46話 操者
激しい音のした洞窟の中へレオナードと共に駆ける。頭痛によりいつも通りに動けない為、レオナードが数歩先を行く形になっていた。
「お頭やめてくれ」
「どうしちまったんだ、最近のお頭は」
「あぁなったお頭を誰が止められる?」
さっきまで眠っていた鬼人族が狼狽えていた。その視線の先にはトレスカが居たが様子がどうもおかしい。
「あれはトレスカですか?明らかに身体が1回りぐらい大きくなってるんですけど」
「間違いないよ。鬼人族は戦闘モードみたいなものがあって、あぁやって身体が1回り大きくなると同時に腕力や敏捷性も大きく上がるんだ」
大きくなるのに素早くなるのか?厄介すぎるだろ。
「トレスカさん、やめてください。どうしたんですか」
壁を殴ったり、岩を投げつけ洞窟を破壊しようとするかの様なトレスカを落ち着かせようと声を掛ける。
「ウガッ」
声に反応しこちらを見て動きを止めた、がそれも束の間岩を投げつけ攻撃してきた。
レオナードが素早く岩と俺の間に入り受け流してくれた。
「ゲイル君駄目だ。きっと操られているんだ。もはや会話も出来ない」
「ありがとうございます。でもそうなるとどうしましょう」
「トレスカは僕に任せてくれ。ゲイル君は操っている奴を探れないか?」
「わかりました、やってみましょう」
眼に魔力を集中させトレスカの異変を探る。身体の周囲に強力な魔力を漂わせ傷付けるのもひと苦労そうだ。見た所変わった所は無さそうだ。
「何かある筈だ。よく見ろ、少しでも魔力の違いを見つければ・・・あった」
トレスカの首筋から異なる魔力が見えた。相当感知しづらく集中して見ていても見逃す程だった。つまり相手は相当な実力者なのが分かる。
「ありました。魔力を辿って探ってきます。ジュリアはレオナードさんのサポートを、ってそういえばジュリアは?」
いつも側に居た為居るものと思っていたがジュリアの姿が見当たらない。
そういえばトレスカと一緒になって寝てたはず。
「トレスカの左手を見てご覧。きっとジュリアちゃんだよ」
トレスカの左手は何かを握りしめ離さない。良く見るとジュリアが捕まっているのが見えた。まだ眠っているのか意識はないようだ。
「大丈夫、安心して任せなよ。ジュリアちゃんを傷付けず、この洞窟も壊されない様に上手く相手をしておくから」
今のレオナードの背中は大きく、頼りがいのあるように見えた。
「わかりました、では此処はお願いします」
洞窟を飛びだして直ぐに感知魔法でさっきの魔力の出処を探す。
1キロ程の距離に反応があった。
二日酔いでいつも通りに動けない事に少しの不安は感じながらその場所へ向かう。




