50話 不穏
「今日も雲一つ無い良い天気だな、このままひと眠りしたいぐらいだ」
「そんなの駄目に決まってるじゃない、任務中よ」
「分かってるよ、言ってみただけさ」
俺とジュリアは南側の城壁の上に居た。王都に近づく魔物達を警備、撃退するのが任務だ。
「とはいえ毎日毎日同じ事だと面白くないよね。魔物なんてほとんど来ないしさ」
「そうだけど・・・っと、そんな事言ってたらお仕事よ」
「おっ、今日はもう3回目だよ。どうしたんだ」
魔物の位置は既に捕捉している。
俺達は任務に着く時に腕輪を渡されている。これは王都をドーム状に覆う魔法と感覚をリンクさせ、攻撃を受けた場所や侵入した者の位置が手に取る様に分かる。
「いつも通りゲイルがやっちゃってよ」
「任せて」
ウルフが4体ほど1km先に見えた。まずは進行方向に水球を発現させ弾けさせる、と地面は瞬く間に泥と化した。
ウルフ達は一直線に泥の中へ突っ込んだ。足を取られて2体転倒、残りは辛うじて進んでいる。が
「ご苦労さん、《零度の息吹》」
地面諸共4匹のウルフは凍りつく。
「何か今日は多いね」
「そうね、でもここ1ヶ月で増えてきてるって報告があるみたいよ」
「まぁこれぐらいなら何の問題も無いんだけどね」
しかし数週間後、徐々に聖騎士達で負傷する者が出始めた。魔物達は学習する様に1度やられた攻撃は効かなくなっていき、聖騎士達を僅かに上回る力で攻めてくる。
聖騎士を10とするなら11の力で攻めてくる。それでも六聖騎士達には敵わず撃退されていく。だがこのままではいずれ六聖騎士でも苦戦する魔物が出てくる予感すらした。
俺にはそんな魔物達の背後にヘイトリウスの影があるような気がしてならない。これが全て何かの布石に感じられる。
「このままじゃ後手に回ってしまう、どうにかしないと」
「でも・・・どうしたら。相手の居場所も狙いも分からないのよ」
「狙いはきっと俺達の戦力を測ってるんだ。今もきっと何処かで観てる筈さ」
そして見切った瞬間、奴らは一斉に牙を向く事だろう。そうなる前にどうにかしたいが・・・
「勝手に持ち場を離れる訳には行かないし、とりあえずは耐えるしかないかもね。王都内に居れば対処もしやすいだろうし」
他の部隊も余剰戦力は無い様でとても攻めに転ずる事は出来ないだろう。
「そうね。いつか攻めてくるって心構えが出来てるだけで初動は違ってくるものよ」
2ヶ月後
大きな動きこそ無いもののやはり被害は大きくなりだし、聖騎士では歯が立たない魔物が大半になってきた。
ヘイトリウスの一手が首元に近付いている不気味な感覚を覚えながらも、ただただ耐えるしか無かった。




