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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第117話 ーーー悪竜 アジ・ダハーカ ーーー





 俺の手には、聖剣が握られていた。この、聖剣は、前勇者がリーナの父親、アスモ=サタンと戦って折れていたものを、鞘に入れて復元したものだ。


 勇者がどのような人物かは知らないが、この剣で冥府の悪魔達を倒した事は事実だ。勇者にできて俺に出来ない事はない。


 そう思っていたが……


 アンラの黒炎は、さっきより一回り大きくなり、攻撃も素早くなっていた。避けるのも、無理な状態だ。


『おい、人族、お前、人族にしては、人間離れしてねーーか? 』

「いろいろ苦労してるもんでね」

『魔力が補充しずらい世界ってのは、結構、面倒だな……仕方ねーーな。アレを出すか……』


 アンラは、ポケットに手を入れ、中でゴソゴソしている。余裕そうな顔を見ていると腹が立ってくる。


『アジ、ちょっと吸血鬼やフクロウのとこ行って魔力集めて来いや! 』


 アンラは、ポケットから石のような物を放り投げた。その石から、物凄くデカい竜が現れた。


『ブォオオオン! 』


『アジ、あっちの方だ。ちゃんと魔力集めて来いよなっ! 』


『ブォオオオン! 』


 その竜は、アンラの使い魔らしき存在らしい。アンラの言うことを大人しく聞いて行動し出した。


「何だ、あのデカい竜は? 」

『何だ。お前、竜を見た事ねーーの? ダセーーなぁ。あれは、アジ・ダハーカつって、俺が創り出した悪竜だよ』

「悪竜? 」


 マズい……サツキ達が危ない……


『サツキ、大丈夫か? 』

『大丈夫だよ。兄から薬もらっておいて正解だったよ』

『無茶するからだ。それから、そっちにデカい竜が向かった。みんなに知らせておいてくれ』

『今度は、竜なの? わかった。兄も気をつけてね』

『兄、兄言うな』

『ベーーっだ』

……[念話終]……


 悪態を吐くようなら、大丈夫だろう……


 サツキに念話を入れる為、アンラと距離をとったつもりだったが、いつの間にか目の前に黒炎が迫って来ていた。


「おーー危ない……」


 この状況で、念話はもう無理そうだ……


『おい、人族、こっちもそろそろ終わりにしようぜ! 手加減しててもつまんねーーからな』


 あれで、手加減してたの?………


 黒炎を何度も聖剣で防いでいたせいか、聖剣にヒビが入っている。鞘に戻して修復させたいが、その隙もない。


 ドアを開いても、大人しく入ってくれそうもないし……


 すると、また、アンラの攻撃が始まった。早さもそうだが、威力がさっきより半端なく強くなっている。聖剣も折れそうだ……


 ミミーが、何やらゴショゴショしている。そして、


「あったのでちゅう。これで、アンラも少しは大人しくなるのでちゅう」


 と、何かふわふわしたものをアンラに向かって放り投げた。それは、だんだん大きくなって、どデカいスライムになった。


『ボヨヨヨヨン』


 スライムは、アンラの黒炎の真上から落ちてきた。一瞬、スライムの中に黒炎ごとアンラが閉じ込められる。しかし、それも、一瞬だけの事だった。すぐに、そのスライムは黒炎に吸収されてしまった。


『何だ〜〜今のは〜〜攻撃のつもりなのか? お前、ベルゼブブの娘だよなぁ〜〜何、さっきから人族の味方しちゃってんの? 親父に怒られるぞ! 』


「シロウお兄ちゃんは、ミミーと契約してるでちゅう。それに、パパは……もう、いないでちゅう……」


『何? あのベルゼブブの親父が死んだの? まじウケるんですけど〜〜わははは』


「煩い! 馬鹿アンラっ! パパの悪口はゆるさないでちゅう」

『ちゅうちゅう、うるせーーよ! 黙れ! ガキ』


 アンラの黒炎がミミーに襲いかかる。ミミーは素早く避けたようだが、どうも動きが遅くなっている。


「そうか! 霧散黒炎を知らないうちに撒かれたのか? 」


 俺は、ミミーの元に駆けつけ、襲ってきた黒炎を聖剣で防ぎ、そして、ミミーを抱えた。だが、とうとう、黒炎の勢いに聖剣が耐えられなくなり、


『ポキッ!』


 俺は、鞘を取り出そうとしたが、黒炎の攻撃が収まらない。折れた聖剣では、もう、限界だ。黒炎が手前で2つに別れた。1つは、剣で防げるが、もう、1つは無理だ。


 俺は、黒炎がミミーに当たらないように、庇う姿勢をとるが、もう無理だ……


 ダメだ。当たる……



「遅くなった。シロウお待たせ」


 その声をどれ程聞きたかった事か……


「リーナ……」


 アンラの黒炎をリーナの黒炎が防いでくれていた。

 俺とミミーは、リーナの黒炎の中に収まっていた。相変わらず器用な事が出来るリーナの黒炎だ。


「リーナおねーーちゃん。遅いのでちゅう」

「ミミーお待たせ。良い子にしてた? 」

「はい、なのでちゅう」


「リーナ、助かったよ」

「アンラとの戦闘はシロウでは荷が重い」

「自覚してます……」

「それでも、良くやった」


 アンラの黒炎とリーナの黒炎がぶつかり合っている。それも、激しいレベルのぶつかり合いだ。俺達と話をしている場合でもなさそうだ……


 俺は、この隙に聖剣を鞘に納め修復させた。


「シロウ達は、後ろに下がってて、今、移動させる」


 リーナの黒炎が伸び俺とミミーをかなり後方に運んでくれた。その間もアンラの黒炎は、リーナの黒炎と激しくぶつかり合っている。


「リーナ! 俺も戦う」

「気持ちは受け取る。でも邪魔」


 リーナの黒炎が一回り大きくなった。


 アンラのレベルとリーナのレベルでは、かなりの差がある。いくら、アンラが、全回復してないとはいえ、リーナのレベルでは、勝てる保証はない。


「リーナ……」


 俺の声は、もう、リーナには届いていなかった……




◇◇◇




 一方、サツキ達のところは……


 吸血鬼達が転移して来て、休んでいる。サツキも回復しているが本調子でないようだ。


「シロウ兄から伝言、デカい竜がこっちに向かってるって! 」

「ほぉーーそれは、アジ・ダハーカでありますな。ホホーーケキョ」


「それって、伝説の悪竜ですわ」

「流石、人族のお姫様は、良くご存知であります。ホーホー」


「アジ・ダハーカ、聞いた事がありマス。最悪の竜だと……」

「3つの頭を持っていると教会の図書館で見た」


「実際は、首は1つでありますが、強い事は事実であります。ホホーー」

「そんなのと戦って勝てるの? 」

「サツキ様、勝てるのではなく、勝たないといけません。そうしないと、この世界が滅んでしまうのであります。ホホーーケキョ」


「ドラ子様達が回復すれば問題ないと思います」

「クルミさん、でも、時間がないわ」

「ドラ子さん達は、吸血鬼です。血を吸えば回復します」

「わかったわ。私の血を吸って良いよ」

「スズネさん。シロウ様が言うには、血を吸っても3分しか持たないそうです。戦いが始まる寸前の方がよろしいでしょう」


「私も血を提供致しますわ」

「私も吸って構わないデス」

「痛くないならOK」


「私も……」

「サツキさんはまだ、本調子ではありません。後方で支援をお願いします」

「でも、クルミさん……」


「そういえば、私、剣を持ってこなかったですわ。どう致しましょう……」

「王女様、私の剣を使って下さい。シロウ兄のですけど……」

「シロウ様のですか。よろしいのでしょうか? 」

「大丈夫です。私は、後方支援で剣を使いませんから……それに、それは、聖剣です。きっと、王女様のお役にたつと思います」

「聖剣ですの! わかりました。きっと、お役に立ってみせますわ」


 その時、


『ドスン、ドスン……』


 地響きが鳴り渡る。どうやら、悪竜が来たようだ……


「住民や観光客の避難は終わってマス。でも、ここで食い止めないと、被害がでマス」


「私が、先に悪竜の行動を抑えておきます。皆さんは、ドラ子さん達の回復をお願いします」


 そう言い残しクルミは、大きな金棒を取り出し竜に向かって行った。クルミの本気の戦いは初めて見る。角が現れ、光を帯びている。


 近くで見るアジ・ダハーカは、かなりの大きさだ。恐竜のティラノサウルスの3倍程の大きさで羽根が生えている地竜だ。クルミ1人では、抑えられそうもない。


 悪竜の前に立ちふさがり、クルミは、金棒を頭上でぐるぐる回し出した。クルミの周りの大気が回転し出し、竜巻が発生する。その竜巻を悪竜にぶつけた。


 悪竜は、その竜巻に飲み込まれた。カマイタチ現象が起きているようで、悪竜の身体の皮に傷ができている。しかし、皮が厚いのか、肉を切り裂く迄には至ってない。悪竜は、羽根をバタつかせその竜巻きを消しとばした。


 その時の突風が、クルミを吹き飛ばした。そして、悪竜は、口を大きく開け、その口から黒炎を放った。


 その黒炎は、辺り一面を無の状態にする。木や草、建造物が一瞬にして、消え去り、残ったのは、ただの荒地だけだった。


 クルミは、体制を整え、その黒炎を避ける。しかし、金棒が黒炎に当たったのか、その部分だけ、消えて無くなっていた。


「ホホーー黒炎を吐きますか……これは、厄介な竜であります。ホホーー」


「ソラス、何なの、あの炎、黒いし、それに、触れたもの、全て無くなってるよ」


「あの炎は、冥界にしか存在しない炎です。触れたものを吸収、消失させます。ホホーー」


「リーナさんの炎そっくり……ブラックホールみたい……」


「でも、土壌は残っている。スズネの言うブラックホールとは違う。きっと、意識化で、それをコントロール出来る炎。厄介だけど、当たらなければ、ただの黒い影」


「シアン。次に黒炎を吐きそうになったら教えて、クルミさんの援護に向かうわ」


「待って、スズネ。血の提供が先、折角クルミが時間を稼いでくれている」


「そうね。そうだったわ……」


 スズネは、目の前で戦闘が行われているのを黙ってみてられないようだ。退魔師としての血が騒ぐのかもしれない。


 スズネ、シアン、王女、エリックは、吸血鬼達に血を提供した。エリックだけは、催淫効果の特性を持つドラ子に吸われた為、落ち着きがなかったが……







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