第3話
俺は横になったまま犬土竜の巣穴の中で今後の行動方針について考えていた。
選択肢は3つだ。
1、『攻略者になる。』
常に死のリスクがあるが強くなれる。
社会と言う強みがほぼ無くなった人類にとって個人の強さは重要性が高い。
強さはそのまま生きていく力になる。
俺は死ぬのが恐ろしい、だが最終的に一番死から遠ざかれるのが攻略者に違いない。
それに…力があれば…。
…リスクはとてつもないが魅力はある選択肢だ。
2、『村、もしくは街を探す』
一見安全に見えるが実はリスクの高い選択肢である。
村や街で供給される資源は有限であって暮らせる人数が決まっているからだ。
その村、街にとって有益でなければ受け入れてくれないに違いない。
つまり俺では村に行っても入れてもらえない可能性が高いのでこの選択肢は実質的に存在しない。
3『何もかもを諦めて自殺する』
ないな、これはない。
俺は自分の人生に満足していないからだ。
俺は死ねのなら、満足して納得して死にたいのだ。
「うん、1と2どっちもってのが妥当だろうな。」
攻略者として実力を付けてそのうえで村や街に入れてもらい生きていく。
これが恐らくベストだ。
確か村守り人の親父の人生がこれだった筈だ。
あいつと同じ生き方か。
なんとも言えない不快感が胸に湧く。
だが仕方ない、仕方ないのだ…俺は死にたいないのだ。
何にしろ行動方針は固まった、攻略者として行動して経験を集めて強くなる事と、村や街を探す事だ。
死なない事を祈って頑張るとしよう。
…でも今日は疲れたから、明日から、明日から頑張ろう。
余談だが、恐らく(いや、間違いない)光り苔のせいでその日の糞が光り輝いていたのを見て光り苔は2度と食べないと誓った。
そして結局その後2日休んだ俺はいよいよ攻略者として活動を始めた。
攻略者とは『迷宮に挑み下層を目指すもの』を指す言葉である。
どのくらい昔か分からないがこの世界は成長した迷宮に覆い尽くされてしまった。
そしてその迷宮は現在も成長し続けていて、人類は迷宮の中でどんどん数を減らしながら生き残って来た。
これは大昔の、ダンジョンに覆い尽くされる前の世界のルールだが、迷宮を潰すには最下層へ到達して迷宮主を殺す事で解放されるそうだ。
この世界を覆い尽くしている迷宮も解放しようと今まで多くの人が攻略者として潜っているが今日まで解放されていないのだから誰も最下層へはだとりついていないのだ。
俺は最下層を目指す訳でもなく力を付けることが目的なのだから、正しくは攻略者ではないのかも知れないな…そんな事を思いながら歩いていると何かの存在を感じて視界を凝らした。
ずっと先の暗がりに刺だらけの体を持った真っ黒な6本足体に白い丸い顔のような物が付いたよく分からない魔物が居るのがわかった。
途端に足に力が入らなくなった。
一目見て危険だ!勝てない!と、そう思ったが同時に頭から違った認識が流れて来た。
『勝てる。』と