第7話『初心者狩り』
心臓が大きく1度脈打ち、反射的に肩に力が入った。
(あり得ないだろ!!早すぎる!!目があってから10秒も経っていないのに。)
圧倒的な、圧倒的な実力差を想像させられた。
それでも、もし相手が敵なら戦わなけならない。
震えそうな手で剣の柄を握り締め、俺は振り返り、短く問い掛ける。
「敵か!味方か!」
フードの男は白い肌に黒い目、短い黒い髪で中性的な顔をしていた。
年齢は20代前半くらいに見えた。
『逃げろ、絶対に勝てない』と予感が告げた。
こんなの初めてだった。
生きた心地がしない。
こちらの足元から頭までをゆっくりと見た後にまた笑みを浮かべ
「…敵だね」
と小声で呟くと同時に凄まじい速度で切りかかってきた。
俺にはほとんど見えやしなかったが魔物から得た経験は俺の意識とは別に反射的に機能しその攻撃を防ぐ。
一撃目、右からの攻撃は弾き返す流しきれなかった威力で俺も大きく仰け反る。
ニ撃目、左からの攻撃。
なんとか防ぐが剣がへし曲がった。
三撃目、右からの攻撃。
剣が俺の手からとんで行った。
四撃目、左からの攻撃。
俺は左腕で防ぐが鈍い音がして腕が変な方向に曲がった。
ここでようやく解ったが男は武器すら使っていなかった。
ただの手刀にこの様だ。
そして男が視界から消えたと思ったら後ろから膝を蹴られる、激痛が走り俺は膝を付く。
男が楽しそうにフフッと小さく笑い、俺の頭を掴んだ。
あぁ、終わった。
終わってしまった。
そう思い俺は目を瞑る。
………が、終わりの時は訪れなかった
「大丈夫、まだ殺さないよ、初心者にはチャンスをあげないと。ほら?じゃないと可哀想じゃないか」
男が笑いながら心底楽しそうにそう言った。