第4話
自分の感覚とは別の感覚が流れてハッとする。
ゴブリンの感覚だ。
ゴブリンはあの魔物を殺す力があったんだ。
なら見掛けほどあの魔物は強くないとそういう事か?
よし、なら正面から発火術式で…そう考えた瞬間頭の中で『死ぬ』と、警告のような予感がした。
そうだ、俺は弱いんだ、正面から挑もうなんて思い上がってていけない。
なら、背後からか?
『串刺しにされて死ぬ』
また予感がした。
背中から行くとトゲトゲの体に刺されて死ぬ?
そうか、そうだ、あいつは目が見えないか、もしくは視力が弱くて音で物を見ているんだ。
自分が知らなかった筈の知識がまるで最初から知っていたかのように涌き出てきた。
疑問に思ってはいたんだ。
あのときゴブリンはどうして足音と違う方向から俺を刺せたのか。
自然と始めから使えたかのように、その術式を思い浮かべた。
右手を前に向ける。
右手に魔力が集まり、見たこともない術式が頭に浮かぶ。
4秒程たって術式『音送り』が発動した。
体は自然に、慣れ親しんだ行動かのように走り出した。
俺の足元から鳴る筈の足音がトゲトゲの魔物から見て俺とは反対側から激しく鳴り響いた。
老婆のような掠れた呻き声を出しながら、魔物は6本ある足のうち、前2本を足音がする場所に向けて刺突した。
「…ア?アアァ?」
魔物は刺した感触のない前足を不思議に思ったのか首を90度傾けながら何度も何度も足音の場所を刺突した。
その隙に魔物の真横まで来た俺は魔物の頭へ逆手に持ったナイフを突き刺した。
すぐにナイフから手を離し、後退する為に地面を思いっきり蹴った。
すると4メートル程一気に後退した俺は身体能力にも影響があるのか、と新たな発見に内心ほくそ笑みながら再び魔物へ視線を戻した。
「ギョアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
耳をつんざくような悲鳴が鳴り響き、魔物の体にある刺 が辺り一体を串刺しにしようと伸び迫ってきた。
当然俺の方にも伸びて来るがかなりの速度で迫ってくる刺を特に難しいとも感じずに最小限の動きで回避した。
それが最後の力だったらしく、魔物が糸の切れた人形のように地へと伏し、絶命した。