第105話 ーーーアキバで買い物ーーー
日本にゼロツー、ゼロスリーそしてクルミをリーナの家の連れて帰ると、エリックさんから、殺害された幽霊の女の子の詳しい事情がわかったと連絡をもらった。
悪魔達は、リーナの家で留守番しててもらい、俺は、エリックさんの家に向かう。と、いってもすぐ下の階なので、1分とかからない。
「シロウ、今度は、私も異世界とやらに連れて行って下さい」
エリックさんに会って、いきなり言われた。きっと、アンリエット王女の国を見てみたいのだろう。
「構わないけど、エリックさんの目的は、何となくわかるよ」
「べ、別に目的などはありません。シアンが、何時も楽しそうにしてるので興味を持っただけデス」
「わかった、そういう事にしておくよ。で、あの事件の詳しい話って? 」
「そうそう、それデス。シアンも呼びます。少し、待ってて下さい」
そう言ってエリックさんは出て行った。この部屋は、相変わらず、気色悪い。人形を使うエクソシストだとわかっていても、これだけの数の人形は、流石に無いと思う。
……誰かに見られているようで落ち着かないし……
すると、目の前の真紅のドレスを着た人形の首がいきなり、回転して落ちた。
『ギャーー! 』
ここまで驚くつもりはなかったが、突然の事でびっくりしたのだ。すると、
「キャハハハ、シロウは、相変わらず期待を裏切らないリアクションしてくれるぜーー! 」
「その声は、アスカだなっ! 驚いたじゃないか! 」
「へへーーン。驚かすのがあっちの仕事さ! 」
「良いのか〜〜エリックさんの大事な人形を悪戯して〜〜きっと、聖水、かけられるぞ」
「大丈夫。あっちはトンズラするからさぁ、後はシロウ頼んだぜ」
そう言ってアスカは、壁を潜り抜け何処かに消えてしまった。マップを見れば行方はわかるが、そこまでする必要はない。俺は、エリックさんが戻るまでに、首が落ちた人形の頭を拾って、どうにかくっ付けようとしたが、上手くはまらない。
「わぁーー! シロウ何してるデスか? おぉーー私の可愛いベルベットよ」
エリックさんに見られてしまった……名前つけてるの? ……
「アスカが俺を驚かすつもりでやったんだよ。俺じゃあないからね」
「アスカデスか〜〜見つけたら、お仕置きデス」
「エリックもシロウもキモい。2人だからダブルキモい」
……ダブルキモいって……
「シアン、いたなら状況わかるだろう? アスカがやったんだよ」
「違う。私が言ってるのは、2人がお人形を見る目がキモいって事」
「エリックさんはそうかもしれないけど、俺は、人形に興味は無いよ」
「隠してもダメ。シロウは、真正の人形好き」
……フィギュアは、別だと俺は思うけど……
「私は、キモく無いです。ただ、愛しいだけデス」
……それをキモいって言うと思うのだけど……
「まぁ、それは、さて置き、事件の事を伝えましょう」
「エリックさん、人形の首だけ持っているのを見てると落ち着かないんだけど……」
「シロウ、気にしないで下さい」
「シロウ、エリックは変態人形好き。何を言っても無駄」
「そうなんだ……」
……キモいっていうより、怖いんですけど……
「では、事件の説明をしましょう。あの幽霊の子は立花 樹里愛さんと言いまして、年齢は10歳だったそうです。死亡推定時刻は、午後の6時から7時の間。首を絞められた痕があり、直接の死亡は絞殺のようデス。犯人は、あの警察官の男性で間違いないのデスが、不可解なのは両親の方デス。こちらは、死亡推定時刻が、午後9時から10時ごろとなっていマス。死因は、不明だそうです。検死結果では、2人とも心不全となっておりますが、不可解なのは、血を抜き取られているらしいのデス」
「血を抜き取られているの? 」
「はい。死亡後に血を抜き取られたらしいデス」
「じゃあ、犯人は? 」
「どうやら、両親の方はあの警察官では無いようデスね。今、関係筋を当たって調査中デス」
「きっと、魔の者の仕業」
「シアンの意見も一理あると考えマス」
吸血鬼の仕業か……? この世界にも、吸血鬼はいるけど、ヨーロッパの吸血鬼マリーンさんは、人を殺さないように吸血する約束をしてたし……じゃあ、誰?
「この件に関しては、ローマ聖教も注目してます。シロウの住む側で起きた事件デスから……」
「今度は、ローマ聖教にまで、疑われているの? 」
「そういう意味ではありません。シロウの強大な魔力に惹かれて集まって来た魔の者の存在を疑っているのデス」
……でも、それって……俺のせいでもあるよね……
「しばらくは大人しくしていて下さい。それと……」
「それと……? 」
「アキバに行かないとこの人形が直せません! 」
「はぁ!? 」
エリックは、大事そうに抱えている人形の頭を優しく撫でていた。
◇◇◇
俺は何故かエリックさんと2人でアキバに来ていた。もちろん、エリックさんに無理矢理連れてこられたのだが……
シアンも誘われたのだが、人形好きとは一緒にいられないとの事で、断られてしまった。
俺も断れば良かったのだが、実は別の目的があった。以前、マイルームの中に段ボールごと仕舞っておいた愛しのフィギュア達を女神エリーゼに壊されてしまったので、別の物を補充しようと思っていたのだ。エリックさんに金貨を換金してもらい、資金には余裕がある。これで、準備は整った。あとは、店に行くだけだ。
エリックさんの人形の直しは、1時間かかるらしい。俺は、1時間後に待ち合わせする事にして、何時ものお気に入りの店に行く。ここには、たまに掘り出し物があるので、目が離せない。
店内を隈なく見て回るのは、後回しにして、直ぐにフィギュアが陳列してあるコーナーに足を運ぶ。すると、目の前にそれが飛び込んできた。
「こ、これは……」
目の前のショーケースに陳列されているのは、伝説のフィギュア原型師 母形 造太 作の一点物だった。しかも、あの魔法巻毛少女くるくるパッツンを模した物だ。このフォームは、第12話放送の戦闘で使ったデカハサミを初めて武器として使った時のシーンだ。
「ほ、ほしい……」
価格を見ると10万円となっている。
「あれっ……あの原型師の作なら最低でも15万以上はするはずだ……」
「お客様、お目が高いですね。このフィギュアに目をつけるとは……」
話しかけてきたのは、店員さんだった。
「何で10万円なのですか? この人の作品なら、その倍しても良いくらいですけど」
「実は、これは、塗装の一部分が剥がれていて、その分の値引き込みなんですよ」
「塗装の剥げですか? あの伝説の人がそんなヘマするとも思えませんけど? 」
「裏話ですけど、この作品の制作最中にも他のフィギュアを三体程作ってたらしいのです。それで、納期が迫っていて後で直そうとしてたらしいのですが、作品として手違いで出荷されてしまったそうですよ。それで、この値段です」
「そんな事があるんですね〜〜」
「どうですか? お客様、二度とこの値段で手に入りませんよ」
「それはそうでしょうけど……」
今、俺の手元には、11万円ある。消費税を払ってもお釣りがくる。
「お客様、一点物ですよ。限定品以上の代物ですよ」
「……う〜〜む」
俺は散々迷った挙句……買ってしまった……
こんな高価な買い物をしたのは初めてだ……そういえば、異世界で家買ったんだった……二度目だ!
異世界でキメラとか倒したし……
頑張って魔法も覚えたし……
レベルも上がったし……
「これくらいのご褒美、あっても良いよね」
俺は、購入した金額に見合うだけのいろいろな理由を見つけては、自分を誤魔化していた。
エリックさんとの待ち合わせも、もうすぐだ。俺は、待ち合わせの場所である駅に向かう。
すると、向こうから見慣れた若いサラリーマンが歩いてくる。彼女だろうか? 可愛らしい女性と腕を組んでいる。
「あっ、大丼田 海士さんだ……その隣の女性は、俺が変装してた時、痴漢に合って困ってた人だ……そうか〜〜2人は付き合いだしたのかぁ〜〜」
俺は、大丼田さんの事が気になっていた。スキルで大丼田さんに化けた時、会社でいろいろやらかしてしまったからだ。
「そうか〜〜そうか〜〜」
俺は、2人の幸せそうな顔を見て、安心するとともに、罪悪感が消えていくのがわかった。
向こうからエリックさんがやって来た。俺を見つけては大きな手で手を振っている。
人形を包まずに抱えてくるのはやめてほしい……




