第9話『強くなる為に』
ケイルは走っていた。
魔物を沢山殺したせいか走っていてもほとんど疲労を感じず息が上がることもない。
全然届かなかった。
ケイルは忌々しそうに右手の甲にある烙印を見る。
「くそっ…」
あの男に負けた後、ケイルは半日走り続け目に入った魔物をゴブリンの勘に頼り殺せる相手は殺して無理な相手は無視して走り様についでのように狩りながらある場所を目指していた。
意外にも迷宮に住む魔物は遭遇率が高くない。一日練り歩いて10体以下しか遭遇しないなんてザラである。
だから、一気に沢山殺せるゴブリンの村に向かっているのだ。
最初に殺したゴブリン以外にもあれから何体も殺して幾つもの村を知っている。
今からそれを『全て殺して回る』
出来るかどうかは正直な所わからない。
だが今一番最初に思い付く最速の成長方法がこれなのだ。
思い付いた事は片っ端からこの1年でやらなければならない。
まだ死にたくないのなら。
さっきから走り抜けに殺している魔物の中にゴブリンが混ざってきていた。
鋼の剣はフードの男に壊されたので最初の頃使っていた石のナイフを使っていたがどんどん歯こぼれして使い物にならなくなってきていた。
「もうゴブリンの村が近いのか…?」
俺はたった今殺したゴブリンから新しい骨のナイフを拾って使い物にならなくなった石のナイフを捨ててから、深呼吸をした。
そしてしんた思いっきり地面を踏みつけた。
地面に小さなひび割れが少し入り轟音が鳴り響く。
「見つけた」
反射した音で2キロ程先にゴブリンの村があるのを見つけた俺は一直線に走り出した。
ようやくたどり着いた。
骨と木で雑に作られた柵に囲まれた村だった。
建造物も同じような素材でなんとか家の形をしている程度の物だった。
見張りの高台に居た見張りのゴブリンがこっちを見て大声を出したのでこぶしくらいの大きさの石を拾って投げつけた。
ゴブリンの頭が弾け飛ぶ。
それが戦いの狼煙だった。
武装したゴブリンが村の奥から10体ほどこっちに向かって走って来ていた。
右手に魔力を込めて理解もしていない術式を頭に走らせる約5秒程後に手を横に振り抜いた。
走ってきていたゴブリン10体の体が揃って横に切り裂かれた。
『切り裂きの風術式』
どの魔物から得たかも分からない魔術だが消費魔力も少なく、ゴブリン程度なら楽に殺せる威力の素晴らしい術式だ。
そのままの手で『大炎上の術式』を発動させる。
視界内のありとあらゆる『物』に火が付いた。
生き物を直接炎上させることは出来ないが、燃える『物』になら広く手早く火を着けられる魔術だ。
ゴブリンの村を焼くにはお誂え向きだ。
建物という建物が燃え上がりゴブリンの村はすぐに地獄絵図と化した。
建物から火の付いたゴブリンが飛び出してきてもがき苦しんでいたり、逃げ惑うゴブリンに、武器を取り、あるいは素手で向かって来るゴブリンが居た。
今更ゴブリンなんて相手にもならなかった。
向かってくるゴブリンは魔術も使わずに走りながらナイフで切り裂いていった。
20体程殺した所で村の奥から2.5メートル程の体の大きなゴブリンが出て来た。
「少しは役立つ経験が得られそうなのが出てきたな」
俺は姿勢を低くして構えをとった。