第116話 ーーー吸血鬼達 VS 原初の悪神
この世界が、魔法や魔力が存在しない世界と知り、己の魔力回復の為、ドラキュラ伯爵を取り込んだ原初の悪神 アンラ・マンユは、不敵な笑みを浮かべている。
「おい! キレまくりの中坊! 」
『はぁ!? それ、俺のこと? 』
「ドラキュラ伯爵を元に戻せ! 」
『何言ってんの、人族! 消えたもの戻せるわけねーーだろ? 』
「お前は、何をしたかわかってるのか! 」
『俺様にそんな口を聞いたのはアフラ以来だぜ! おい、人族。お前、何者だ!手に持ってるのは聖剣だよな? 』
「この世界の人間ですけど、何か? 」
『人間!? まぁ、いいや……聖剣ってのは、アフラのカケラなんだぜ。それを、お前が持ってるって事は、俺の敵って事、わかってる? 』
「全く、わかりませんけど、何か? 」
『わははは、結構、面白そうな奴だな。お前、俺に勝てると思ってるわけ? 』
「微塵も勝てる気してないよ。でも、この世界、キレまくりの中坊に壊されたくはない! 」
『自分を弱者だと認めながら、強者である俺に望もうって話か……俺もナメられたもんだぜ。これも、アフラの奴の所為で……ブツブツ』
ドラキュラ伯爵が黒炎に吸い込めれ消えた瞬間、頭に血が上ったが、アンラと戦って、勝てる気がしないのは事実だ。俺はアンラと話しながら、どうしたらこの事態を治められるか考える時間を稼いでいた。
◇◇◇
ドラキュラ伯爵が黒炎に取り込まれた所為か、ゼロツー、ゼロスリー達吸血鬼は、伯爵の血の支配から解放されていた。そして、伯爵の気配が消えてしまった事に違和感を感じ、アンラと対峙するシロウの元に駆けつけた。
「シロウ様。先程は失礼しました。それから伯爵がいないようですが……」
伯爵の血の支配下にあっても、その時の事をゼロスリーは覚えているらしい。
「シロウさん、伯爵のいないよ。どうしたの? 」
「伯爵は……」
『ドラキュラなら、俺が喰ったぜ! 』
「喰った……どういう事ですか? 」
「ゼロスリー、伯爵は、奴の黒炎に取り込まれ、奴の魔力の糧になっちゃったんだ……」
「何て酷い事を……許せません。絶対に! 」
「伯爵、喰われちゃったの? 何で、ねーー何で? 」
ゼロ達にきちんと話してあげたいがその余裕はなさそうだ。アンラの黒炎が大きくなっている。
その攻撃は、いきなり始まった。黒炎が伸びて吸血鬼達を襲う。
ゼロ達、吸血鬼は、咄嗟に霧化したようだ。でも、その黒炎は、俺にも向かってきた。
聖剣を盾にして、それを防ぐが、跳ね出す黒炎の衝撃で、後方のミミーのところまで吹き飛ばされてしまった。
『ヤレヤレ、折角、魔力補充の糧になってもらおうと思ったが、やり損ねちまった……これもアフラが、消えちまうから……ブツブツ』
「シロウお兄ちゃんは、やはりヘタレなのでちゅう」
「ミミー受け止めてくれてありがとう。あいつの弱点って何かわかる? 」
「わからないでちゅう。でも、黒炎は、悪魔にとっては無敵でちゅけど、神族にとっては、対抗策があるらしいでちゅう」
「神の力か……この聖剣も神の力の一端だから、黒炎を防げたのか……」
霧化したゼロ達が、シロウの元に戻った。2魔は、伯爵の件もあり、苛立っていた。
「シロウさん、血をちょうだい。そうすれば、少しは、あいつとやりあえるよ」
「私にもお願いします」
「わかった。好きなだけ、吸え! 」
『頂きま〜〜す。カプッ』
俺の左右の首元を噛み血を吸うゼロ達。端から見たら、実にシュールな光景だ。
「は〜〜い。ドラ次郎こと、ゼロツーでーーす。ニッコ! 」
「出席番号3番 ドラ代こと、ゼロスリーで〜〜す。今日は、盛り上がっていくわよ〜〜キュン」
……お前ら、こんな状況でも、豹変するの? ……
ゼロ達吸血鬼は、アンラに向かって攻撃をしだす。魔法は、アンラの黒炎が吸収してしまうので、主に肉体戦だ。しかし、アンラの黒炎がそれを阻む。ゼロ達は、黒炎が襲ってくると霧化し、攻撃は実体化して戦っていた。やはりネックは、黒炎だ。
『シロウ兄、そっちは大丈夫? 』
サツキからの念話だ。
『今、ゼロ達が戦っている。けど、難しそうだ』
『天空弾撃ち込むから待ってて』
『わかった。頼む』
……[念話終]……
サツキの天空弾は、神の力だ。アンラとて無傷ではいられないだろう。
アンラの黒炎を繰り出すスピードがさらに早くなっている。ゼロ達は、少し疲れてきたようだ。
「ゼロツー、ゼロスリー、一旦下がれーー!」
俺の掛け声とともに、ゼロ達は、アンラから距離をとる。その時、亜空間から、サツキの天空弾がアンラに襲いかかる。
強烈な破壊音と共に、周辺に土埃が舞う。
「やったか……」
「まだなのでちゅう。アンラは、あのくらいでは、ビクともしないのでちゅう」
ミミーが、そばで話すと同時に、サツキの位置をどうやって知ったのかわからにけど、アンラは、サツキに方に転移し、そして、サツキを蹴り飛ばした。
『うっ……』
サツキは、その蹴りで、数百メートル転がり地面に倒れた。
「サツキーー! 」
アンラがトドメを刺そうとした時、ソラスが、サツキを亜空間に収納して、すぐにその場から転移した。
『シロウ君、ソラスがサツキちゃんを連れてきたわ。凄い怪我してる』
『サツキのポケットに回復薬があるから飲ませてくれる。頼む。スズネ』
『わかった』
……[念話終]……
「よくもサツキをーー!!」
俺は、アンラの元に飛んで行こうとすると、ドラ子とドラ太郎が、俺達のところに転移してきた。
「待って下さい。感情任せでアンラと戦っても勝ち目はないです」
「ドラ子、離してくれーー! サツキがーー」
「大丈夫です。スズネが回復薬を飲ませてました。確認してからここに来たのですから」
「大丈夫なのか……」
「落ち着いて下さい。サツキさんは無事です。私が保証します」
「わかった……わかったよ。ドラ子」
「物分かりの良いシロウ様は好感が持てます。それより、伯爵はどうしたのですか? 」
「痴呆老人は、アンラに食べられてしまったのでちゅう」
「何ですってーー! 伯爵が……本当なのですか? 」
「ミミーの言ったとおりだよ。魔力の無い世界と分かると、伯爵を取り込んで自分の魔力を補充したんだ……」
「そうだったのですか……シロウ様、血を頂けますか? もうすぐリーナ様が来られると思います。それまでの時間稼ぎをさせて下さい」
「わかった。吸血鬼達、俺の血を吸え! 」
『はい。かしこまりました』
吸血鬼達4魔は、腕や、足、そして首筋に牙をたて、俺の血を吸い出した。さっき、血を吸ったゼロ達もだ。これで、もう、3分、時間が稼げる。
「さぁーー兄妹達、伯爵の仇です。思う存分、力を出しましょう」
ドラ子の掛け声に、吸血鬼達は、雄叫びをあげ、アンラに挑んで行った。
俺は、少し、貧血気味でクラクラしていたが……
◇◇◇
吸血鬼達の攻撃は壮絶を極めた。物凄い速さで攻撃を仕掛けているが、やはり、アンラの黒炎がそれを阻んでいる。
ドラ子が大鎌で風を起こし、流れ薄れた黒炎部分をドラ太郎が剣を突き立てる。しかし、アンラには、届いていない様子で、修復した黒炎がドラ太郎を襲う。
それを、ドラ代の影が防御し、隙を見て、プロペラ型の武器を投げつけた。ドラ次郎の武器は、手甲なので、主に、援護に回っていた。仲間達に不意に襲いかかる黒炎の攻撃を持ち前のスピード移動で救出していた。連携のとれた体制だが、アンラには、蝿が飛んでる感覚なのだろうか、ブツブツ言いながら、時たま大きな欠伸をしていた。
『煩いなぁ〜〜お前ら、何してんの? 』
アンラの黒炎が『サッ』と収束し出し、そして、一気に広がった。先程の衝撃波程では無いが、周囲にその波紋が広がる。
吸血鬼達は、一瞬の事で霧化が出来なかったらしい。みんなはじきとばされていた。
それを、見ていた俺とミミーは、
「何だ……あの攻撃は〜〜」
「風船が破裂するのと同じ、魔力を一気に吐き出したのでちゅう」
「そんな技があるのか……」
倒れた吸血鬼達にアンラの攻撃が襲いかかる。今度は、霧化して無事だったようだ。そして、アンラは、黒炎の一部分を霧散させた。
「アンラは、何をしようとしてるのだろう? 」
「あっ! ドラ子おねー〜ちゃん達、逃げるです。大気に黒炎を撒き散らかしたのでちゅう。魔力を吸われるでちゅう〜〜! 」
ミミーの言った通り、アンラは、魔力補充の為に己の黒炎を大気に霧散させ、吸血鬼達の周囲に撒き散らした。吸血鬼達は、魔力を吸われているのか、動きが鈍くなっている。そして、
「このままだと、魔力欠乏を起こして、たおれてしまうでちゅう」
「ドラ子ーー! ゼロ達ーー! 転移して、安全な場所に避難しろーー! 」
吸血鬼達は、転移したが、ゼロツーだけは、人一倍動いていたせいか、魔力欠乏が酷く、転移出来ない状態だった。
そこへ、更にアンラの霧散黒炎が襲いかかる。ゼロツーは、その場に片膝をついてしまった。
「危ない! 」
俺は、黒翼のマントに最大出力で魔力を流し、ゼロツーの元に向かう。しかし、アンラは、実体化した黒炎をゼロツーに突き立てようとしていた。
「間に合わない……」
でも、ドラ子が再転移してきたらしく、その黒炎を影で防御した。そして、俺は、アンラの黒炎を聖剣で斬り裂いた。
『おい! 人族。邪魔するな! 魔力が回復できねーーだろーーっ! 』
「ドラ子、一旦、ドラ次郎を連れてソラス達のとこに転移して回復してくれ」
「でも、シロウ様が……」
「いいから行けーー! 」
「はい。かしこまりました」
聖剣なら少しはどうにか出来そうだ。タダでやられてやるもんか……
ドラ子達が転移したのを見届けてから、俺は、アンラに向かって行った。




