60話 襲撃
「あ~喉乾いたな、水ない?」
アルバがそう言うと即座にグラスに入った水が現れる。
「小腹空かない?そうでもない?」
「そこまで食糧に余裕は無い。王都と同じ感覚で居ないでくれ」
「ちぇっ、はーい。わかりましたー」
拗ねたように流れる外の景色を眺めはじめるアルバ。
俺達は目的地に向かう為、馬車に乗り込み移動をはじめた。4人ずつ乗り込み4つの馬車で行動している訳だが、よりによって俺はアルバと同じ馬車になった。
アルバの我儘には隣に座る隊員が対応している。灰色を基調とした隊服は暴風の幻狼だったか。俺よりも年下のガキの我儘に嫌な顔せず対処している、俺には無理だろう。
「ちなみに、アルバは何歳になるんだ?」
「12歳だよ。色々あってこの歳でもモーリス様のお陰で聖騎士として居られるんだ。君は・・・ゲイルだったよね?それが何か関係あるの?」
こいつは・・・いちいち俺の癇に障るガキだな。
「一言だけ言わせてもらうともう少し年上には敬意を表すべきだ。まずは敬語」
「なんで?」
不思議そうな顔でこちらを向くアルバ、本当に疑問に思っているんだろう。こいつの親の顔が見てみたいぞ。
怒りで気付かぬ内に左手が拳をつくっていた。
「まぁまぁ、ゲイル君抑えて。ここで仲間割れしてる場合じゃないし、俺達の任務はアルバの護衛と魔族への奇襲だ。それだけ考えてればいいんだ。という事でアルバ君、大舟に乗ったつもりで安心してくれ」
「あっ、うん。よろしくねー」
顔は外を向いたまま気の無い返事をする。
隣を見るが俺のように怒るでもなく、本当に気にしていないのだろう、余裕のある大人だ。このおっちゃんはきっといい人だな。
茶色を基調とした隊服は大地の巨人だな。ガタイもいいしこの人に守られるなら安心出来るかもな。
しばらく後
「もう着くね。さてお仕事だ」
目的地に到着するとアルバの雰囲気が変わる。任務は真面目にするんだな。
俺としてはこの後が注目なんだ。どんな魔法を使ってるのか、それを見逃すのは勿体ないからな。
「さあ、ここから先の森が魔王の領域だね。じゃあちょっと待ってね」
そう言って詠唱をはじめるとアルバから強い魔力を感じる。確かに大量の魔力が必要の様だ。
「光の粒子よ、我の眼となりたまえ。聖なる使者」
すると周囲に無数の光の珠が現れる、次第に形を変え鳥の様な形で森に四散して行った。
「よし、後は待つだけさ」
その間無防備なアルバを守るために俺達は円となり囲んだ状態の布陣で待機する。
すると数分でアルバが大声で慌て始めた。
「ヤバイ、何かがこっちに物凄いスピードで向かってくる。こんなの人間じゃない」
周りの空気が張り詰め皆が周囲の警戒にはいる。物音1つ立てず聞こえてくるのは葉が擦れる音のみだ。
「かなり近いよ、皆気を付けて」
ボトッ
俺の背後から音が聞こえ振り返る。酷く怯えるアルバとその前には生首が1つ転がっていて、その頭がついていたであろう身体は側で直立していた。
あの顔は、俺と同じ馬車に居たおっちゃんだ。
「うわぁぁぁ」
取り乱すアルバを見るからに戦場は初めてなんだろう。こんなのトラウマになるに決まってる。怯える様を見てると少し可哀想になってくる。
「おいおい、ガキが何人か混じってんな。人間はそんなに兵隊に困ってんのか?まぁ何人かは楽しめそうだから良しとするか」
声がした木の方を見ると刀を手にした鬼人が木に寄りかかっていた。
「ここまで来たのは褒めてやるが、お前らの命はここまでだ。そいつの様に首を置いてってもらうぞ」




