 呆気なくて、逆に不安だよ」
「良いのよ。これで、それに、悪魔達の習性を知ってなければできない事よ。それだけ、シロウは、みんなの事を知っていたという事なのよ」
「そうだけど……」
あとは、リーナとミミーだ。この2魔を封印するには、冥府に戦争を仕掛けなければならない。
「リーナは大丈夫かなぁ……」
「また、リーナの事ばかりね。シロウは……」
「違うよ。こっちに連れて来られる前に、リーナは母親の事で落ち込んでたから、一緒にいるって約束したんだよ。でも、こんな事になって……」
「母親の事って、まさか……」
「リーゼは知ってたの? リーナが産まれた時に、その黒炎に……」
「リーナが、知ってしまったの? 何で、ねぇ、何で? 」
「邪神アンラが喋ったんだよ。それで、リーナは、暴走仕掛けて、大変だったんだ」
「アンラのやつが喋ったのねーー! ……そうよ。それが、真実だわ」
「リーゼのお母さんでもあるんだよね……」
「そうよ。私は、母親似なの……髪の色が金髪でしょう。母親もそうだった……とても、優しいお母さんだったわ……」
「そうだったんだ……だから、早く終わりにして、リーナの元に行かないとって思ってるんだよ」
「そうね……シロウが行けば、リーナも落ち着くかもね……でも……」
「でも? 」
「ううん。何でもない……リーナだけには、知られたくなかったのになぁ……お父さんとの約束でもあるし……」
「約束? 」
「そうよ。父は母をとても愛してたのよ。でも、黒炎は、王の証し。とても悩んでいたわ。だから、私は、それを含めて、父を討伐しなければならないのよ。早く、愛する人の元に行きたいでしょう? 」
「そ、そんな……」
「これは、父が心から望んだ事なの。それとリーナには内緒よ。良いわね」
「……わかった」
よその家庭の複雑な状況を知ってしまった感じだ。それも、死ぬだ、生きるだの重い系の……
「リーゼは、その……リーナを恨まなかったの? お母さん無くして……」
「私は、人族じゃないから、普通の人族の感情とは違うかもしれない。でも、恨むというより、悲しかったわ……だからリーナには、絶対、知られたくなかったの。昔から、優しい子だったし、そういう面で弱いとこもあるから、きっと、その事を知ったら傷つくと思ってた。どうせ、リーナが知らなければならないのなら、私かお父さんの口から知って欲しかったかなーー。でも、遅いよね。もう……」
「遅くないよ。リーゼは、この時限のリーゼなんでしょう? 今からだって、遅くないと思う……」
「今は、ダメよ。それを知って支えてくれる者がいないもの……シロウ、貴方がリーナを支えてくれないと、リーナはダメになっちゃうわ。これは、姉からのお願いよ。リーナを支えてあげてね」
「もちろん、そのつもりだけど……リーゼじゃダメなのか? 」
「私には、他にやらなければならない事があるからね。それが、落ち着いたら、リーナと話してみるよ。きっと、嫌われているだろうけどネ」
「ちゃんと話せばきっと、わかってくれるよ。リーナは、そんな、物分かりの悪いやつじゃない! 」
「そうネ……その時が来たら、ちゃんと向き合うよ。これは、シロウとの約束でいいのかな? 」
「あぁ……それでいいよ」
俺は、リーゼとみんなが待っている家へと歩き出す。まだ、陽は高かったが、薄っすら雲が流れ始めている。もしかすると、明日、雨が降るのかもしれない。
俺は、封印をやり遂げた達成感よりも虚しさで心がいっぱいだった。




