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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第110話 ーーー日光に着きましたーーー





 シアンの運転で、学校にたどり着くまで、3回ほど同じような所をグルグルと周り、ちょうど9時にどうにか着いた。


 俺は、この1時間で何度も死ぬ思いをして気力がもう尽きかけていた。


 学校では、スズネや高志間先輩、銅嶋先輩が来ていて俺達の到着を待っている。


「あれっ、エリック先生は? シアンさんが運転してきたの? 」

「エリックは、先に行っている。この車で私の運転で合宿に行く」

「シアンさん、運転出来るの? 」

「もちろん。国際ライセンスを持っている」

「そうなんだ。凄いねーー」


 高志間先輩は、これから起きる恐怖に耐えられるのだろうか? ……


「アメリカでは16歳で免許を取れるというし、州によっては14歳でも可能なところもある。留学生のシアン君が免許を持っていてもおかしくないでしょう」


 銅嶋先輩、シアンの免許証、きっと偽造だから……確かそう言ってたし……


「では、シアン君頼むね」

「うん。任せて」


……おいっ! 何が任せてだっ! 俺の失った気力返せっ! ……


「じゃあ、シロウ、ナビお願い」

「えっーー! 電車で行こうよーー」

「何を言ってる? 車があった方が、いろいろな所を見れて便利」

「便利より安全を優先しようよ」

「私は、誰よりも安全運転。その証拠に無事にここまでたどり着いた」


……何度も同じ所グルグル回ってね……


「わかったから、今度は機械のナビを車動かす前に入れようよ。俺だって日光までの道程(みちのり)なんてわかんないのだからさぁ」


「じゃあ早く入れてくれる? 待つのは嫌い」


……我慢だ……耐えろ、俺……


 俺はナビにホテルの場所を入力しながら、どうしたら命が助かるかを考えていた。このままでは、運転者含め全員死亡なんてニュースが流れるのは目に見えている。


 危なくなったら、シールドの魔法を使うか?

 それとも、ぶつかりそうになった相手の車を魔弾で撃ち抜くか?

 黒翼のマントを使えば、この車、空に浮かべる事が出来るか?


 そんな事を考えながら入力していると『ポンッ。目的地の入力が完了しました。これから案内を開始します。交通法規に乗っ取って安全な運転を心がけて下さい』と、ご丁寧なメッセージが流れた。


 入力が完了してしまった……

 もう、後戻りは出来ない……

 チャンスは今だけだ……


「あっ、そう言えば忘れ物したかも〜〜とりに帰って来るから先に行ってていいよ」


「シロウ君、何忘れたの? 」


……何なら無難に帰れるんだ? ……


「傘とか? 」


「それなら私持ってるから、無くても大丈夫だよ。それに天気予報で合宿中は晴天だって言ってたよ」


「そうですよね〜〜」


……失敗した……なんで晴天なのに傘持ってくるの? この退魔師さんは! 用意よ過ぎだろう……あぁ〜〜アホな俺……


「では、行く」


……シアンのGOサインが出てしまった。もう、逃れる術はない……


「乗員のシートベルト着用を確認した。右良し、左良し。それでは出発」


『ブゥオ〜〜ン。キキーー! 』


『わぁ〜〜! 』


 車の発進と共にみんなの悲鳴が聞こえる。そして、


『次の交差点を左です』


 車のスピードが速過ぎて、ナビの案内が追いつかない。


「シアン、さっきの交差点を左だったみたいだよ。真っ直ぐ来ちゃったけど」

「ナビの性能が悪過ぎ。これでは、目標地点にトマホークミサイルであるTACTOMを正確に誘導出来ない」

「ミサイルじゃないからっ! 車だからっ! 」

「誘導式はどれも同じ。正確な位置を捕捉できないと有らぬ所に被害を出す」

「被害受けるの俺達だからっ! もう少しゆっくり走ろうよ」

「ミサイルは急には止まれない」


……もう、勝手にしろっ! ……


 後部座席を見ると気絶寸前の先輩達がいる。スズネは、楽しそうに外を眺めていた……




◇◇◇



 ゴールデンウィーク中なので、高速に入ると、渋滞していた。そのお陰で、シアンの無茶ぶりの運転は封じられた。


「良かった……こんなに渋滞がうれしいなんて初めてだよ……」

「シロウ、何か言った? 」

「いいえ、何も? 」


 そのかわり、シアンはイライラしている。後部座席の先輩2人は失神状態だ。スズネだけは、元気に何かを食べていた。


……この退魔師、化け物なんじゃないのか? ……


「シアンも食べる? 美味しいよ」

「ありがとう、スズネ。このイカの燻製美味しい」

「シロウ君は? 」

「俺は大丈夫……」

「そうなの? 美味しいのに……」


……なんでイカの燻製? 普通、スナック菓子とかじゃないの? ……


 お陰で車の中がイカ臭い……


 その時、アンリエット王女から念話が入った。


『シロウ様の世界は、何もかも面白い事ばかりですわ』

『今、どの辺にいるのですか? 』

『お山が近くに見えますわ。何処なのでしょう? 』

『そうですか? クルミ達は大丈夫そうですか? 』

『ゼロツーさんは、車って狭くていいね、って言ってましたけど、ゼロスリーさんは、何だか元気がなくて黒いメガネを着用しましたわ。クルミさんが側で献身的なお世話をしてますわ』

『そうでしたか……迷惑かけますが宜しくお願い致します』

『はい、こちらこそよろしくですわ』


……[念話終]……


 アンリエット王女が性格が良くて良かった……

 これなら悪魔達も大丈夫そうだ……


 渋滞のお陰で命拾いしたが、俺は、路肩を走ると言ってきかないシアンをどうにか我慢させ、俺達がホテルに着いた時は、もう、午後の3時を回っていた。


 俺達がホテルの玄関に車をつけると、待っていてくれたのか、エリックさんが外に出てきた。


「ホッ〜〜無事で何よりデス」


……この、確信犯め! シアンがこんな状態なのを知ってたな! ……


「エリックさんは何時頃着いたんですか? 」

「お昼には着いてました」

「高速、渋滞してたでしょう? 」

「そうみたいデス。でも、路肩を走ってきたから前に誰もいませんでした」


……こいつもかっ! しばらく、牢屋に入って反省しろっ! ……


「路肩は走っちゃいけないんだよ」

「平気デス。緊急走行用にパトカーの赤色灯を借りてきましたから」

「そうですか……」


……どんなコネ使ったの? ……


「ほらっ! シロウ、エリックは路肩走行してきている。シロウが止めなければ、もっと早く着いた」

「シアン、俺が悪いの? 」

「そう。シロウは、細かい。反省すべき」


……俺、間違ってないよね〜〜どうしたら、こいつらにわかってもらえるの?……


「カシミールさん達は? 」

「今、部屋で休んでいます。それより、その……妹さんの件ですが」

「確か、睦美が言ってたホテルは、〇〇ホテルって言うらしいけど、何処だろう? 」

「それなら、すぐそこなのですが、妹さんと思われる女将さんは、今、留守のようです。夕方に戻るそうなので、部屋に荷物を置いてから、そちらに行ってみましょう」

「わかりました。でも……」


 車の中には、完全の気を失っている先輩2人がいた。スズネは、大きく身体を伸ばし「良い空気ね〜〜」と言っていた。




◇◇◇




 俺達は、部屋に着くと銅嶋先輩と高志間先輩は、シアンの運転で気力、体力ともに使い果たしたらしく、今日の部活は自由行動となった。他に用事がある俺にとっては、この一点のみ、シアンの運転に感謝した。


 カシミールさんとアンリエット王女、そして、クルミを連れて隣のホテルに向かう。ゼロ達、吸血鬼達は部屋に入ってすぐに亜空間から柩を取り出して中に入ってしまったらしい。


「大丈夫かなぁーーゼロ達は……」

「大丈夫ですよ。喜んで柩を取り出して中に入って行きましたから」

「それはそれで心配というか何というか……」


 俺とクルミの話を聞きつけたスズネは、


「シロウ君は心配症だよね。ドラ代さん達は、私達よりずっと強いのだから、何が起きても大丈夫だよ」


「それはそうなのだけど、心配してるベクトルが違うというか何というか……」


「そうなの? 」


 きっとスズネにはわかるまい……

 同じような人種なのだから……


『ピーポーピーポー……』


 救急車が俺達の脇を走り去って行った。それをみたアンリエット王女は、


「とても賑やかな車ですわね」

「あれは、救急車と言って、病気の人達等を病院に運ぶ車なんですよ」

「そうのようなシステムがあるのですか……王国でも取り入れたいです」


 確かに、異世界にそのようなシステムがあれば、助かる人も増えるだろう。民の為にすぐにそのような事を思い付くアンリエット王女に感心していると、


「あのホテルみたいデス。女将さんが戻って来ているとよいのデスが……」


 エリックさんが指差した方向に見えて来たホテルは、和風建築を取り入れたいかにも格式の高そうなホテルだった。


「睦美達、修学旅行でこんなに凄いホテルに泊まったんだ」


「確か、私もこのホテルだったと思うよ」


「スズネもなの? そういえば俺、修学旅行行けなかったんだ。確か熱出して寝込んでたんだよね」


「シロウ君も行ってたらこのホテルだったかもねーー」


 スズネの言う通りかもしれない。学校にとっては、毎年の恒例行事だ。宿泊先をコロコロ変えたりはしないだろう。


 そんな話をしているうちにホテルに着いてしまった。エリックさんがフロントに確認しに行く。


 俺達は、ロビーのソファーに腰掛けて待っていた。


「まだ、戻って来てないそうデス。このまま、ここで待ちましょうか……」


 俺達は、この場所で女将さんの帰りを待つことにした。しかし、随分時間が経っても帰ってくる様子がない。それに、フロントの方が何だか騒がしかった。


「様子がおかしいデス。聞いてきます」


 エリックさんは、慌てたようにフロントに聞きに行く。長年、危険な仕事をしていて感が働くのかも知れない。


「大変デス。ここの女将さんが湖の畔で倒れていたそうデス。救急車でこの近くの病院に運ばれたと言ってました。そちらに向かいましょう」


「何だって! ルミシールが……」


 エリックさんの話にカシミールさんは驚き、焦っている。


 もしかしたら、ドラキュラ伯爵が先に現れたのか……?

 女将さんの容態も気になるが、もし、宝玉が奪われてしまっていたら……


 俺は、この先起こるであろう、最悪の状況を頭から拭い去る事が出来なかった……





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