47話 謎ずくめ
反応があった地点に近づくと小さな木製の小屋が見えてきた。
「あの中か?」
慎重に扉を開け、中の様子を伺う。1つ椅子が置いてあるが、人の姿は無い。
「誰も居ない?そんな筈は・・・」
辺りを見回すが気配すら感じない。
「やぁ、初めましてだね。ゲイル・オルコット君」
背後から聞こえ咄嗟に振り返る。扉の前には金色の長髪に細身で一瞬女に見間違える程の美男子が居た。
「いつからそこに居た?」
「僕はずっと居たよ。君が入ってきてからね」
笑顔で男は答える。警戒はしていた筈なのに気配を感じないどころか背後まで取られるとは。相対して奴の実力は分かるが、不意打ちをされていたらと思うと背筋が凍る。
「何で俺の名前を知ってる?あんたは誰だ」
「少し調べさせて貰ったからね。君は邪魔になる気がしたからね、あの鬼人族を使って倒しておこうかと思ったが」
奴の身体からは黒い魔力が発せられ、一部はトレスカの方角へと向かっている。
「その黒い魔力、やっぱり操つってるのはあんたか」
「やはり厄介だね。魔力を可視化まで出来るとは」
「あんたの事は後で聞く。とにかくトレスカを解放して貰おうか」
「素直に解放すると思うかい?」
する訳が無い事は分かっている。そうなれば実力行使だ。
今も魔力が発せられている所を見ると操るには常に魔力の供給が必要なのだろう。なら魔力の元を断つか阻害するしかない。
「ならこうするだけさ」
飛び蹴りを男へ向かって放つ、が難なく躱され壁にぶつかる。
「危ない、危ない。いきなりだな、戦闘はあまり得意じゃないんだが」
いつの間にか男は部屋の中心に移動していた。壁を蹴り勢いをそのままに男の懐へ入り込み左右から拳が襲いかかる。が全てがいなされ、距離を取られる。
「ゲイル君はやっぱり強い。直接見て再確認出来たよ。やはり君は邪魔になる」
「さっきから邪魔になるって何の話だ?あんた何を企んでるんだ」
「まぁそのうち分かるよ。このまま戦っても無事では済まないだろうから今回は引かせてもらうよ」
男の体が黒い煙となり小屋の窓から飛びだして行った。
「あの男は何だったんだ結局」
何故俺を知ってるのか、何を企んでるのか、何者なのか、全て謎のままだ。
「とにかく周囲から反応は消えたな。トレスカの様子も気になるし戻るか」
レオナード達の居る洞窟まで戻ると激しい音は聞こえなかった。
「暴走は止まったか」
中に入るとトレスカとジュリアは眠っていた。
「あっゲイル君、戻ったんだね。突然トレスカが糸が切れた様に倒れたから、そっちで何かあったんでしょ?」
レオナードに起きた事を説明した。
「レオナードさんは心当たりありますか?」
「ちょっとそれだけじゃ何とも言えないね。ごめん、分からないや」
暫く話しているとトレスカ達が目覚めてきた。
「この有様は何だ?誰がやった」
「何かあったの?」
何も分かっていない2人に説明をする、その前に
「トレスカさん、少し首の後ろを見させて下さい」
操られている時に魔力を感じた部分を調べると、刺の様な物が刺さっていた。
「これが原因ですね。ちょっと失礼」
「痛っ」
少し深く入っていたが簡単に抜けた。
「これに魔力を込められるとトレスカさんの身体を操る事が出来たんだと思います」
「いつの間に。という事はレオナードが言っていた事は本当にワシがやったのか・・・」
項垂れるトレスカ。
「あまり気に病まないで、操られていたんですから悪いのは謎の男ですよ」
「しかし村が破壊された事実は変わりないだろう?どうして償えばいいか・・・」
「その気持ちがあれば大丈夫ですよ」
「レオナード、ゲイル」
少し落ち込んでいたが直ぐにトレスカは元気を取り戻し、解決を祝った酒盛りが再び行われる事となった。




