第124話 ーーー俺は1人でーーー
迷宮都市ルーンがあった場所が、この時代では、一番大きな町らしい。建造物も、石でできているものもあり、今まで周ってきた村里とは、格段の差があった。
その建造物の、1つが教会だった。当時から、信仰は盛んだったようだ。
俺達は、この町一軒しかない宿屋に泊まる。そこで、リーゼから話があった。
「明日、教会の神託が行われるわ。私達は、その直後転移して、その教会に現れようと思います。それで、問題なのだけど……」
「何が問題なの? 」
「名前よ。それと、シロウ、シアン、エリック、王女の容姿。冥界に行く事になったら、知ってる悪魔もいるでしょう? その後の関係に影響を及ぼすわ。だから、みんなには変装してもらいます」
「変装デスか? 」
「王女様、勇者一行の名前は知ってますか? 」
「はい。勇者のムサシ。雷撃のスレイサー、魔法使いのマリーゼ、聖女のターミヤそして、エルフのスミスですわ」
「よくできました。それで、ここだけみんなの名前を変えてもらいます。シロウ、貴方はムサシ。王女はスレイサー、シアンはターミヤ、そして、エリックはスミスね」
「別に良いけど、後付けだよねーーこれって……」
「仕方ないのよ。そうしないと、この国の歴史がめちゃくちゃになちゃうじゃない」
「そうだけど……」
「それと、シロウには、ここで、リーナ達を封印する部屋を用意してもらうわ。他のみんなは、私と、ここにある迷宮に潜りましょう。少しでも、レベルを上げときたいわ」
「これからデスか? 」
「もちろんです。明日は、忙しいからネ」
「ヤレヤレ、リーゼは、人使いが荒いデス」
「これは、エリックの為でもあるのよ。今、一番レベルが低いのですから」
「はい、はい」
完全に俺とエリックさんの立場が逆転したようだ。
みんなは、少し休んで迷宮にむかった。俺は、リーナ達を封印する部屋を用意しなければ……
「リーゼ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なに? 」
「封印って、千年だよね。その間の食事とかどうすればいいの? 」
「魔力があれば、エネルギーに変換できるから大丈夫よ。でも、シロウの部屋はどうなってるの? 」
「わからないよ」
「そうなんだ。じゃあ、魔獣の核とかあれば、魔力循環装置ができるよ。千年耐えられるとなると、キメラクラスかな? 」
「あっ、それなら、バッグに入ってるよ。でも、魔力循環装置って、どうやって作るの? 」
「えっ!? 知らないの? しょうがないな〜〜魔核が納められる箱の中に魔法陣を描くだけだよ。あとで魔法陣を用意しておくよ。シロウは、箱を用意しといて、せめて、ミスチルとはいかなくても、それに近い金属でできてると良いわね」
「わかった。探して、作っておくよ」
「じゃあ、私達は、迷宮に潜りましょう」
リーゼ達は行ってしまった。ここでは、狭くてキメラの魔核を取り出せない。
「広い場所に移動するか……」
俺は、黒翼のマントを羽織り、王宮のあった草原に行く。
バッグの中には、キメラの遺体がそのまま入っている。俺は、それを取り出して魔核を採取した。
「あとは、金属か……確か、ライン王がサラマー国の北部の山脈にあるって言ってたっけ」
俺は、ドラ代ことゼロスリーに魔法を教えてもらった場所にドアを開いた。
◇◇◇
山脈の麓には、人が住んでいるようなところは存在しなかった。でも、マップで確認すると、人の存在が数名ある。岩場の洞窟の中にいるようだ。
俺は、その洞窟まで行く事にした。現地の人間なら、鉱物の採れる場所を知っているかもしれない。
洞窟の中に入ってみると、俺は愕然とした。そこにいたのは、数名の子供達で、首と手に鎖をつけられ、牢屋のような場所に押し込められていたからだ。
俺が、そこを覗き込むと、サツキぐらいの年長の女の子が、みんなを庇うように両手を広げて俺を睨んでいる。
「あの〜〜君達は、どうしてここにいるの? 」
「…………」
「俺はシロウ……じゃなかった、ムサシって言うんだ。探し物があってこの山に来たのだけど、君達は捕まっているの? 」
見て捕らえられていることはわかっていたが、警戒心を解くためにあえてそう話してみた。すると、その年長の女の子が
「あいつらの仲間じゃないの? 」
「あいつらって? 俺は、今、東の町から来たばかりだよ」
「本当? 嘘じゃないって証明して! 」
しっかりした子だ……
俺は、バッグの中から、携帯の食料と、ペットボトルに入った水を差し入れた。この前、マイルームで調達しておいた品だ。
「それ、食べていいから……水も、人数分あるよ」
さらにバッグから、水を取り出して、牢屋の中に差し入れる。蓋は開けておいた。
みんなは、警戒しながらも、お腹も喉も渇いていた様子で、それを取り上げ水を飲み、食べ物をムシャムシャと食べ始めた。
食事が一通り終わる頃に、もう一度話しかける。
「君達は、なんでここにいるの? 」
「あいつらに捕まった。ここにいるのは、村の子供達、あいつらは村を襲い、そして、私達をここに閉じ込めた」
「あいつらって? 」
「オークよ」
オークって、あのオークだよね。豚みたいな……
俺ってその豚に見えたの……
「村の人はどうしたの? 」
「多分、殺された……と思う」
「事情はわかったよ。取り敢えずここを出ようか? 今、開けてあげるから」
俺は、鉄のような金属でできた何本かの格子を手で引きちぎり、出口を作った。そして、その金属を、バッグにしまう。
鉱物が無ければこれを加工すればと考えたからだ。
中にいた子供はみんな女の子だった。すると、その年長の女の子は、
「何で素手であんな事できるの? 貴方何者なの? 」
「何者と言われても……」
俺は、何者なんだろうか……
「そんなことより、村はどこら変なの? 」
「ここがどこかわからない。でも、近くだと思う。それに、そろそろ、オークが来る時間。早く逃げないと」
「そうなんだ。でも、そいつらやっつけとかないと、他にも犠牲になる人達が増えそうだし、来るまで待ってるよ」
「あなた、馬鹿なの? 人間がオークに勝てるわけないでしょう? 早く逃げ……」
『ブォオオオン』
「来ちゃった……もう、お終いよ」
オークと言われる豚人間が十数体こっちに向かって来た。子供達が、牢から逃げたのを知ったのか、咆哮を上げ、襲いかかる。
俺は、紫炎を纏った。そして、その炎をオーク達に放つ。十数体のオークは一瞬で消えていなくなってしまった。
「何、何、何が起きたの!? 」
「もうやっつけたから大丈夫だよ。ちょっと、待ってて……」
俺は、全マップ探索で村らしき場所を探す。ここから、約5キロ程離れた森の中に集落らしき場所があった。数人が生きている様子だ。
「もしかして、村は森の中にあったりする? 」
「そうよ。何で知ってるの? 」
「じゃあ、多分、あそこだ。帰ろうか」
俺は、子供達を連れて、その村にドアを開く。そして、子供達をその村に送り届けた。
◇◇◇
子供達がいた村は、割と大きな集落だった。森の恵みのお陰か、飢えている子は少ない。だが、大半の人は、さっきのオークの集団にやられてしまったようだ。
親に会えた子、親を亡くした子。喜びと悲しみが入り混じる再開だった。
俺は、村も様子を見ていると、その年長の子がやって来て、
「さっきは、ありがとう。私はアイン。貴方はムサシって言ってたわよね」
「そうだよ。アインか〜〜いい名前だ」
「さっきの、あれ何だったの? ねえ」
「魔法の1つだよ」
「あんな魔法あるんだ……」
「ちょっと、特殊な魔法だからね。それより、この村は、何で襲われたの? 」
「知らない……襲われるのなんて、何時もの事よ」
「そうか……」
俺は、近くに魔物がいないか調べてみると、この村の数キロ先、さっき子供達が捕まっていた場所から近い場所にオークの集団がいた。きっと、さっきのやつらは、ここから来たんだ。
「何で、子供達だけ攫われたの? 」
「そんなの決まってるじゃない。繁殖のためよ」
「繁殖って……そうか、だから、女の子だけだったんだ」
「そうマジマジ見ないで……私達は、何もされてないわよ。まだね」
あのオークの集団を放っておくと、いずれそうなる可能性があるという事か……
「俺は、そろそろ行くよ。もう捕まんなよ。アイン」
「えっ! もう、行っちゃうの? 」
「あぁーー用があるからね」
俺は、そのまま村を出て、あのオークの集団の場所にドアを開く。そして、遠慮なく紫炎を纏った。




