第6話
そうして1週間程魔物を殺したり逃げたりしながら迷宮を渡り歩く日が続いた。
なんとなくだが殺して得られる経験、身に付く力の傾向が見えて来たような気がする。
より人と近い形の魔物を殺す方が人とかけ離れた魔物を殺すよりも得られる物が多い、そして身体的な特徴、例えば尻尾が生えるとか、トゲトゲになるだとか肌が青くなるだとか、そういった種族的特徴はどうやら得られない。
俺はこの1週間でそれを学び、より人に近い形の魔物を狙い、勝てない、もしくは人とかけ離れた形状の生き物は避けるようになっていた。
「段々と攻略者らしくなってきたように感じるな」
そう呟いた俺は、村にいた頃の自分とは生まれ変わった自分の身体能力に誇らしさを感じながら何時ものように歩き出した。
あまり変に動き回るのは危険かもしれないと感じてこの1週間は何かの巣のような横穴を拠点に周辺の魔物を殺してきた。
だがこの1週間で石のナイフは(どこで作られたかは分からないが)歩く鎧から手に入れた鋼の剣に変わり、音送りを使わずに正面から挑んでもほとんどの攻撃を見切りながら隙を見て攻撃を行っても勝てると感じた魔物相手なら負けなくなっていた。
だから、慢心していたのだ。
昨日までは達人のような見切りに隠密、そして手慣れたかのような剣さばき、先まで聞こえて見える聴覚、視力、ゴブリンの頭だって握り潰せる腕力、敵との距離を素早く縮められる脚力、上手く扱えるようになった幾つかの魔術、それらで事足りたのだ。
でも、今日は違った。
何時ものように殺す対象を音送りと超聴覚で探して居ると1キロ程先にフードを被った人を見つけた。
俺の聴覚はあれからもトゲトゲの魔物を殺して強化 を繰り返し、集中すれば音で物の形をはっきりと判別出来るまでに至っていた。
村を出てから初めて迷宮で人と出会った。
確認の為にもう一度音送りを行って男を確認する。
こっちを向いて居なかった筈の男が振り返っていてこっちを向いていた。
そしてはっきりとその顔に笑みを浮かべていた。
全身から汗が吹き出した。
間違いなく、目があった。
相手も迷宮で生きている攻略者なら当然自分と同じ事が出来ても不思議ではない。
いや、出来ないと考える方が不自然だ。
俺と同じ方法かは分からないが間違いなくこちらを認識した。
こっちに向かって来るかもしれない。
もう一度、音送りを発動させ、男の位置を確認した。
「居ないぞ!!!不味い!!不味い!!不味い!!」
どうすれば良いんだ?
敵か?味方か?
どっちだ?あの笑みはどっちの笑みだ?
戦いになればまだ日の浅い俺が勝てる可能性なんて皆無な筈だ。
兎に角この場所を一刻も早く逃げなければ、そう思い震える足を張り手で叩き逃げ出そうとした俺に後ろから声が掛かった。
「こんにちは」