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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第103話 ーーーキメラの大群ーーー





 王宮で開かれていた夕食会は一転して、キメラの話題で持ちきりだった。逃げ出そうとする者もいたが、それを制止するような事はしなかった。ただ、慌てて怪我をしないようの衛兵達が上手く誘導していた。


 マップを展開しながら、俺は、ここまで、キメラの大群が到着するまで、まだ、30分はかかると計算していた。問題は、数である。キメラと他の魔獣も混ざっているようだ。全部で約186体確認出来た。


「ゼロスリー、キメラ200体と戦った場合、勝ち目あると思う? 」

「私だけでも問題ありませんが、数が多いので取りこぼす可能性もあります」

「逃げたキメラが、こちらに向かってきたら大変だし、サツキとスズネに援護を頼むか……」


 俺が、ゼロスリーと話し合っていると、アンリエット王女がやってきて、


「私も参ります」

「王女は、王宮内にいてくれないとパニックになった時困ります」

「いいえ。今回は、私も絶対、行きます!」


……こういう頑固なところは嫌いじゃないが、危険だし……


「姉様、王宮内は私に任せて、シロウさんと行ってきなよ」

「ありがとう。カトリーヌ」


……これでは、連れて行くしかない……


「わかりました。でも、無茶はダメですよ。約束してくれるなら連れて行きます」

「わかりました。無茶はしませんわ」


……って言いながら、無茶するパターンだよねーー……


「王宮内にもしもの事があるといけないから、念話が使えるシアン、残ってくれる? 」

「折角、シロウのフラグを当てた私に残れと? 」

「シアンさん。お願いします」

「そこまで言われたらやぶさかではない」


「じゃあ、スズネとサツキ、俺達が取りこぼした魔獣を王都手前で食い止めてくれる? 」

「良いけど、シロウ兄は大丈夫なの? ヘタレなのに」

「さっきも言ったろう。俺は、前の俺ではないのだ」


「シロウのドヤ顔は、キモいを通り過ぎてmoreキモい」


……シアン、意味不明なのだが……


「キメラ討伐作戦開始だ! 」


『おぉーー!』


「ところで、キメラって何? 」


「…………」


「サツキ……出鼻を(くじ)くなよ〜〜」


「キメラとは、魔獣の事ですわ。頭は獅子で体は山羊、尻尾は蛇というこの世界では、特急魔獣指定を受けている危険な存在です。口からは火炎を吐き、この身体はとても硬い皮膚で覆われています。油断は禁物ですわ」


 そんなサツキの質問を、丁寧にアンリエット王女が説明してくれた。


「そんな危険な魔獣なのですか……ソラスを呼ぼうかな? 」

「サツキ、そういえばソラスは? 」

「ここの連れてこれないから、少し空を散歩して時間を潰すって言ってたよ」

「念話を入れて、サツキの元に帰って来るように伝えてくれる」

「そうした方が良さそうだよね」


「じゃあ、行こうか? 」


「うむ……」

「どうしたの? ゼロスリー」

「いえ、何か気配を感じたものですから……」

「この会場で? 」

「はい。でも、気のせいだと思います」


 俺は、展開しているマップを見てみると、変わった様子は無かった。


……大丈夫そうだ……


「さぁ、行こう! 」


 俺達は、キメラ退治に向かうのだった。




◇◇◇




 マップで確認すると、ミリエナ国の軍が北部リーンの街に向かって進軍していた。キメラが確認されてから、僅かな時間しか経ってないのに、これだけの軍を直ぐに動かせるこの国の防衛は大したものである。しかし、相手は危険な魔獣なので、スズネとサツキは、この軍と一緒に行動してもらおうと思った。


 軍の先頭には、魔導師グラハムさんがいる。俺はゼロスリーに頼んで、アンリエット王女共々、この軍の後方に転移してもらった。


「皆さん、私達もお手伝いさせて下さい」


 アンリエット王女がそう叫ぶと、前を向いて行進していた軍勢が一斉に後方を向いた。アンリエット王女が、ここにいることに驚いた様子だ。


「アンリエットよ。何故来た。相手はキメラじゃぞ! 」


 魔導師グラハムがそう話すと、


「今の私になら、きっとお力になれます」

「腕はわかっておるが、心配なのじゃ」

「ここで、お手伝いできなければ、この国を守る王女の資格がありません」

「今から、引き返せと言っても聞かぬじゃろう」

「はい」


 アンリエット王女もここに加わった方が良さそうだ……


「アンリエット様、サツキとスズネもお願いします。俺は、先に行きます」


 そう言ってゼロスリーの転移でキメラの大群の先頭近くに移動した。


「転移じゃと……シロウ、お主は何者なのじゃ……」


 魔導師グラハムはそう呟いた……





◇◇◇




「わぁ〜〜何、この数! 」

「アリの巣穴移動みたいですね」

「アリにしては、デカいんですけど……」


 俺とゼロスリーは、キメラの大群を見つめながら、その数の多さに辟易した。普通なら焦り(おのの)くのだろうが、不思議と恐怖心は無かった。


 俺は黒翼のマントを羽織り、空から魔弾を放つ。ゼロスリーは、地上からプロペラのような刃が付いた武器を亜空間から取り出して、ブーメランのみたいに回転させて投げつけた。


 ゼロスリーの武器は回転しながら三体のキメラを真っ二つに斬り裂き、手元に戻ってきた。


 俺の方は、自重せずに魔弾をキメラに撃ち込んでいた。一発で一体を倒す感じだが、当たりどころが悪いと二発撃ち込んで仕留める。魔力は十分にあるので問題ないはずだった。


 しかし、キメラの数の多さに俺達の攻撃も次第に全体をカバーできなくなってきた。脇から逸れたキメラが後方にすり抜けていく。


『サツキ! 何体かキメラがそっちに行ったからーー! 』

『わかったーー! 任せといて! 』

……[念話終]……



 サツキに念話を入れて、注意を促す。スズネもアンリエット王女もいるから大丈夫だろうと思っていた。すると、ゼロスリーが俺のところにきて


「シロウ様。チマチマ討伐するのに飽きました。少し、血を頂けますか? 」

「構わないけど……」


……何をする気だ? ……


「では、頂きます……カプッ! 」

「…………」

「は〜〜い。主席番号3番、ドラ代ことゼロスリーで〜〜す。みんな〜〜元気ーー! キュン」


……やはり、豹変するの? 大丈夫? ……


「列を乱してる、そこのキメラちゃん。ちゃんと並ばないと握手しないわよーー。ほらっ、そこ! 列を乱さない! 悪い子はお仕置きしちゃうよーー! 」


……握手って!?……


 そう言いながらゼロスリーは、ものすごい速さでプロペラ式の武器を回転させキメラの大群に突っ込んで行った。ゼロスリーが通り過ぎた後は、血飛沫が舞い、肉片が飛び散った。


「これ……下手に攻撃すると危ないよね。きっと……。それに、歌、歌ってるし……」


♬ キメラのキは、きな粉餅のキ

♬ キメラのメは、明太子のメ

♬ キメラのラは、ライオンのたてがみ何故、ドーナッツ型? のラ!


……ライオンのたてがみって何だよ! 語呂悪すぎだろう! ……


 俺は、ゼロスリーから逃げ惑うキメラだけを狙って魔弾を撃ち込む。それでも、数十匹は倒したと思う。でも。ゼロスリーには、到底敵わない……


「あれ……ゼロスリー、動きが遅くなってる……って、もしかして、3分経ったからか? 」


 俺は、急いでゼロスリーの元に駆けつけた。思ってた通り、目が虚ろになり、眠そうだ。残りは、あと数体残っている。すると、最後尾のキメラが、味方を巻き込みながらも火炎を放った。肉の焼ける匂いが充満し始め、俺は、今にも倒れそうなゼロスリーを抱えて空に避難した。そして、覚えたての氷の槍の魔法をキメラに放つ。キメラが放つ火炎で溶けそうだが、俺は、魔力を振り絞り、氷の槍を維持し続けた。そして……


 最後の一体が、氷の槍に串刺しにされた。俺のレベルは、66まで上がっていた。


 マップで確認すると、キメラはもういないようだ。だが、街道沿いのキメラの残骸の中で、マップに点滅する光点があった。よく見ると、木の下で倒れている人がいる。俺は、急いでその木の下に向かった。


 倒れていたのは男性で、俺と同じぐらいの年齢だ。顔面蒼白で息が荒い。右腕に噛まれたような痕があり、血が滴り落ちている。俺は、フェニックスの涙が入った回復薬を飲ませゼロスリーとは反対の手に抱え急いでサツキ達の元に駆けつけるのだった。






 一方、サツキ達は、脇からそれて向かってきたキメラ四体と戦っていた。サツキは、全方位型天空弾を放ち、キメラ一体を仕留めていた。だが、その倒れたキメラの背後にキングウルフ数体が隠れていた。安心してたサツキに襲いかかる。


「キャッーー! 」


『ザクッ! ザクッ! 』


「サツキ様、油断はいけませんぞ。ホーホーケキョ! 」

「ソラス〜〜ありがとう」

「どういたしまして、ホーホー」


 サツキめがけて襲いかかってきたキングウルフをソラスが風魔法を操り、あっという間に斬りきざんでいた。今は、ソラスと共に空に避難している。


 スズネは、まだ、キメラと戦っていた。破魔の剣でキメラ本体を何度も斬りきざんでいたが、皮が厚く致命傷には至らないようだ。そのキメラの口が大きく開く。火炎攻撃がくる……


スズネは、護符を取り出し、


【南無不動明王の三昧の縄よ! 我が怨敵を縛り給え! ノウマクサンマンダ・バサラタ・センダマカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン!】


 不動明王の金縛り攻撃だ。亜空間から飛び出した縄がキメラを縛りつける。そして、大きく開いた口を縄の圧力で閉ざした。すると、火炎を吐き出そうとしていたキメラは、行き場のなくなった火炎がキメラそのものを内部から焼き尽くした。


 それを、見ていたソラスは、


「興味深い術でありますなぁ〜〜ホーホーケキョ」

「スズネさん、すごい……」


サツキもスズネの法術に驚いていた。







 アンリエット王女とミリエナ国軍は、二体のキメラと対峙していた。アンリエット王女は華麗な流技で宙を舞う。動きやすいように、着ていたロングドレスを切り裂いて、ミニスカートにしていた。


 後方では、魔術師達が魔法の詠唱を行なっていた。前衛の軍は盾と槍で攻撃していたが、キメラには届いていないようだ。


 すると、魔導師グラハムが、


「皆の者! 魔法を放つぞーー! 」


 その掛け声と共に、アンリエット王女や軍の前衛達は、キメラから距離をとった。


 どうやら、魔術師達の詠唱が終わったらしい。キメラの天空に魔法陣が描かれていた。


 その魔法陣を見て、アンリエット王女や前衛の軍達はさらにキメラから距離をとった。最上級魔法の魔法陣とわかったからだ。


 天空の魔法陣から、火の塊のようなものが物凄い勢いでキメラに向かって落ちて来た。最上級魔法のメテオのようだ。


 それを、見ていたサツキやスズネも後方に下がった。


『ゴォーー!! ドッカーーン!!』


 凄い炸裂音だ。辺り一面は土ホコリで何も見えなくなってしまった。グラハムは、直ぐに風魔法を操り、ホコリを風下に流す。すると、頭を撃ち抜かれ、死んでいるキメラがそこにいた。


 勝利の歓声が響き渡っても良さそうなものだが、もう一体のキメラが、大きな口を開けてこちらに向いていた。先程の、メテオを避けたのだろう。もう、火炎攻撃が放たれる寸前だった。


 辺り、一面が今度はキメラの火炎で真っ赤に染まる。しかし……


【シールド! 】


 アンリエット王女を始めミリエナ国軍は、防御魔法シールドで守られていた。


「アンリエット様、遅くなりました」

「ソランジュ、助かりましたわ」


 メイド達は、夕食会の用意や雑事に追われていてアンリエット王女がキメラ討伐に加わった事を知ったのは、つい先程の事だった。影渡で、急いで駆けつけて来たのである。

 また、メイド1号の防御魔法は、最高神ゼウスから授かったものだ。キメラの火炎では、打ち破る事は出来ない。


「ソランジュよ。命拾いしたわい。凄いシールドじゃのう〜〜」

「魔導師様にお褒め頂けるとは光栄でございます」

「これが終わったら一緒に祝杯をあげようぞ! 」

「かしこまりました。アンリエット様、防御はお任せ下さい」


「ソランジュ、感謝しますわ」


 アンリエット王女は、華麗に宙を舞い、キメラの第2の火炎攻撃を避けながらその横に着いた。そして、


【天空に響き渡る雷よ! 我に守護を与え給え!】


 アンリエット王女がそう唱えると、雷が鳴り響き王女が掲げた剣に雷が落ちた。そして、王女とその持つ剣には、雷の守護が宿った。


 金色色に光輝く王女は、まず、後方に回り込みキメラの尾を斬り裂さいた。そして、宙を舞い天空から胴体に剣を突き立てた。キメラは、雷に打たれたようにブルブル震え出し、そして、黒焦げになってしまった。


『……ォ……オーーーー!! 』


 軍のみんなが大きな歓声を上げた。アンリエット王女の顔は、誇らしげだった……。






 俺がサツキの元に向かっている途中、王宮にいるシアンから念話が入った。


『シロウーー! 』

『どうした? シアン……』

『やっと、繋がった……さっきから思念を送っていたの』

『戦闘中で集中してたから、気づかなかったのかも? で、どうしたの? 』

『カシミールさんが刺された』

『えっ! 何だって? 』

『半魚人族のカシミールさんが脇腹を刺されたみたい』

『みたいって、何があったの? 』

『妖精の眼が痛んだと思ったら、カシミールさんが、脇腹から血を流して倒れてしまった。直ぐに、シロウから貰った回復薬を飲ませた。傷は塞がり、意識はある』

『それって……でも、大事に至らなくて安心したよ……』

『そうでもない』

『えっ! 何かマズい状況なの? 』

『そういう意味ではない。半魚人族の宝玉が盗まれたとカシミールさんが言っている』

『宝玉って……あの宝玉が……』

『私は、その重要性をわかっていない。でも、カシミールさんは、とても、落ち込んでいる』

『わかった。もう、こっちは終わったから、直ぐにみんなと帰るよ。それまで、頼むね』

『わかった』


……[念話終]……


 シアンの眼が痛んで、そして、宝玉が盗まれた? ……

 これって、悪魔の仕業なのか?

 じゃあ、このキメラの大群も……


 俺は、この事が何を意味するのか、不安な気持ちになるのだった。






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