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act.2 差異

 

―神域―


 たどり着いたのは本棚の並ぶ空間だった。歴史書から学術書、元居た世界にも本屋に行けば売っていそうなものばかりだ。そのラインナップを見ているとあの声が聞こえてきた。

 「私の頼みごとを聞いて貰う上で、この世界の事情ってやつを理解してもらう必要があるわ。いくつか本をパクっ・・・借りてきたから読んで勉強してくれるかしら?」

 そんなことしないで、さっさと用事を済ませて俺を元の世界に帰してくれ。

 「・・・この世界ではあんたは異物、もしそれが他の奴にバレたらどうなるかしらね?」

 他の奴ら?この世界にはお前以外の存在がいるのか?

 「もちろんよ。あんたが生きていた世界と基本的には変わらないわ。ここは世界の端っこなのよ、私以外の奴は基本的に進入禁止よ。」

 現実とほとんど変わらない・・・例えば現実でいきなり「私は異世界から来ました」なんて言ったらどうなるだろうか?

 ・・・ほぼ間違いなく病院送りだろうな、頭の。

 手近にあった歴史書に手を伸ばす。内容は鎌倉時代、声の主が言う通り、どれも見覚えのある歴史ばかりだ。ふとその時、あるページに目が留まる。

 そこには亜木々 オウマという男が偉人として描かれていた。数千の鬼を一太刀で葬った・・・?この時代に書かれた小説の登場人物だろうか?

 「いいえ、史実よ。ただし、この世界だけに起きたね。」

 どうやら全てが現実通りではなく、この世界特有の歴史もあるようだ。それにしても内容がファンタジックすぎる、この世界ではそういうのがアリなのか?とにかくもっとよく調べないと現実に帰る前に死んでしまう。

 「いやに熱心ね、あんたは本が好きなのかしら?」

 そんな声が聞こえた気がしたが、意に介さずページを進めた。



 「信じられない、全部読んだの?」

 ・・・死にたくないからな。

 とりあえず分かったことは、物理法則が現実と全く同じだが、魔術の概念があるということだ。オカルトはあまり詳しくないし、現実のオカルト(妙な日本語だ)がこの世界で通用するかもわからない。魔術に関しての記述がある本は、拝借してもう一度熟読しておく必要がある。

 そしてもう一つ、この世界は数十年前に傘音 コトバという存在によって滅亡しかけたということだ。 それまで存在していたあらゆる国がその存在によって滅び、いよいよ破滅かと思われた時、亜木々一族(ここにあるいくつかの歴史書に出てくる名前だ)の現頭領と6人の英雄が傘音 コトバを退けたらしい。その後、彼らの活躍によって世界は以前よりもより良い状態で修復されたという。

 「そんなに詳しく読まなくても大丈夫よ。魔術とかが使えることと、亜木々一族と6人の英雄っていうのが幅を利かせているっていうのが理解できれば十分、基本的に妙な疑いはされないはずよ。」

 酷く適当な要約だった。今まで散々な扱いをこの声の主からされてきたが、口頭説明ではなくて資料を用意してくれたことには感謝しないといけない。こいつに全部説明されていたとしたら、重要なことが何もわからなかっただろう。

 「それにしても、すごい集中力よね。声をかけたり、鉄の箱を目の前に置いても気が付かないんだから。」

 鉄の箱?確かに目の前には、この部屋に来た時にはなかった銀色の箱が置かれている。

 「あんたに必要な物を用意したわ。知り合いのお古だけど、十分に使えるはずよ。とりあえず中に入っている物を装備して、さっきの部屋に戻ってきて。」

 俺に必要な物、その正体はわからない。路銀や食料だろうか?もしかすると、この世界での戸籍かもしれない。

 恐る恐る箱を開けると・・・中には鈍い輝きを放つ日本刀が収められていた!

 

 

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