表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

act.5 狩人


―隠者の森―


 なんでこう、意識を奪ってから場所を移動させるんだ・・・

 『あんたに、手口を知られないためよ。』

 誘拐犯かよ。声の主であるグリードを探すが、見当たらない。場所はさっきまでいた異様な空間ではなく、鬱蒼とした森だった。

 『ここは隠者の森、あんたのいた世界では青木ヶ原樹海って呼ばれている場所ね。私がいる場所からはかなり離れているから脳に直接語り掛けているわ。』

 だから変な風に声が届くのか・・・いや、それよりも!

 なんて場所に俺を飛ばしてくれたんだ?このまま遭難して餓死しろとでも!?

 『仕方ないじゃない、この世界の主人公はこの近くに住んでるんだから。わざわざ探す手間を省いてやってるのにその態度は何なの?』

 こんな場所に人が住んでいるのか?いや、よく考えたらそもそも・・・

 グリードの言う主人公って人間なのか?魔術の存在する世界で特別な存在だというなら、人間でない可能性は十分にある。

 『あら、勘が良いわね。この隠者の森は、人間が決して立ち入らない危険地帯なの。魑魅魍魎の類がうじゃうじゃいるから、さっさと主人公と合流しないと死ぬわよ?』

 合流しても、その主人公に喰われる可能性はないよな?

 『・・・どうかしらね。』

 おいおい・・・

 その時、獣の唸り声が聞こえてきた。どうやら迷っている時間はないようだ。歩みを進めようとする俺にグリードが語りかけてきた。

 『あまり私が干渉するのもあれだけど、最低限のアドバイスは今みたいにするわ。それじゃ、おやすみ・・・』

 

―隠者の森―


 道なりにまっすぐ歩いていくと、一軒の家が見えてきた。それだけでも驚いたが、家の前に建てられた看板の内容はさらに驚愕の物だった。

 【豪徳寺探偵事務所 面倒な依頼はお断り】

 こんな場所に探偵事務所って、絶対に客が来ないだろ。もし来てもこの看板の文面で帰ってしまうだろ・・・

 一体、この家の主人は真面目に商売をする気があるのだろうか?

 ものすごい脱力感を感じながら扉を開ける。蝶番が錆びていないところを見ると、管理はきちんとされているようだ。インターホンやベルがないため勝手に扉を開けたが、大丈夫だろうか・・・?

 恐る恐る家の中を観察する。こんな辺鄙な場所にあることが嘘のように内装は普通だった。電気が通っていないはずだが、何故か電球が点灯している。これも魔術の一つなのだろうか?

 その時、小さな白い影が部屋の死角から現れた。あれは犬・・・いや、どちらかといえば狼か?

 「グルルルル・・・」

 物凄く威嚇されている!これは刺激しないように逃げないといけない。狼から目を離さないようにゆっくり後ろに下がろうとする。しかしここで、ある考えが頭をよぎった。

 このままこいつを放置して逃げたら、この家の住人が危険なんじゃないか?それに、この世界の主人公に危険が及んだら、俺の帰還にも関わってくる。

 そういえば、獣は火が苦手と聞いたことがある。俺ならこいつを、倒すまではいかなくても追い払うことならできるんじゃないか!?

 あの空間でやったように意識を集中すると、手元に火球を作り出すことができた。後はこれを投げ・・・!

 「させるかよ、この不審者が。」

 火球を放とうとする瞬間、微かな空気の揺らめきと共にそんな声が聞こえた。可愛らしい少女の、しかし純粋な敵意と殺意の籠った声と共に、突風が部屋を駆ける。


【風の力は強き意思を持つ者に開かれる。意志が強いが、頑固者が多い】


 何が起こったのか、ほとんどわからないまま、俺はまた意識を奪われた。認識できたのは、深緑の様な衣と紅い色をした狩人の瞳だけだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ