第107話 ーーー最後の宝玉の在り処ーーー
吸血鬼バンピーゼから話を聞いて帰る時に、最新型の携帯端末機を家族分を含め10個ももらってしまった。ドラ次郎とドラ代は、ハイテク装備の柩をもらって喜んでいる。何時もは、亜空間に収納して寝る時使うそうだ。
……また、引きこもってしまったらどうしよう……
リーナの家に転移で着くと、サツキがソラスと待っていた。マリーンさんの気配をソラスが感じて、サツキと駆けつけたらしい。
「お兄、どこ行ってたの? ソラスがマリーンさんが来たと言ったら、急にみんなの気配が消えたって言うのでびっくりしたんだから〜〜」
「マリーンさんの主人バンピーゼさんのところに行って話を聞いて来たんだよ。ソラスにも聞いてほしいのだけど……それと、お土産に最新型の携帯端末機もらったから、家族のみんなに分けてくれる」
「やったーー! 私、赤いのが良い。太っ腹なのね。バンピーゼさんって」
「自分が手がけた商品だから腐る程あるんだって言ってたよ。羨ましい話だよね」
「みんなに渡してくるね〜〜」
そう言ってサツキは、リーナの家を出て行く。ソラスだけは、話を聞いて欲しいので残ってもらった。
バンピーゼさんから聞いた話をソラスに話すと、
「ドラキュラ伯爵は、こんなとこにいたのでありますか。徘徊するにも、限度があります! ホーホー」
……聞いて欲しいのは、そこの部分じゃあ無いのだけど……
「ソラス、邪神アンラ・マンユって知ってる? 」
「もちろんであります。世界が混沌に満ちていた時、善神であるアフラ・マズダと悪神であるアンラ・ユンマは、お互いどちらの神意が世界を支配するか、何度もぶつかり合い、戦ったと言います。お互いの力は拮抗していた為、決着は付かず、善神であるアフラ・マズダは、天界を悪神であるアンラ・マンユは、冥界を作り上げた我が祖先でもあります。
善神のアフラは、その身を子孫に分け与え消えたと言われておりますが、悪神アンラは、冥界で悪魔達を作り、何度も天界と戦争をしたそうです。その力はあまりにも強大だった為、冥界の悪魔達も恐れ慄き、神族と力を合わせて封印したと聞いておりますが、半魚人族が、その封印の管理をしていたとは、私も最近知ったばかりであります」
「そうなると、ドラキュラ伯爵だけではなく、悪魔、つまり、リーナやソラスのご先祖って事になるのか……」
「そうであります。ですが、悪魔は、基本、そのようなしがらみに従いません。自由な存在でありますから……」
「でも、ドラキュラ伯爵だけでは違ったって事? 」
「何か特別な関係があったのではありませんか。例えば、私とサツキ様のような……ホーホーケキョ」
「つまり、契約関係にあったと? 」
「契約かどうかは知りませんが、それに近しい感情などいくらでも存在します」
……ドラキュラ伯爵にとって特別な存在という事か……バンピーゼさんが親子のような関係と言ったのはこういう意味らしい……
「もし、今の世界にその邪神が蘇ったらどうなると思う? 」
「そうでありますね〜〜もちろん地上は滅びるでしょう。天界や冥界も無事というわけにはいかないと思います。ホーホー」
「危険な存在というのは変わりがないわけか……」
「あくまでも封印が解けたらの話です。万が一にもそのような事になるとは思えませんけど……ホーホーケキョ」
「それなら良いのだけど……」
……嫌な予感しかしない……
「ねぇーーゼロツーやゼロスリーはどう思う? 」
「あの〜〜お二方は、柩を取り出して寝てしまいましたけど……」
「はやっ! 」
クルミが言うには、俺達が話している間に柩を取り出して満面の笑みを浮かべながらその中の入ってしまったようだ。
確かに、この団地に似つかわしくない柩がゴロンと2つ置いてある。
「やれやれ……」
2魔は、この柩から出てきてくれるのだろうか?
心配になってきた……
◇◇◇
次の日、朝から念話が入りっぱなしだった。
まずは、アンリエット王女からだ。用件はこの間のキメラ討伐の褒賞を王家から渡したいというので、時間があったら来て欲しいとの事だった。それと、半魚人族のカシミールさんが落ち込んでいるので見かねたエルフの族長が郷に連れて行ったそうだ。アンリエット王女は、王宮内での出来事なのでお詫びがしたいと、エルフの郷に行きたいと言っていた。
『わかりました。その件は、エルフの族長の話を聞いてからお答えしますね』
和解したとはいえ、勝手に連れて行く訳にもいかないだろう。俺は、族長の意向に沿うようにしようと思っていた。
『お願いできますか? 良いご返事をお待ちしておりますわ』
……[念話終]……
半魚人族のカシミールさんの話を聞かないといけないし、その時にでもアンリエット王女の話を伝えようと思う。
すると、今度は、スズネからだった。
『シロウ君、おはよう。明日の合宿、朝9時に学校集合だって、高志間先輩から連絡きたよ。楽しみだね』
『わかった。ありがとう』
……[念話終]……
最後は、シアンだった。
『明日、朝、9時学校に集合らしい』
『そうみたいだね。さっき、スズネから念話がきたよ』
『そうなんだ。それから、エリックがキモい』
『えっ!? 何で? 』
『人形抱えて王女の名前を呼んでいる』
『……そういえば、あっちの世界に連れてってくれと言っていたっけ……』
『シロウ、責任とって、でないと、産まれちゃう』
『はぁ!? 何が? 』
『エリックの人形がまた増える。王女似の……』
『もっと、普通に言ってくれる? 驚くだろう』
『至って普通……』
『わかったよ。半魚人族の人に話を聞きたいからエルフの郷に行こうと思ってたんだ。その時に連れて行くよ』
『何故に、エルフの郷に? 』
『今、カシミールさん、族長の家にいるらしいから……』
『エルフの郷なら、私も行く。妖精が喜ぶから』
『わかったよ。お昼頃でいい? 』
『うん。エリックに伝えておく』
……[念話終]……
もっと、普通に会話できんのか! ……
そういえばエリックさん、あっちの言葉わかんないんじゃないか? ソラスに頼もう……
二度寝したいが、完全に目が覚めてしまった……
まだ、朝の6時だ。学校のない日ぐらい、もう少し寝ていたい……
でも、三季姉は、今日も部活があるらしいし……
お弁当作らないと……
俺は、いつもと同じ時間に起きてしまった。もう、体内時計の刻まれているようだ。
◇◇◇
俺は、シアン、エリックさんを連れて異世界へのドアを開いた。エリックさんは異世界初体験なので言葉をソラスに享受してもらい、服装も異世界仕様に変更してもらった。
ドアを開いた先は、エルフの郷だ。エリックさんはミリエナ国王都に行来たかったらしいが、今回は用があるので納得してもらった。
族長の家のテラスにドアを開くと、また、若いエルフ達に囲まれる。
「また、お前達か〜〜」
「今日は、半魚人族のカシミールさんに話を聞きに来ました」
「それなら、中にいるぞ。おいっ! その男は誰だ! 」
若いエルフは、エリックさんを見て驚いたように話す。
「エリックさんと言って、シアンの兄のようなものです」
「エリック……まぁ、いい。とにかく、問題は起こすなよ」
「わかりました」
……何故、エリックさんを見てあんなに驚いたんだ? ……
「族長、シロウです。シアンとその兄のような人と一緒に来ました」
「おぉーー中に入ってくれ」
族長の家の前で声をかけると、中から返事がきた。シアンは、慣れている様子で中に入って行く。俺達もそれに続いた。
「族長、来たよ」
「シアン、この前は助かった」
「大丈夫。妖精の扱いを教えてくれたお礼のつもり」
「そんな事は些細な事じゃ。それと……うむ……お主……」
族長もエリックさんを見て考え込んでいる。妖精の眼で判断しているのだろうか?
「私は、エリックデス。異世界は今日が初めてデス。シアンがいつもお世話になっているようで感謝しマス」
「その声、その話し方、間違いない! ペリンを呼べ! すぐにじゃーー! 」
族長は、側にいた若いエルフにそう言うとマジマジとエリックさんを見だした。エリックさんは、緊張しているのか、身体が固まっている。
「あの〜〜族長、エリックさんがどうかしましたか? 」
「シロウ、まだ、わからんのか! この者は、ペリンの父親じゃあ。どうしてこうなっているのか儂にも理解できんがのう」
「そうだった……すっかり忘れてた……シアンは、知ってたよね」
「知ってたけど、説明できない。理解不能」
すると、ペリンが慌てて家に入ってきた。エリックさんの顔を見るなり、
「えっ……お父さん」
そう言いながら涙を流し、エリックさんに抱きついてしまった。慌てたエリックさんは、
「シロウ、これはどういう事なのデスか? 」
「俺にも、よくわからないけど、シアン、説明してあげてよ」
「変態人形好きエリックは、その子のお父さん。理由は、わからない。でも、それが事実」
「私は、異世界でこの子のお父さんなのデスか!? 意味がわかりません」
「それは、ここのいるみんなもそう思っている」
「? 」マークが頭の上に出ていそうな顔でエリックさんは、状況が飲み込めないらしい。それは、ここにいる誰もがそう感じていた。
◇◇◇
「エリックさんは、何らかの事件に巻き込まれてこっちの世界に来てしまったんじゃないのだろうか? 」
「違う。エリックは、人形好きが昂じて、人形パワーで異世界に飛ばされた」
「まぁ、今の様子からみると、まだ、先の話のようじゃな。その証拠に本人は全く理解できんという顔をしておる」
「エリックさんは、心当たりないの? 」
「シロウ、この世界に来たのは今日が初めてデス。心当たりもクソもありません」
「でも、いずれそうなる可能性があるという事じゃ。ペリンの父親なのは事実なのじゃからな」
「お父さん……」
ペリンさんは、エリックさんにくっついて離れようとしない。
「ペリンは、他に身寄りはおらん。せめて、ここにいる間だけでも、そのように振舞ってもらえんじゃろうか? 」
「それは……構いませんデスが……」
理解はできないけど、ペリンさんを見捨てる事も出来ないという感じみたいだ。
「ところで、カシミールさんは? 」
「部屋から出てこないのじゃ……困った事よ」
「ドアの外からで良いので話をしても良いですか? 」
「それは、助かる。こっちじゃ」
俺は、族長の後をついていった。部屋は、2階らしい。
「カシミールさん。シロウです。実は話があってここに来ました」
「…………」
……また、引きこもりだ……
「カシミールさん、勝手に話しますよ。実は、もう一つの宝玉が盗まれました。カシミールさんと合わせて2つ相手は手に入れたようです」
「何だってーー!! 」
ドアの中から大きな声が聞こえたと思ったら、急にドアが開けられた。
「シロウさん、詳しく話して下さい! 」
「そのつもりで来ました。みんなにも聞いてもらいたいので居間で良いですか? 」
「あぁ〜〜構わない」
カシミールさんが揃ったところで、ここにいるみんなに、これまでの経緯を話した。すると、カシミールさんは、
「妹が危ない……もう、殺されて盗まれているかも知れない……」
「行き先は誰も知らないのですから、それは無いのではないですか? 」
「宝玉は、お互いを呼び合う。つまり、反応するんだ。だから、その反応の形跡を追って行けば最後の宝玉も見つける事が可能なんだ」
「宝玉が1つの時は、そんな話してませんでしたけど……」
「2つ手に入れれば話は別だ。宝玉の持つ力もそれだけ強くなる」
「そうなのですか……」
……バンピーゼさんも同じような事を言っていたけど、本当みたいだ……
「妹さん手がかりはわからないのですよね? 」
「あぁ……」
……ドラキュラ伯爵を探すしか手がないか……
「それで、そちらの方はどなたですか? ペリンさんと随分、親しげですが」
「ペリンさんのお父さんの予定です。今は、違いますが……」
「それは、どういう事なのでしょう? 」
「カッシーよ。それは儂らもわからんのじゃ。ただ、そうだとしか今は言えん」
「でも、これでエリックの人形好きが治れば言うこと無い」
「親子というより、恋人同士のような感じがします」
「カシミールさんもそう思いますか? 俺もそう思ってたんです。写真でも撮っておきましょうか? 」
「写真とはなにかね? 」
俺は、携帯を出して写真を見せる。まだ、バンピーゼさんからもらったスマホに変えていない。
「これは、妹が撮ったやつですけど、こういう風にその場面を記録できるのですよ」
「それは、便利な物ですね〜〜よく見せて下さい」
「どうぞ、ここを押せば次の写真に移動できますから」
「このボタンを押せば良いのですね……」
ボタンを押したカシミールさんの手が止まった。写真を見る目が異常すぎる……
「ル、ルミシール……」
「えっ!? どうしたんですか? 」
「シロウさん、こ、この女性は誰ですか! 」
「いきなり焦ってどうしたのですか? これは、確か、妹が修学旅行で撮った写真ですけど、その女性の事は俺も知りません」
「ルミシールです。間違いありません。眉間のところに傷のようなものがあるでしょう? ルミシールが小さい時に、遊んでいて怪我をした跡です。間違いありません」
「本当にこの女性はカシミールさんの妹さんなのですか? 」
「そうです。直ぐにでも合わせて下さい。でないと、妹の命が危ない」
……こんな偶然あるのだろうか? でも、カシミールさんがそう言っているし……
「わかりました。この女性は、俺達の世界にいます。カシミールさんの妹さんかどうかわかりませんが、一緒に行きましょう」
「ありがとうございます……これで、ルミシールに会える……」
カシミールさんは食い入るように写真を見つめたまま、動かなかった。




