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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第104話 ーーー日本に帰ろうーーー






 ミリエナ国軍と一緒に王宮に戻ると、大きな歓声に包まれた。伝令隊員が先に報告に向かって、キメラ討伐の成果を聞いていたのだろう。


 俺は、ゼロスリーが気持ち良さそうに寝ているので、転移も出来ず、ましてや、軍の前で空を飛んで帰る訳にもいかず、みんなと一緒に帰る事を余儀なくされていた。


 途中で、キメラに大群に中で倒れていた青年が目を覚ました。名前は、フリークと言い、この前冒険者になったばかりだと言う。年も俺と同じ15歳だった。


「何故、僕は生きているのでしょう? 」


 当然の疑問なのだろう。キメラの毒に侵されて、大群の中にいたのだからフリークがそう言うのも無理は無かった。


「運が良かったんだよ。それに、回復薬も飲んだし毒は消えてるはずだよ」

「シロウさんが助けてくれたんですよね。あ、ありがとうございます」

「俺が見つけたのは、偶然だし……」


「シロウ兄、何、照れてるの? 」

「サツキ、仕方ないだろう? 感謝されるの慣れてないんだから……」

「そうよね〜〜シロウ兄は、怒られて意地になって強くなるタイプだもんね」

「悪かったな! 出来損ないの兄貴で! 」

「そうでもないよ〜〜料理は上手だしね」

「俺の良いとこはそれだけかっ! 」

「まぁねぇ〜〜」


「仲の良い兄妹なんですね」

「フリーク君、どこ見てそう思えるの? 」

「私にも妹がいますから分かりますよ」

「そうなんだ。兄貴は苦労するよね〜〜。でも、どうしてあんな所にいたの?」

「用があって王都まで戻る途中でした。そしたら、いきなり、魔獣が空間から溢れ出てきたのです。もう、これでお終いだと思いました」


……空間からだって……やはり、誰かが仕組んだようだ……


「それにしても、ゼロスリーさんは良く寝てるわね。シロウ君の背中、そんなに、気持ち良いのかしら」


 スズネは、おんぶして寝ているゼロスリーをマジマジとみながらそう話す。


「大活躍だったから疲れたんだと思うよ」


……言えない……血を吸って豹変して3分しか保たないなんて……


 すると、ゼロスリーは、


『むにゃ、むにゃ……アンコールありがとーーう……では、聞いて下さい。[君の瞳は馬のようだね、と言う君の方こそ牛のような鼻だよ]です……むにゃむにゃ……』


……何だ!? 寝言長っ! しかも、この歌のタイトルじゃあ、絶対、売れないと思うよ……


「シロウ君、今の寝言なの? 」

「そうみたいだね……」

「何処と無く、ドラ子さんに似てるわよね」

「俺も、初めて会った時、そう思ったよ」

「私もゼロスリーさんから魔法を教わろうかしら……」

「スズネなら、俺よりずっと上達が早いと思うよ」


 たわいもない会話をしているうちに王都の北門が見えてきた。出迎えてくれている王宮の者や王都民達の大きな歓声がここまで聞こえる。


「こういう場面は苦手だ……」


 俺は、できるだけ目立たないように隠れながら王宮まで行くのであった。




◇◇◇



 王宮の応接室で俺達はシアンと合流した。他にも半魚人族のカシミールさんや、エルフの族長ポロンさんとペリンがそこにいた。


 アンリエット王女や魔導師グラハム達は、緊急の会議が開かれているようで、それに出席したようだ。


「カシミールさん、怪我は大丈夫なのですか? 」

「シロウさん、お陰様で、こちらのお嬢さんの薬を頂きまして回復しております。ですが……」

「宝玉が盗まれたとお聞きしましたけど……」

「はい……」

「誰が奪ったかわかりませんか? 」

「いいえ、気づいた時には、刺されていて、脇腹のエラに隠してあった宝玉を盗られてました」


「最初から宝玉を狙っていたという事ですよね」

「そうだと思います……」


「シアン、妖精の眼で気配とかわからなかった? 」

「痛みが激しくてそれどころではなかった。この、痛みは、余程、穢れた存在だと思う」


「我もわからんかった……こんな事は初めてじゃ」


……妖精の眼を持っている2人ともわからないなんて、余程の奴だ……


 俺は、リーナに念話を入れた……


『リーナ、いる? 』

『シロウ、どうした? 』

『冥府で変わった事はないか? 例えば、誰かが抜け出したとか? 』

『特別、変わった事はない。まだ、徘徊老人は見つからないけど』

『ドラキュラ伯爵か……まさか……』

『リーナ、相談したい事があるんだけど後でそっちに行っても良い? 』

『これから、ヤマンバ族との会合がある。予定では2〜3日かかる』

『そんな部族いるんだ? 』

『山の奥でひっそりと暮らしている部族。引きこもりだけど知恵者が多い。冥府の再建に協力してくれる人材の確保が目的』

『相変わらず忙しそうだな。では、それが終わってからでいいよ』

『本当なら、ドラキュラ伯爵と行く予定だった。代わりにドラ子を連れて行く』

『そうだったんだ。でも、冥府を留守にして大丈夫なの? 』

『ドラ太郎が良くやってくれている。ドラ次郎は、まだまだだけど』

『わかった。また、連絡するよ』

『そうだ。シロウ。ドラ次郎をまた、連れ出してほしい。もう少し外界に接すれば、良くなると思うから』

『わかった。後で迎えに行くよ』

『助かる』


……[念話終]……


「シロウ兄、シロウ兄、どうしたの? 急に黙って」

「あぁ、リーナと念話してたんだよ」

「そうだったんだ。相変わらず仲が良いわね」

「そんなんじゃないよ。サツキだって、ソラスと念話してる時、口を開けて呆けてるぞ」

「嘘よ! 私は、そんな顔してないわ! べっーーっだ! 」


……リーナが忙しくなければいろいろ聞きたい事があったのだけど……


 以前、宝玉を奪おうとしたマンモンは、今も地獄の最下層にいるのだろうか?


それとも、ドラキュラ伯爵が……? まさか……な。




◇◇◇




 三国会談が終わり各国の要人達は、自国に帰って行ったが、キメラ騒動で話し合われた事案は後回しになってしまった。


 俺は、エルフの族長とペリンさんをドアを開いて送り届けた後、ライン王をサラマー国に送り届けた。ライン王は、浮かない顔をしていたが、夕食会でミリエナ国の事務官のドリトスさんが、前向きに検討すると、俺に言っていた事を伝えたら、笑顔が戻ってきた。

 国を預かる身としては、キメラより、各国の助力の方が大切なのだろう。


 この世界にいるとキメラの件でいろいろ質問ぜめに合いそうなので、俺は、みんなと一緒に日本に戻る事にした。不思議研究倶楽部の合宿も控えている。


 サツキ、ソラス、シアンとスズネを日本に届けてから、俺とゼロスリーは、冥府に向かう。


「お帰りなさい。シロウ様」


 いつも通り、鬼っ娘のクルミが迎えてくれた。


「リーナにドラ次郎を連れ出してほしいって言われたんだけど、いる? 」

「今、呼んできますね。居間でお待ち下さい」


 俺とゼロスリーは、居間に向かい、ソファーに腰掛けた。ゼロスリーは、何だか落ち着かない様子だ。


「ゼロスリー、どうかしたの? 」

「いいえ、少し席を外しますね」


 そう言って居間から出て行く。お腹を押さえているところから、花を摘みに行ったようだ。


……急な場面転換は、まだ苦手らしい。でも、前より随分良くなった気がする……


 すると、クルミとドラ次郎が居間に入って来た。ドラ次郎は、マスクもサングラスもかけていなかった。


「ドラ次郎じゃない、ゼロツー、マスク取れたんだね」

「シロウさん、僕、発見したんです」

「何々、慌てて、どうしたの? 」

「今、シロウさんからは僕が普通に見えているでしょう? でも、実はこれ、僕からは殆ど見えないのです」

「う〜〜む。意味がイマイチわからないのだけど……」


「詳しく説明すると、今、魔法で自分の周りに結界を張っているんです。でも、ただの結界ではありません。僕を囲むようにボックスになっているんですよ。外からは、普通に見えるってドラ太郎兄さんが言ってましたけど、僕からは、柩に入っている感じで、必要最低限のものしか見る事が出来ないのです。どうです? 凄いでしょう? 」


「つまり、ロッカーに入って覗き見してる感じなの? ゼロツーからすれば……? 」

「はい。そんな感じです」


……確かに、外から見れば普通に見えるから問題ないけど……大丈夫か? ……


「そうだ。クルミ、地獄の最下層にいるマンモン達は、変わりが無い? 」

「特に連絡を受けてませんが、どうかしましたか? 」

「変わった様子が無ければ良いんだ。もしかして、抜け出したりしないかと思ってたから……」

「あそこには、ケルベロスや閻魔大王もいますので、抜け出す事は無理だと思います」

「そうだよね……ところで、ドラキュラ伯爵はまだ、見つからないの? 」

「はい。冥界を探していたのですが、気配も何もなくて、みんな、困ってました。長年、みんなの世話をしていたから羽を伸ばしたいのかもしれません」


 引きこもりの吸血鬼達の世話をしてたって事か……

 確かに、誰かが世話をしないと、引きこもり悪魔達は、困ってしまうし……

 すると、ゼロツー達が、柩の外に出たから。世話をする必要が無くなって消えたという事か……


「わかった。ありがとうクルミ。ドラ代、じゃない、ゼロスリーが戻ってきたら、一度あっちに帰るよ」

「私も参ります」

「えっ、クルミも? 」

「はい。サリーナ様の留守の間、シロウ様と一緒にいてくれと言われてますし、紅茶も仕入れたいので……」

「わかった」

「ドラ次郎様達の世話は、お任せ下さい」

「クルミがいてくれれば安心だよ」


 吸血鬼の長男ドラ太郎の事が気になったが、クルミが言うには、ドラ子がしていた仕事を任されて忙しいらしい。そこまで、回復したなら問題ないはずだ。


 ドラ次郎も社会復帰できれば、リーナもいろいろ助かるだろう。


 俺は、マスクを外している、一見美少年にしか見えないこの吸血鬼が、心に傷を負っているなんて、微塵も感じられない。


見かけで人も悪魔も判断出来ないものだとつくづく思った。





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