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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第118話 ーーー冥府の黒炎 VS 原初の黒炎ーーー





 黒炎が一回り大きくなり、リーナは、完全な戦闘態勢に入ってしまった。

こうして、近くでリーナの戦闘を見るのは、堕天使アザゼルとの戦闘以来だ。


 お互いの黒炎が混じり合い、少し透けていた黒色が真っ黒に変化する。黒炎同士がぶつかり合う度、周囲に衝撃波が襲う。その度に、小さな地震が頻繁に起きていた。


 俺は、ミミーが張ってくれたシールドの中で守られている。


「これ、結界持つかな? アザゼルやルシファー先輩大丈夫か? 」

「大丈夫だと思いまちゅう。でも、長くは、無理なのでちゅう」

「そうだよね……」


 お互い、魔法攻撃は仕掛けていない。魔力を吸収されてしまうからだ。黒炎の強さで勝負が決する戦いだ。


 リーナの魔力は十分にある。だが、黒炎の方は、アンラの方が上のように思える。それは、黒色の濃さでそう感じた。


 打ち出すスピードは拮抗している。防御も同じぐらいだ。以前、神と悪魔が協力してアンラを封じたとなれば、アンラの力は、まだ、余裕がありそうだ。しかし、リーナには、その余裕は感じられなかった。


 リーナだって、いつまでも、戦える訳ではない。持久戦になったら、こっちが不利だ。


「俺、リーナのとこ行くよ。ミミーは、大人しくここで待ってて」

「ダメなのでちゅう。アンラの本気はこんなもんじゃないのでちゅう。絶対、シロウお兄ちゃんは、死んじゃうのでちゅう」

「でも、行くよ。ゴメンね。ミミー」


 俺は、ミミーのシールドを抜け、2魔が戦っている近くまで移動する。そして、アンラがリーナに話しかけている声を聞いた。


『お前、サタンの忌子(いみご)だろう? 』

「何の事だか理解不能」

『お前、母親殺しだろうって言ってんだよ』

「母は、病気で亡くなった。意味わからない」

『わはははは。お前の周りの悪魔達は、悪魔らしからぬ優しさを持ってるようだな。真実を知らせないとは、本当、呆れるぜ』

「そのニタニタしてる顔、キショい」

『はぁ!? 何言ってくれてんの? てめーーアフラと同じ事言いやがって! 』

「アフラの気持ちがわかる。お前は、キショい」

『よくもまぁ、久々に蘇ってみれば、人族には生意気な口をきかれ、サタンの娘には、アフラと同じ事言われ、もう、やってらんねーーぜ。ここいらで、終わりにすっか! 』


 アンラの魔力が跳ね上がる。すると、黒炎は更に大きくなり、もの凄い衝撃波が伝わる。


 俺は、聖剣を地面に刺し、シールドを張り何とかやり過ごせた。さっきの会話を聞いていたお陰で心構えができてたからだ。リーナは、数十メートル後ずさった。黒炎を纏っていてもこの後退だ。邪神と言われるだけあって、アンラの力は、本物だ。


 さっきの衝撃波のせいか、男体山の頂上から噴煙が登り始めている。すると、

 大きな火柱とともに、モクモクと綿飴のような灰色の噴煙が噴き出した。


『おーー花火が上がったぜ! 景気がいいじゃねーーか! 』


 まさかの、男体山の噴火だった。


 アザゼルとルシファーの結界のお陰で、被害は少ないが、それでも、結界内の建造物は、崩れ落ちている。


『おい! サタンの娘。さっきの話の続きをしてやるよ。お前の母親は、お前が生まれた時にその黒炎に飲まれて死んだんだよ。おかしいと思わなかったのか? お前は、フェニックスを知ってんだろう。病気で死ぬわけねーーだろう。涙、飲ませれば治っちまうのによーー。涙飲ませてねーーって事に少しの疑問も持たなかったのか? お前は、母親を自分の黒炎で殺したんだよ。ノー天気な女なだぜ。全く』


「…………嘘、嘘だ」


『あとで誰かに聞いてみるんだな? 存在してたらの話だけどよーー! わははは』


「だ、黙れ! この外道! 」


 リーナの炎が揺らぎ、大きくなっている。


……暴走仕掛けてるのか? ……


「ダメだ。リーナ! 意識をちゃんと持てーー! 」


「煩い、煩い、煩い、嘘だ、嘘だ、嘘だ……」


「リーナ! ダメだ。アンラの言葉に惑わされるな! リーナ!! 」


「煩ーーい!! 」


『ようやく本気になったか? つまらねーー戦いは好きじゃないんでね』


「殺す。殺す。殺す」


 リーナの黒炎が周囲を巻き込み大きくなってアンラの黒炎とぶつかる。その衝撃は、さっきと比べものにならない程、大きなものだった。


 アンラは、ニタニタ笑いながら嬉しそうにリーナの黒炎を防いでいる。俺は、そんなアンラを見て違和感を感じた。


「まさか! わざとリーナを暴走させて、湧き出た魔力を吸収しているのか? 」


 アンラの黒炎の一部が霧散されていた。どうやら、アンラの思惑に(はま)ってしまったようだ。


「嘘だ、嘘だ、嘘だ……嘘付きは、殺す、殺す。殺すーー! 」


 リーナの攻撃が更に激しくなる。これでは、迂闊(うかつ)に、近寄れない。それに、完全ではないが、リーナは、暴走仕掛けている。


「何とかして、リーナを止めないと……」


 すると、噴火した雲の切れ目から、光が差し込んできた。『薄明光線』又は『天使の梯子(はしご)』といわれる現象だ。その光は、だんだんと大きくなり、その中を天から何かが降りてきた。そして、それは、俺の方に移動してきて、


『シロウ!! 何してるのですか? 馬鹿なのですかっ! この世界に邪神を復活させるなんて! 』


「はい!? 女神様、何でここに……」


 そこに現れたのは、女神エリーゼだった。それと、女神メサイヤもいる。


『先程、冥界の姫がやって来て、邪神が復活するかもしれないから、と封印の協力をお願いに来たのです』


「リーナが……それで、遅くなったのか……」


『シロウ、貴方は、また、私の管轄の姫を勝手にこっちの世界に連れ出したでしょう? あとで、お仕置きです』


「メサイヤ様も来てくれたのですか? 」


『仕方なくです。エリーゼが行くというものですから……』


……相変わらずだ。ストーカー気質が抜けてない……


『それより、冥界の姫の暴走を先に止めますよ。シロウ、その間の防御をお願いします』


「わかりました」


 女神エリーゼと女神メサイヤは、杖を持って上空に駆け上がり、リーナに浄化の魔法を施す。天から降る綺麗な光に辺りは、(まばゆ)く照らされた。


 それを、見ていたアンラは、


『アフラのカケラの神族か〜〜これは、ちょうどいいや〜〜』


 不敵な笑みを浮かべて、それを眺めていた。そして、黒炎の弾丸を女神達に打った。


 俺は、予想してたので、それを、聖剣で食い止める。アンラは、


『また、お前か、人族! てめーーさっきから、邪魔ばかりしやがってよーー! 何様のつもりなんだ! 』


 アンラは、悔しがりながら、(わめ)き立てていた。


 リーナは、女神達の浄化で落ち着いて来たようだが、心ここにあらずといった表情で、生気がない。


 俺は、リーナの元に駆け寄った。


「リーナ、今は余計な事を考えちゃダメだ」


「シロウ……私が……お母さんを……お母さんを……」


「リーナ、辛くて悲しい事があれば俺にぶつけろ! 俺は、いつも、そばにいるから……」


「……シロウ」


『チェッ! つまんねーー奴らだぜ! もう、本気出しても良いよな。こんな世界、終わりにしよーーぜ! 』


 アンラは、そんな俺達の事を待っててくれるはずもなく、リーナから(かす)め取った魔力を使い、空間を歪ませた。


 湯気の向こう側を見ているようで、この周辺の空間が揺らいでいる。


『ダメです! そんな事をしたら、この世界の因果律が崩壊しちゃいます』


 女神エリーゼは焦りながら、メサイヤとともに光の矢を取り出し、アンラに撃ち込む。


 その光の矢は、黒炎を突き抜けるが、アンラの素の防御力によって、防がれてしまった。


『何なのです。貴方は〜〜こんなの聞いた事ありません』


『エリーゼは、知らないの? アンラは、神族が束になってやっと封印できた怪物よ。私達だけの力でどうにかなる相手じゃないわよ』


『メサイヤ、私は首席です。そんな事は知ってます。ただ、驚いただけです』


 女神達は、上空で騒いでいた。


 俺は、リーナをミミーの防御シールドの中に入れて少し休ませた。


「ミミー悪いけど、少しリーナをお願い」

「わかったのでちゅう」


「シロウ、行くの? 」

「リーナは、休んで魔力を回復してね。俺は、アンラを止めないと……」

「わかった。シロウ、こっちきて」

「えっ! 」


 俺は、リーナに口を塞がれた。柔らかな感触が温かい液体と共に伝わり、その液体を飲み込む。


「これで、少しは戦えるわ」

「え〜〜と、その〜〜」


「リーナおねーちゃんばかりずるいでちゅう。ミミーもするでちゅう」


 今度は、ミミーに口を塞がれた。リーナと同じ温かい液体が口の中に入ってくる。


「ミミー、ダメだよ〜〜」

「良いのでちゅう。もう、二回目なのでちゅから」


 そういえば、ミミーと契約した時は俺が血をあげたんだっけ……


「シロウ、身体の中の魔力を表面に溢れ出す感じ。わかった? 」

「リーナ、何の事かさっぱり理解できないんだけど……」

「もう、ダメってなったら思い出して」

「……わかった」

「今は、それで良い」


 俺は、ミミーの防御シールドを抜けて外に出る。そこは、さっきとは、違った歪んだ世界だった。




◇◇◇




「もう〜〜なんなのよ〜〜これ〜〜」


 アザゼルは、結界を維持しながら、空間の歪みが広がるのを防いでいた。


「全く、シロウは、何やってんだ。俺に、こんな裏方仕事させやがって、先輩を何だと思ってやがるんだ」


 ルシファーもこの歪みを抑えるのに一苦労しているようだ。


『これが、終わったら、酒をたんまり奢らせてやる。わかったか! シロウ 』







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