第125話 ーーー温泉でエリックさんとーーー
オークの集団は、その数約40体、中でもキングオークというオークの化物がいるようだ。
俺は紫炎を纏いただ、オークの集団の中に歩いて行く。アンラとの戦いでもそうだったが、紫炎を纏うと、感情が薄くなる。きっと、感情などをコントロールする脳の一部を紫炎を纏うために使うのではないかと自分なりに考えていた。
襲いかかってくるオークに何もせずにただ歩くだけだ。勝手にオーク達が紫炎に触れ、吸収される。そんな、俺を見て、キングオークが目の前に立ち塞がった。仲間がやられているのを見てられないようだ。大きなおののような物を俺に振り落としてきた。だが、紫炎は、当たった瞬間にそれを吸収する。そして、キングオークも例外ではないが、俺は、キングオークには、魔核があるのではないかと思い、聖剣を取り出して斬り付ける。そして、その亡骸をバッグに押し込んだ。
まだ、生き残っているオークがいる。逃げているようだ。俺は、そいつらに魔弾を放つ。
ここの来てから、ほんの2、3分でオークの集団をやっつけてしまった。紫炎を解除すると、感情が戻る。
この場所には、もう、生きている者は誰もいないようだ。俺は、キングオークの住処を物色すると、金銀財宝の他、ミスチルなどの鉱物もあった。遠慮なくバッグの中に収める。
これで、箱を作れば……
あっ! スキル 日曜大工を使えば、素材はいらなかったんだ……
馬鹿な俺……
気づくのは遅すぎたが、人助けもできたし、帳消しだよね……
俺は、馬鹿な自分に言い訳を考え、また、あの草原にドアを開いた。
◇◇◇
リーゼに言われた通りの箱を創り、魔核を揃えて、宿屋で待っていると、みんなが迷宮から帰ってきた。
少し疲れた様子だったが、近くの温泉に行く事になった。俺は、エリックさんと湯船に浸かりながら、話を始めた。
「シロウ、この世界は、何なのでしょうね。みんなが、元の世界に帰れるか心配デス」
エリックさんがお祖父さんになって、この世界のいた事を知っていた俺は、
「そうですね……リーゼに言って、俺以外の人は帰らしてもらいましょうか? 」
「それはダメデス。シロウも帰らないといけまセン。心配している家族がいマス。それに比べて、私やシアンは、家族がいまセン。心配してくれる人もいませんから、その点については安心デス」
リーゼが、ここの、連れてくる人間を選んだのには、そういう事も考えてなのか? 嫌、ただの偶然だろう……
みんなを巻き込んでしまった、という感覚が消え去らない……
罪悪感に押し潰されそうになる……
「でも、話してみるよ。俺は、リーゼと契約してしまっているし、仕方ないと思っている。だけど、みんなは違うから……」
「でも、ここも慣れれば、気楽なものデス。煩わしい、人間関係がないデスから……今まで、私とシアンは、表面上では、教会のエクソシストとして、働いてきましたが、裏では、人のは言えない仕事をしてきました。シアンを巻き込んでしまった、という思いが常にありましたが、ここでは、そんな事を考えなくて良いだけ、楽になれマス」
エリックさんも同じような思いを抱いていたのか……
「シアンとは、同じ孤児院で育ったって聞いたけど? 」
「そうです。彼女は、妖精眼を生れつき持ってました。幼い頃、両親に連れてこられたのデス。つまり、捨てられたのデスね。孤児院でも、いつも1人でした。僕はそんなシアンが気になって話しかけたんデス。すぐには心を開いてくれませんでした。でも、些細な事でも、シアンのいう事を聞くようにして段々と仲良くなったのデス。今では、兄妹のような関係のなってますけどね」
「そうだったんですか……」
「シアンは、他人に興味がありまセンでした。でも、シロウだけは、違ったみたいデス。今、思えば、能力を持っているシロウを自分と同じようだと思ったのかもしれませんネ」
「俺が能力を持ったのはただの偶然です。こんな、能力なんかいらなかった……ただ、普通に暮らしていたかっただけなんです。何で、俺なんだって、いつも思ってるよ。優秀な人なんかゴロゴロいるのに……」
「私は、生きる為に、エクソシストになりました。黎明さんにしごかれ、人形も操れる事も出来ました。これで、少しは、生きていられるって思いましたけど、実際は、いつ死んでもおかしくない仕事ばかりでした。その時、生きたいって思いましたけど、シロウは、違うのデスか? 」
「俺だって死ぬのは怖い……けど、仕方がない時だってあると思う。エリックさんみたいな生の執着はなかったかもしれない……でも、最近は、そうでもないです。みんながいるお陰かと思います」
「そうですか……シロウ、これだけは言っておきます。どんな危険な目にあっても、最後は、その生きる力、生への固執です。それが、分かれ目になると私は思ってマス。そろそろ出ましょうか? のぼせそうデス」
「うん……」
温泉から出ると、女性達の方が早かったらしい。髪を魔法で乾かしていた。
「シロウ達、遅かったわね。2人で何してたの〜〜? 」
「シロウもとうとう変態人形使いに操られてしまったようです」
「お二人とも仲が宜しくて結構でございますわ」
女性達は、言いたい事を言い出した。相手にするのもバカバカしい。
「違いマス。シロウと話込んでしまっただけデス」
エリックさんは、マジで俺と立場が入れ替わったらしい……
女性達に、マジで反応してる……
「明日は、デビューよ。みんな気合い入れてね」
俺は、リーゼの掛け声が、どこか遠い出来事のように感じていた。




