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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
最終章

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123/132

第123話 ーーー村里ではーーー





 俺達は、夜明けと共に、町まで行ってみることとなった。王都からこの湖までは、歩いて1時間程の距離だったが、ここは、千年前。家の柱一本、そこには、無かった。ただ、広い草原が広がっているだけである。


 街道らしきものもないので、膝下まで伸びた草むらを掻き分け、道無き道を歩くしかない。


「本当に、ここに王都ができるの? 」

「そうよ。今は、ただの草原だけどネ」


「不思議ですわ。こんな事を実際に体験できるなんて……」

「王女様、危ないデスから、私の歩いた後をついて来て下サイ」

「ありがとう御座います。エリックさん」

「いいえ〜〜どういたしまして〜〜」


「キモい……変態人形使いから王女の変態下僕にジョブチャンジしたようだ」

「シアンは、容赦ないな〜〜エリックさんのお陰で、俺達だって、歩きやすくなってるのだから感謝しないと……」


「みんな、面白いわね。飽きなくて助かるわ。ほら、魔獣よ。エリック、お願いね」


「またデスか〜〜」


 あの家から一歩出ると、そこは魔獣が溢れかえっていた。ここに来るまで、エリックさん、シアン、アンリエット王女の3人が魔獣を退治している。この3人のレベル上げが主な目的だ。


 不思議な事に、ここにいるメンバーは、文句の1つも言わない。俺だったら、こんな面倒くさい事やってられないと思うのだが、リーナやミミーが絡んでいるとなると話は別だ。


 みんなのレベルは、エリックさんを除いて100を超えていた。埴輪の兵士達や悪竜 アジ・ダハーカの討伐で経験値をたくさん得た為である。


 そして、俺のレベルは、2000を超えている。邪神アンラ・マンユを倒した為だ。それに、経験値10倍というチートなスキルがあるお陰かもしれない。


「ほら、あそこに、村が見えて来たわ。あそこに、寄りましょう? 」

「村というより、掘っ立て小屋にしか見えないのデスが……」

「この時代では、あれが、当たり前なのよ。ほら、エリック、そこにも魔獣がいるわよ」

「はい、はい」


 エリックさんが、リーゼにしごかれている。いつもは、俺の役割だが、端から見てると面白い。


 という事は、俺も面白がられてた訳か……


 狩り獲った魔獣は、食べられるものは、収納してある。この世界では、自給自足でなりたっている。


 みんなもレベルが上がっているせいか、疲れは殆どない。むしろ軽いくらいだ。


 町? 村? と思われる数軒の小屋が立っている集落に着くと、見えてきた光景に目を覆いたくなるばかりだ。


 痩せ細った子供達……

 倒れ寝込んでいる大人……

 明らかに絶命しているであろうと思わしき人……


「こ、これは……」

「酷い、酷いですわ……」

「うん。想像以上」

「とにかく、介抱しましょう。シロウ、回復薬を分けてくだサイ」


 これでは、食事も疎かになっている事だろう。

 魔物が近くにまで、きているのに、今まで生きてこれたのが不思議なくらいだ。


 回復薬を、みんなに分け、俺は、食事の用意をしようと思った。何か食べれば元気になる人も出てくるはずだ。


 少し広い広場で、石を拾い集め竃を作る。他のみんなは、住民の介抱にあたっていた。リーゼだけは、俺の側に来て、一緒に手伝っている。


「シロウは、こういう細かい事が好きなの? 」

「そういうわけではないよ。でも、仕方ないだろう? あんな様子を見てしまったら……」

「シロウは、そう思うわよね……」


 リーゼの言葉が、少し気になったが、そんな事を言っている場合ではない。鍋がないので、スキル、日曜大工で、大きな鍋を創り出す。それを見ていたリーゼは、


「不思議な能力ね〜〜便利だけど、戦闘には不向きな能力ね……」

「世の中、戦闘ばかりじゃないから、良いんだよ」

「でも、ここでは、違うわ」

「……そうなんだろうね」


 しかし、困った……

 魔獣の肉はあるけど、それだけでは……

 マイルームで調達するか……


 人気のないところで、マイルームのドアを開き、チラシから食材を調達する。米もたくさん買い込んだ。


 メニューは、雑炊だ。あの様子では、いきなりの固形物は、胃に負担がかかりすぎる。


 良い匂いが立ち上り、俺の周りには、人だかりができていた。もちろん、みんな痩せ細っている。


 その時、


「おぉ〜〜いい匂いじゃねーーか! 」


 数人の男達が、我が物顔でやって来た。並んでいた子供や女性達を蹴り飛ばし、俺の前にやってくる。


「おい、兄ちゃんよ〜〜早く、それ、俺達に分けろや! 」


 何処にでもいそうな、荒くれ者だ。


「ちゃんと、並ばないと渡せないよ。それに、突き飛ばした人に謝罪が先だ」

「わははは、何、言ってんだーー、てめーーは? はぁ! 俺様を誰だと思ってるんだ」

「面倒くさいやつらだ……」


「何おーーいいから早くそれを寄越せ! 」


 そいつらは、俺に殴りかかってきたが、避けるのも面倒なので、シールドを張った。そのシールドに弾かれてその男は、手を痛めて転がりまわっている。


「てめ〜〜! 魔法使いか! それなら、遠慮はいらねーーよなっ! 」


 男達は剣を抜き、束になって俺に襲いかかってきた。シールドを張っているので、俺は防御もとらずに、ただ、食事の用意をしていた。そいつらの剣は、何度も何度もそのシールドに当たった。


 しつこいし、面倒なので、そいつらを風魔法で吹き飛ばした。荒くれ者達は、遥か彼方の草原に落ちたらしい。そこには、魔獣がいるから、きっと、そいつらの相手をしてくれるだろう。


「シロウは、エゲツないね。ちゃんと相手してあげれば良いのに」

「リーゼも、見てないで、邪魔する奴は追っ払ってよ。食事の用意が遅くなるし」

「だって、面倒なんだもん」


 確かに、そんな奴らの相手をしてるほど、暇じゃない……


 俺は、完成した雑炊をみんなに分けた。みんなは、夢中でそれを食べていた。


 弱った人達を介抱していた他のみんなもそこに集まった。薬を飲んで元気になった人達も一緒だ。


 だが、亡くなってしまった人は、もう、どうにもできない……


 少し離れた場所に、穴を掘り、お墓を作る。


 そのまま放置していたら疫病の恐れもある。


「リーゼ、何処もこんな様子なのか? 」

「そうよ。でも、ここはマシな方ね」

「マジか……」


 これは、本当に大変な事だ。


 俺達は、レベル上げも兼ねて、旅をしながら、村里に寄り、同じ事を繰り返した。今日は、食事にありつけても、明日にはどうなるかわからない。


 早く、安定した食料と、治安をどうにかしないと……


 リーゼが言っていた事が骨身に染みるほど、理解できた。




◆◆◆




  一方、シロウ達が消えた日本では、


「サツキ、どういう事なの? ちゃんと説明して! 」


 日光から帰ったサツキは、シロウが、連れ去られた事を家族に説明している。でも、サツキ以外、シロウの能力を知らないみんなは、どういう事か理解できないようだ。


「だから、シロウ兄の他にもエリックさんやシアンさん、それと、アンリエット王女が消えちゃったんだよ」


 泣きながらそう訴えるサツキを見て、ただ事ではない事は理解できる。しかし、肝心な部分が良くわからないようだ。


「仕方がありません。私から説明致しましょう。ホホーー」


「わぁーー! ふ、フクロウがしゃべったーー! 」


「失礼な! 私は冥府の大君主ソラスです。フクロウなどというチンケな鳥ではありません! 」


「冥府? 大君主? 」


「まぁ、普通の人族なら驚くのも無理はありませんけど……実は……」


 ソラスは、今までの事を話し出した。足りない部分は、サツキやスズネがフォローを入れてみんなに説明している。


 ここには、サツキ、スズネとソラスしかいない。リーナの部屋に置いてあるドアを使いソラス以外の悪魔達は、冥府に帰っていった。


「あのね、サツキ、何でもっと早く言わなかったの? 」

「異世界? そんなとこあるの? 」

「睦美も行きたーーい」


 二葉、三季、睦美は、ソラス達の説明を聞いて、納得できる部分もあった。最近のシロウは、何かがおかしかったからだ。


「言えるわけないでしょう? 頭のおかしい子だと思われちゃうもの」

「それは、そうだけど、言ってくれないとわかんないじゃない」

「じゃあ、言ったら二葉姉は信じてくれたの? 」

「信じるわよ。サツキは、嘘をつけるような子じゃないからね」

「……ウェ〜〜ン」


 サツキは、また、泣いてしまったようだ。


「でも、シロウがね……あの子、昔から心配だったのよ」


「お姉さん、何が心配だったのですか? 」


「スズネちゃんならわかるかもしれないけど、あの子、生きてる感覚が無いというか、魂がここに存在してないというか、説明しずらいんだけど、生きてるぞーー! って、生命力を感じなかったのよね。臆病なくせに大胆で、すぐ諦める。それは、自分の命もよ。でも、自殺願望があるとか、死にたがりとかとは違うの。こう、何かが起きた時、しょうがないか……って諦めるような感じよ。だから、お母さんと相談して、家事を任せる事にしたのよ。忙しく何かをやらせてないと、ダメになると思ったから……いつか、シロウにとって大事なものがたくさん増えれば、生きる力が出てくると思ったのよ」


「お姉さんの言ってる事、良くわかります。私も、シロウ君と同じです。小さい頃から、いろいろなものが見えて、幼稚園までは、たくさん友達もいたんです。でも、小学校に上がると、みんなから嘘つき呼ばわりされたり、不気味な子っていうような目で見られてました。でも、私には、見えるし、わかるんです。だから、退魔師の仕事で自分の命が亡くなってもいいや、みたいな感覚はいつも抱いてました。そんな時、シロウ君に出会ったんです。何故か、気になりました。もしかしたら、私と同類なのでは? というかそんな感覚です。今は、大切な友達ですけど、きっと、私が男だったらシロウ君みたいだったのかな? って思ってます」


「そうよね。黎明さんから少し聞いてるわ。学校とか今の社会は、枠内に収まる人間を求めているのよ。つまり、常識から外れない人をね。でも、初めから外れていた人は、どうする事も出来ないわ。最近の社会では、個性を尊重するって話もよく聞くけど、それは、枠内に収まった個性の事よね。あまりにも逸脱した個性は、疎まれちゃうわ。スズネちゃんみたいな異能の力を持って産まれたらなおさらよね。だって、スズネちゃんの常識と、何も持たない普通の人間の常識はあまりにもかけ離れているから……だから、スズネちゃんの方から、一般の常識の枠に収まるように努力しなければならないのよ。でも、それは、自分を偽ることでもあるわ。だから、人より悩み、人より苦労しなければならない。きっと、そんな時にシロウと出会ったのね」


「はい。その通りです……」


「シロウは、ガチガチの枠内の人間なのよ。だから、もし、異能の力を持ったとしても、きっとそれを無闇に使おうとしないはずよ。使えば、自分の常識を壊す事になってしまうから……臆病なのよ。枠から外れたくないという意識が高いんだわ。サツキも似たようなとこあるからわかるわよね? 」


「わかるよ。私もそうだもん……」


「もっと、早く相談してくれたら、良かったのに……でも、仕方ないわね。帰ってくるって言ったのでしょう? 」


「そこまでは……その場にいなかったから……でも、ちょっと借りるねってリーゼっていう悪魔が言ってたのは本当らしいよ」


「じゃあ、待ちましょう。それしか方法ないし。お母さんには、誤魔化しながら上手く言っておくわ。でも、今度、隠し事したら、ただじゃおかないからね! 」


「はい……」


「もう〜〜シロウったらっ! 帰ってきたら、説教だな! 」






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