第127話 ーーー封印するにはーーー
リーゼ達ががワイバーンの討伐を行って帰ってくると、合流して教会に行く。教会では、俺達の帰りを待っていたのか、多くの人々が、待ち構えていた。
「何で、こんな面倒な事するの? 冥界に行けば早く済むでしょう? 」
「シロウ、この世界は、これから、人族の力を合わせて、国を作り上げないと行けないのよ。一定の手順は、必要なの? わかる? お馬鹿さん」
リーゼの言うことは最もだが、その物言いに腹がたつ。
「シロウ様の言いたい事は分かりますが、こういう事は、きちんとこなさないと後でしわ寄せがきてしまうのですわ」
「そう、シロウは、まだ、お子様。面倒くさい人の繋がりを理解してない」
「仕方ないデス。日本では、このような事を教わりませんから、それに、まだ、15歳です。理解しろと言われても無理な相談デス」
そうなのだろうが、みんなして、お子様扱いするのはやめてほしい……
リーゼは、討伐の証としてワイバーンの爪をバッグから取り出してみせる。その数の多さに周りの者が驚いていた。
「何と、あの、わずかな時間でこれだけの数を討伐したのですか? まさしく、勇者御一行様です」
教会の長がそう言うと、周りから歓声が鳴り渡った。
リーゼは肩肘を突いて、俺に何かを言えと命じている……
何言えば良いのだ……
「えっーーと、我々は、これから、魔王討伐に行きます。頑張ります」
「…………」
集まって来ていた人々は黙ってしまった。
何かマズかったか?……
すると、急に、
『わぁ〜〜!!』
『魔王討伐だってーー』
『凄いぞーー! 勇者様ーー! 』
歓声が鳴り響いた。
また、俺は、見世物になった気分になった。
◇◇◇
ここは、湖の湖畔の家。この世界の最初に来た場所だ。
あれから、周囲の人を掻き分け、魔王討伐に出かけると行って、教会を後にした。そうでもしないと、ずっと、見世物のままだからだ。
そして、この家に寄って休んでいるという事だ。流石に、宿屋では、いろいろ都合が悪い……
このメンツで食事の用意ができるのは、俺だけだ。今、あの台所で、食材と葛藤している。
以前、ゼロスリーが獲ってきた魔獣マンマンモスの肉がバッグに沢山入っている。俺は、ステーキを焼きながら、付け合せの野菜を切っていた。
キャベツを千切りにして、トマトを添える。パンは、リーゼが用意してくれた。
「シロウ様。美味しいですわ」
「まぁまぁネ」
「これは、何の肉? 柔らかくて臭みもない」
「これは、美味しいデス。パンが硬いのが少し気になりますが……」
割と高評価のようだ。
「リーゼ、これから、冥界に行くの? 」
「そうね……みんなのレベルも上がったから行っても大丈夫だと思うけど、まず、アザゼルとルシファーを先に封印しましょう。あの2魔は、面倒だから」
「どうすれば封印できるの? 」
「あの2魔、お酒が好きでしょう? お酒を部屋の中に置いておけば、勝手に入ると思うわよ」
「そんなんで良いの? 」
「当たり前よ。悪魔は、本能で動くのよ。お酒が飲みたいって思ったら、それだけしか頭に無いわ」
「まぁ〜〜言ってることは、よくわかるけど……」
あの2魔の顔を思い出して、リーゼの言ってることに納得する。
「面倒なのは、ソラスよ。用心深いから、ドアの中に入らないかもしれないわ」
「鳴き真似をすれば気になって入ると思う」
「シアン、どういう事? 」
「ソラスは、誇り高いから、自分より、綺麗な鳴き声の鳥に反応すると思う」
「それは、そうかもしれないけど……そうか、ウグイスの鳴き真似か! 」
「リーゼ、ソラスは、今、なんて語尾につけてる? 」
「えっーーと、確か、ホーホーよ」
「俺達といたソラスは、ホーホケキョって言ってるんだ。だから、ウグイスの音声を流しておけば、勝手に入ってくれるかも……」
「そうね〜〜試してみましょう。あとは、ミミーとリーナだけど、この2魔は、先に封印するのは無理なの……父と強者のベルゼブブがついてるから……」
「戦わないといけないんだよね……」
「できれば避けたいけど、無理なのよ……」
リーゼは、何か辛そうだ……
「この世界では、ドラキュラ伯爵とドラ子達もいるんだよね。見つかったら、面倒だけど……」
「吸血鬼達は、冥府の最下層で柩の中に入っているから問題ないわ。ドラキュラ伯爵も夜は、起きてこないから大丈夫よ」
「そうなんだ……」
こんな時も引きこもっていたのか……
「じゃあ、明日は、アザゼル、ルシファー、ソラスの封印よ。私とシロウだけで行くわ。みんなは、ここで待っててちょうだい。ここも、周りは、魔獣だらけだから留守番でも気をつけてね」
「みんなで行くんじゃないの? 」
「シアン、冥界は危険なの? それに……」
「それに? 」
「ううん、何でも無いわ」
リーゼは、何か言いたそうだったが、口を閉じてしまった。
食事の後は自由時間だ。みんな好き勝手な事をしていた。俺は、また、あの丘に登ってみた。
夕陽に照らされて、湖面が赤く揺らいでいる。
「シロウ様」
背後から声がかかる。アンリエット王女だ。
「王女様、どうかしましたか? 」
「シロウ様がお元気がないようで気になりましたの……」
確かに、いろいろ考えてしまって元気が出てこない……
心配かけてしまったのか……
「すみません。いろいろ考えていて、それで、王女様にも申し訳無くて……」
「ここに連れてこられたのは、シロウ様の責任ではないですわ。それに、この件は、私の世界の事ですもの……関わるなと言っても関わりますわ」
「王女様……」
「それに、不思議だった事が、理解ができましたし……」
「不思議だった事ですか? 」
「はい。私が何でシロウ様を気になるのかをです……」
「えっ! 」
「初めて、会った時は、裸を見られました……それに、着替えを見られた事もあります……でも、シロウ様の事を嫌いにはなれなかったのですわ。それが、わかったのです」
「どういう事でしょう? 」
「私のご先祖は、ミリエナ国をお造りになった勇者『ムサシ』つまり、シロウ様だったのですね……私のご先祖と言う事になりますけど……」
「はぁ!? 言ってる意味はよくわかるのですが、今は、ちょっと理解ができません……」
「当然ですわ。つまり、シロウ様の血が私に受け継がれているという事になります。でも、これは、もっと先の事かもしれません。どの様な状況でそうなるのかもわかりませんけど……」
そういう事か……前に王女にこの世界の歴史を教えてもらった時、そう話していた……
「私も、今は、よくわかりません。ですが、王女様とは、何かしらの強い縁で結ばれているのだと思っていました。それが、血だったのでしょうか……」
「私も、そう思っておりましたわ。でも、わかってよかったです」
「先の事です。未来は、まだ、変わる可能性もありますし……」
「そうですわね……」
これは、ひとつの別れなのだろうか……
恋心が、家族愛だったという事なのか……
恋愛経験のない俺に難易度が高すぎる……
「シロウ様……」
「王女様……これは……」
「しばらくこうしていてくれませんか? 」
「それは……構いませんけど……」
夕陽が沈む頃、丘の上で抱き合う2人のシルエットが、闇の中に埋もれていった……




