第115話 ーーー原初の悪神 アンラ・マンユ降臨ーーー
宝玉から放たれた魔力がお互いの宝玉同士と繋がり、三角形の魔法陣のようなものが、天空に現れた。その空間が歪み、衝撃波が伝わる。
今の衝撃波で、辺り一面の木は倒れ、山は崩れ落ちた。
俺は、山の方まで吹き飛ばされ、衝撃で意識が朦朧としていた。その時、
「起きるのでちゅう。シロウお兄ちゃん」
「ミミー……」
「ミミーなのでちゅう。情けないシロウお兄ちゃんに会いにきたのでちゅう」
ミミーが回復魔法をかけてくれた。すると、意識がはっきりしてきた。
「ミミーどうしてここに? それに、ここは、瘴気が溢れてる。ミミーは、直ぐ帰った方がいい」
「大丈夫なのでちゅう。ドラ子おねーちゃんが、暴走を抑える腕輪をくれたのでちゅう」
そう言ってミミーは、自慢気にその腕輪を見せびらかしている。
「ドラ子も来たのか? 」
「みんな来たのでちゅう。ルシファーだけは、ドアを入れなかったので、無理矢理、ドアに名前を刻んで通り抜けて来たのでちゅう」
「ルシファー先輩も、来てくれたんだ」
「アザゼルと一緒に結界を張るためでちゅう。そうしないと、シロウお兄ちゃんの世界が壊れてしまうでちゅう」
「結界を張ってくれたんだ。じゃあ、さっきの衝撃波は? 」
「もちろん、大丈夫なのでちゅう。この周辺に結界を張っているので、さっきの波は天空に逃げたのでちゅう」
「良かった……」
「良くはないのでちゅう。あれを見てほしいのでちゅう」
ミミーが指差した方を見ると、宙に浮かぶ少年のような体格の黒い物体が浮かんでいた。
「あ、あれは……」
「アンラ・マンユなのでちゅう。復活しちゃったのでちゅう」
「そうだ。リーナは? リーナはどうしたの? 」
俺は、リーナがあの邪神と戦うのを見たくなかった……
「リーナおねーちゃんは、少し用があって遅れてくるでちゅう。でも、その前に、少しでも、あの邪神を止めないと、結界が壊れてしまうでちゅう」
この世界に来てくれた堕天使達は、神の力も有している。そのおかげで、邪神を阻む結界を構築できるようだ。
みんなの様子が気になって、マップで確認すると、サツキは、ソラスの羽根の中に逃げ込んだらしく無事だった。湧き出た兵士達は跡形もなく消えている。男体山の大蛇は、今の衝撃で姿を消したようだ。ソラスの大ムカデも散りじりになってしまって、今は存在しない。
スズネ達は、ドラ子が駆けつけ、影のシールドでアンリエット王女共々衝撃波を防いでくれた。
クルミやエリックさん、そしてシアン達は、ドラ太郎のシールドで守られている。
「本当にみんな駆けつけてくれたんだ……」
「仕方がないのでちゅう。徘徊痴呆老人の捜索の一環なのでちゅから〜〜」
この場に似合わない幼女の大人びた言葉に少し驚きながらも、成長しているミミーを愛らしいと思う。
「あいつを止めてみるよ。聖剣なら……あっ、聖剣サツキに渡したまんまだ。どうしよう〜〜そうだ。折れた聖剣を鞘に入れれば……」
聖剣は鞘に戻せば復元できると聞いていた。鞘は、亜空間の中にある。俺は、前勇者が残していった折れた聖剣を鞘に収めてみた。すると、鞘が光り、聖剣が修復されていく。
俺は、聖剣エクスカリバーを手にし、その、黒い物体の側に向かう。
◇◇◇
「ミミーの方がシロウお兄ちゃんよりも強いのでちゅう〜〜」
「それは、知ってるけど、援護も大切な役割なんだ。俺が、危ない目にあったら、頼むね」
「そう言われては、仕方がないのでちゅう……」
ミミーが付いて来ようとしたが、危険なので、後方で援護してほしいと話した。納得はしてない様子だが……
俺とミミーが話をしていると、アンラ・マンユは、地上に降り立った。側にドラキュラ伯爵がいる。
俺は、鑑定を使って、アンラ・マンユのステータスを表示させた。
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アンラ・マンユ(計測不能) 原初の悪神
Lv 2498
HP 12690/3268500
MP 12241/2498000
SKILL
黒炎
魔法
攻撃魔法(闇・火・水・風・土)特大
防御魔法 特大
創造魔法 特大
空間制御魔法 特大
回復治癒魔法 特大
自動回復 治癒特性
魔法無効化 特大
物理攻撃無効化 特大
身体 ・精神異常耐性 特大
気配察知 特大
【称号】 悪を選んだ者 創造者 冥界創設者 悪魔創造者
世界構築者 破壊者 強者 悪竜使い 封印されし者
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……ひゃーー何これ〜〜 俺なんか一捻りって感じだ……。でも、行かなきゃ! ……
俺の覚悟はもう決まっている。あいつらを止めないと……
俺は、アンラ・マンユとドラキュラ伯爵の前に降り立った。俺を見てドラキュラ伯爵は、
「シロウ、何故来た。お主では、敵わん。命を無駄にするな! 」
「そうは、言っても、止めないとどうにもならないでしょう? 」
俺とドラキュラ伯爵が話をしている間、邪神は、何か独り言のような事を言っていた。見た目は、中学生ぐらいの男子だ。背の高さも年相応だ。髪は、灰色のストレートで、前髪が目を覆い顔が良く見えない。
「ったく……また、起こしやがって……ブツブツ」
どうやら、封印を解いて、この世界に呼び出された事に怒りを感じている様子だ。
最悪の邪神って聞いてたけど、イメージ違い過ぎ……
根暗な少年という感じだ……
ポケットにカッター隠してそうな感じ……
「あの〜〜アンラ・マンユさん。もし、封印解かれたのが嫌なら、元に戻るって選択肢もありますけど〜〜」
『アフラが「善」を先に選ぶから、俺が「悪」しか選べなかったんだ……ブツブツ』
ダメだ……全然、聞いてくれて無い…… アフラ? ……
アフラは、確か「善」の神で、神族に自分のカケラを分け与えて消えたって言ってたよなぁ……
『アフラの奴『私、可愛い女の子だから、善を選ぶわ』って、軽く言うんじゃねーーよ。性格最悪なクセに……ブツブツ』
これは、相当ストレスが溜まってる様子だ……
「あの〜〜アフラさんは、何故、消えてしまったのですか? 」
『アフラ……アフラを知ってるのか? 』
「いいえ。話を聞いただけですけど……」
『あいつは最悪なんだ……自分はさっさと善を選んで、その時、俺にこう言ったんだぜ!「 アンラは、根暗だから悪ね」って、普通、そんな事言わねーーだろう? おい、聞いてんのか? 人族』
「はい、ちゃんと聞いてます」
『そもそも俺達、出会った当時は、結構、上手くやってた時期もあったんだよ。でも、善か悪を選ぶ事になって、それから、俺達の仲は最悪になっちまったんだ。ブツブツ』
……なんだよ……ただの痴話喧嘩から、世界が始まったのか? ……
『だから、アフラを許せない。そして、そのカケラを持つ天界の神族もだ。 ブツブツ』
いきなり魔力が跳ね上がった。俺は、むせ返るような濃い瘴気に当てられ、数歩、後ろに下がった。
『人族のにーーちゃん、さっき、何故アフラは、カケラを分け与えて消えてしまったかを聞いたな? 』
『はい……聞きましたけど』
『それは、聞いてはいけない質問なんだぜ。だって、アフラは「アンラと戦いに飽きたわ。私は、消えるから、カケラを持った子供達と遊んであげてね。その方が幼稚なアンラにはお似合いよ。じゃあね〜〜」って、言い残して、消えたんだ。幼稚だって!? ふざけんじゃねーー! 俺だって、アフラに振り回されるのは、もう、ごめんだ。やってられねーーんだよ。だから、人族のにーちゃん。嫌な事を思い出させた代償をもらおうじゃねーーか! 』
アンラは、黒炎を纏い、そして俺に向けて、その黒炎を放った。
「シロウお兄ちゃん! 危ない! 」
ミミーがもうダッシュして俺を抱えてその場から逃げた。黒炎は、俺がいた場所の土壌に穴を開けていた。
「ミミーありがとう。助かったよ」
「シロウお兄ちゃんは、危機感がなさすぎでちゅう。アンラは、キレたら何をするかわからない厄介者なのでちゅから〜〜」
油断しているつもりはなかった。ただ、その攻撃が余りにも早くて、逃げられなかったのだ。
これが、レベル差なのか……
アンラは、まだ、全回復していない。止めるなら、今がチャンスなのだが、黒炎を纏い始めては、手出しができない。
『チェッ、魔力が足りねーーぜ。なんだ? この世界は! 殆ど、魔力が存在しねーーじゃねーーか! 』
アンラは、まるで、キレた中学生のようだ。
「アンラさん、この世界は、魔法や魔力が存在しない世界なんです。こんな、世界じゃつまらないでしょう? 大人しく、封印されてくれませんかね〜〜」
『魔法や魔力が存在しない世界? わぁははは、そんな世界もあるんだ。おもろっ』
逆効果だったらしい……
どうする? マイルームに閉じ込めるか?
でも、そんな余裕はなさそうだ。
黒炎が一回り大きくなる。そして、
『おい、ドラキュラ! 』
「何でしょう? アンラ様」
『お前、いつも俺を呼び出して、そんなに神族が憎いか? 』
「はい。私の存在理由でありますから」
『そうか、では、今回、神族を皆殺しにしてやる。アフラの困った顔が目に浮かぶぜ』
「それは、私の本望であります。それと、それが、終わったら、世界を1つ構築して頂きたいのですが……」
『世界など、いくつだって作ってやる』
「有難き幸せに御座います」
『そうか、そうか、けど、魔力が足んねーーんだ。悪りーーけど、糧になってくれる? 』
「糧とは? 如何様な事でしょうか? 」
『こういう事……』
アンラの黒炎があっと言う間に、ドラキュラ伯爵を飲み込む。伯爵は、その黒炎の中で消えて無くなってしまった。
「伯爵ーー!」
『わはははは、これで、少し、魔力が回復したぜ〜〜』
アンラは、ドラキュラ伯爵を取り込み、自分の魔力に変えたようだ。
「お、お前、なんて事するんだーー!! 」
『おい、人族、俺が作ったものをどうしようと俺の勝手だろう? 何、マジになってんの? 』
「伯爵が、伯爵が……」
『ドラキュラなら、俺の中に戻っただけだ。作る前の状態になっ! わははは』
「何て酷い事を……」
俺は、久し振りに頭にきていた。




