第122話 ーーーリーゼの話ではーーー
リーゼの突然の話にみんな困惑していた。
『勇者一行! 討伐ーー!』
「みんなの考えが追いつかないのは承知してるわ。でも、聞いてほしいの……」
リーゼの話はこうだった。
世界を構築できるアフラは、神族にカケラを渡して消え去ってしまった。でも、度重なる、悪魔達との戦いで、構築できるカケラが少なくなり、今では、殆ど無理な状態らしい。
そして、もう1魔、世界を構築できるアンラは、邪神として悪の限りを尽くし、言うことなど聞かない。これでは、争いに巻き込まれる人族をはじめとする地上の種族が絶えてしまい、魂の循環ができなくなり、神族も悪魔もやがて滅んでしまうと言う。
そこで、この争いの終止符を打つために、神族は勇者を召喚するのだが、その勇者が今、ここにいる俺達だと言う。
この時代の冥界は、瘴気が溢れて、悪魔達はやりたい放題しているようだ。それを嘆いた、リーゼの父、アスモ=サタンは、冥界を安定した世界にと思い、リーゼの能力『時限渡航』を使って、どの方法が一番良いか確かめてもらいたいと、お願いされたらしい。
それが、一度冥界を滅ぼし、次代の王が治める冥府、つまり、リーナが治める冥界が一番安定した世界だったと言うのだ。
「つまり、リーナのお父さんが、望んだ事なの? 」
「そう。でも、それは、私の望みでもある。あなた達でないと、リーナ達は殺されてしまうわ。それは、何度も見てきた、ミミーもソラスも……」
「えっ! それは、どう言う事? 」
「悪の限りを尽くしている冥界の悪魔達を神族が力を使って殺してしまうよ。もちろん、リーナ達も同様よ。あの子達が生き残るためには、シロウ、貴方が、その能力を使って、千年程封印させるしかないの」
「封印しなければいけないの?」
「そうよ。この千年の間にも、冥界は瘴気が溢れ悪魔達は暴走状態が続くわ。そんな冥界で、リーナやミミーが暴走せずに、いられると思う? そんな状態が続けば、神族だって黙ってない。つまり、討伐されてしまうのよ」
「でも、何故、千年必要なの? 」
「それは、人族達が安定して人口を増やせる期間でもあるの。アンリエット王女は、わかっているわよね。この千年の間、この世界の人族は大きな争いが無かったことを……」
「はい。そのように聞いておりますわ」
「それは、冥界が封印されていたから、そして、リーナ達も、安全な場所で封印されていたからなのよ」
「だから、リーナだけではなく、暴走すると病気を撒き散らすミミー、冥界の封印を解く事ができるアザゼルとルシファーさん達が一緒に、冥界とは別の場所で封印されていたのか……」
「そう、千年後、その封印が解けて、シロウがその後始末をしたのよ」
「もう、何が何やら訳が分からない」
「このメンバーを選んだのにも理由があるわ。エリックは、シロウと同じ段階で連れてくることに決めたの。一番悩んだのは、前衛の剣士よ。シロウの周りには、優秀な子がいたから悩んだわ。でも、サツキちゃんは、ダメ。シロウは、サツキちゃんを庇ってしまうから、力を発揮できない……同じ理由でスズネちゃんもダメだった……。どうも、シロウは、同じ歳の子や年下だと保護欲がでるみたいね。守らないといけないという使命感というのかしら……年上の人で剣術ができる人物、すると、アンリエット王女が適任だったのよ。本当は、王女には、回復薬をお願いするつもりだったの。でも、王女が剣士になると、回復役は、浄化のできるシアンさんしかいなかったわ。だから、このメンバーなのよ」
「考える時間が欲しいデスね……事情はわかりましたけど、頭がついてこないデス」
「それは、明るくなって、街に出れば否応無しにわかるわ。多分、エリック、貴方ならほっとけないでしょう」
「それは、どう言う事デスか? 」
「考えるより、体験した方が理解が早いと言っているのよ。この時代の地上の生き物、人族をはじめ各種族達は、とても、悲惨な状況だから……」
「そうなのですか……」
「残念ながらね……」
リーゼの話を一通り聞き終わったけど、みんな困惑している。
俺達は、一旦、休み、日が昇るのを待った。
俺は、眠れそうもないので、外に出てみる。マップを確認して驚いた。
「この場所は、あの湖の畔の家じゃないか……」
偶然なのか……?
俺はマップを頼りに、丘に登る。暗くて良く見えないが、何となく面影がある。
「シロウ、見覚えあるかしら……」
「リーゼ……この場所をえらんだのは偶然なの? 」
「以前、シロウとここで会った時、私にもここは、大切な場所になるって言ったでしょう。忘れちゃったの? 」
「嫌、ちゃんと覚えているよ。でも、何で、この場所なの? 」
「それは、私にもわからないわ。でも、どんな人だって、大切な場所、忘れられない場所ってあるでしょう」
「それが、ここって訳か……」
「俺、リーナ達を封印何かできないよ……それに、リーナのお父さんやミミーのお父さんも殺さなければならないなんて……無理だよ」
「やらなければ、シロウが培ってきたリーナやミミーの関係が無くなるのよ。それも、違う誰かに殺されてね……」
「それは! ……そうかもしれないけど……」
「直ぐにみんなの覚悟が得られると思ってないわ。シロウは、特にね」
「それ、どう言う事? 」
「シロウは……今は、やめとく。それに、みんなも来たみたいだし……」
丘の上に、エリックさん、シアンそしてアンリエット王女がやって来た。
「シロウ様が、出て行くの見かけたものですから……お邪魔してすみません」
「王女様、少し、外の空気吸いたくなっただけですからご心配なく」
「そうなのですか……私も、寝付けなくて、そしたら、皆さんも同じだったようで……」
「シロウ、ここって……」
「シアン、そうだよ。あの丘みたいだ」
「そうだったの……やっとわかったわ。エリックが、何で、この世界にいたのか……そして、この丘にあったお墓が誰のものなのか……」
「シアン……」
「みんな、見て、夜明けよ」
湖面に揺らぐ柔らかな波に、登り始めた太陽の光が反射しだし、辺りを優しく包み込み。
悩んでいても、忙しく過ごしても、こうしていつもと変わらず陽が昇り、俺の意思とは関係なく、明日という日が来てしまうのだと、思っていた……




