表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

act.7 右手


 ―隠者の森―


 リンネの師匠が起きてくるのを待ち始め、既に3時間が経った。時計の針は既に午後を指そうとするが、未だに起きてくる気配はない。

 居眠りをするオズを撫でながら、リンネも少しウトウトしていた。妙な喋り方や格好のせいで世間離れした印象がある彼女だが、ペットと共に昼寝をする姿は幼い少女のそれだった。

 「や、寝て・・・ないからな?」

 若干、呂律が回らない口調でそう言われた。

 「仕方ないだろ・・・お前ら人間と違って、俺やオズは夜行性なんだ。これぐらいの時間は辛いんだよ・・・」

 あくびを噛み殺しながらの言い訳を聞きながら、このままだと埓があかない事を悟った。彼女は師匠が起きてくるまでずっと待つつもりだが、俺にはそんな時間はない。

 「お、おい!?なんで師匠の部屋に入ろうとしてんだよ!?」

 急に元気になったな・・・お前の師匠とやらを起こしに行くに決まっているだろ?

 「冗談じゃないぜ!師匠は睡眠を邪魔されるのが一番嫌いなんだ、殺されに行くつもりか!?」

 慌てるリンネを背に、師匠の部屋と思われる扉を開ける。相当恐ろしいのか、リンネはこれ以上追ってこなかった。


 ―隠者の森―


 さっきまでいた部屋とは違い、リンネの師匠の部屋は酷く荒れていた。なかなか起きてこない事も含めて、リンネの師匠は非常に自堕落な人物なのだろう。それよりも・・・ 

 散乱する衣服や、こちらに背を向けて寝そべる人物の、癖が強くて長い黒髪、俺は少しだけ後悔した。話を聞いていなかったから知らなかったが、どうもリンネの師匠は女性らしかった。

 目が覚めたら見知らぬ男が目の前にいる・・・これはどう考えても問題になるだろう。変質者扱いを受ける覚悟で起こすかどうか、普段なら回れ右で帰るところだが、今は緊急事態なので対応に迷う。

 数十分の葛藤の末、俺はベッドから起きないリンネの師匠の体を、恐る恐る揺らしていた。それでも迷いと背徳感で何度か手が止まる。

 ユサユサ・・・

 「・・・」

 ユサユサ・・・

 「ん・・・」

 ・・・一体俺は何をしているのだろう?急に何もかもが馬鹿馬鹿しくなり、リンネの元に帰ろうと足を動かした。いや、動かそうとした。

 足は動かず、それどころかあらゆる感覚がなくなっていた。何事かと足元を見るとそこには信じがたい光景が広がっていた。

 リンネの師匠が横たわるベッドから無数の黒い手が伸び、俺の足を掴んでいる。全てが右手のそれらは、俺から体温や生気を吸い取っている。

 ついには立っていることすら困難になり、床に倒れた。倒れた俺にさらに多くの黒い右手が触れてくる。とうとう意識すらも怪しくなってきた。

 最後の力を振り絞り、リンネの師匠の方を見る。俺の意識が怪しい間に彼女の目は覚めたらしく、無表情で俺の方を見つめている。既に音すらも聞き取れなくなっていたが、口の動きで彼女が何を言っているのか判断できた。

 「死ね。」

 何の感情も込めずに彼女がそう言ったのを認知した瞬間、俺は完全に意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ