俺は異世界に来ました
ギャース、そんな声が空から聞こえる。その横ではズシンズシンと大きな音が響く。見えるは木。一目見れば理解できる。ここは──
「森………か……」
***
「ここどこ……?」
わからない。わかるのは声が聞こえた。それだけだ。それだけだけど…
「これはたぶん
あれだな。うんあれだ。あれしかない。」
空を飛ぶ龍。見たことのない植物。聞こてくるはまるで聞いたことのない鳴き声。ここはどう見ても、異世界だ。
「……ふ」
「ふふふ……ふふふふ……ははは……はーっははは!」
笑い声が響く。
「ふう……」
その事実を口にした。
「俺異世界に来ちまったよ」
***
まずは状況を確認する。場所は森であってるだろう。そして。
「それ以外はまったくわからねぇ……」
秋彦にあるのは着慣れた私服に無難なスニーカー。携帯に充電器。黒色炭酸ジュース。そして、母親ゆずりの銀髪に、父親ゆずりの目つきの悪さ。
「携帯は電波届かねぇな。」
当たり前か。ここは異世界だ。なにがあるかわからない。
「とりあえず移動するか。こうときは大抵近くに村とかがあるはずだ。」
よっと立ち上がる。
「ん?」
なんだか周りが暗くなった。確かにここは森でさっきから少し薄暗かったがここまでなかった。よく見るとそれは人形の影が自分に覆いかぶさったようになっていた。こういう異世界で、人の形で、ここまででかいとなると。
「まあ、異世界だもんなー……」
そっと後ろを向く。そこには大木のような体をした人。薄暗くなったのはこいつが後ろに立って影を作ったから。しかしそいつは普通のひとではなく、その体は──全身みどり色だった。
「ゴブリンも……そりゃいるよなー……」