45話 二日酔い
ふと目が覚めて周りを見渡すとトレスカやジュリア、他の鬼人族も皆が眠っていた。俺が眠っている間に終わったようだ。
「レオナードは・・・居ないな」
探そうと身体を起こすが激しい頭痛が襲う。完全なる二日酔いだ。
「うっ」
胃の内容物が出そうになるが堪えた。
水魔法で生成した水を近くにあった器に入れ飲み干すと、幾分ましになった。
「ちょっと外の空気がすいたいな」
外に進むと朝日が差し込み、視界が真っ白になる。眼が慣れて辺りを見渡すと目当ての男がそこにいた。
「おはよう。大丈夫・・・じゃ無さそうだね」
「ご覧の通りです。レオナードさんは平気そうですね」
レオナードは俺の様に顔色は悪く無い、いつも通りの様だ。
「お酒強いんですか?」
「いやいや、そんなに強くは無いよ。ただトレスカの目を盗んで空の器と入れ替えてたんだよ」
「だからあまり飲んでないと?」
「そう。限界以上は飲んでないんだ。後はタイミングを見て酔い潰れた振りをして眠るのさ」
イタズラ好きな子供がよくする意地悪な笑みを浮かべるレオナード。
その顔に少しゾッとした。何を考えているか全く読めない。
「でも丁度良かったです。レオナードさんと話がしたかったので」
「助けを求めた理由だね。まだ説明出来てなかったからね」
「まず、依頼にあった魔族の被害というのはトレスカの事で間違いないんだ」
「どういった被害が?」
「トレスカが暴れ回って近隣の村が2つ壊滅してるんだ。奇跡的に死人は出てないけどね」
確かにあの身体で暴れたならばそうなるだろう。
「ならその相手とどうして盃を交わしてたんですか?」
「僕もああなるとは思わなかったよ。戦闘を覚悟してたからね。ところが真相を問いただしても、記憶に無い、の一点張りなんだ」
「それからトレスカは俺の勘違いだろうと言い出して有耶無耶にして、人間と会うのは久しぶりだ酒を持ってこい、なんて言い出したのさ」
討伐が主目的ではないんだ、全てを明らかにしない事には交戦はしない。
「ちなみに本当にトレスカで間違いは無いんですか?」
レオナードを疑うのは失礼かもしれないが可能性は0では無い。
「それは間違いないよ。2つ目の村を襲っている所を実際に見たから。僕が着いた時には遅かったけどね」
「それなのに記憶に無いと言い張るのは気になりますね」
「そうなんだよ。僕もそこは気になってね、調べたんだ。すると何者かの影がトレスカの後ろに居る気がするんだよ」
「つまり?」
「その事を隠しているか、もしくは知らない内に操られているかのどちらかなんだと思う」
「それでレオナードさんはどっちだと思います?」
「僕は操られている方だと思う」
「どうしてですか?」
「助けを求めるまでに分かったんだがトレスカは嘘がつけないと思う。ついたとしてもすぐ分かるぐらい下手くそだよ」
「つまり、トレスカは嘘をついてないから本当に暴れ回った記憶が無い。だから操られている可能性が高い、と言うことですね」
「その通りだよ、それでもしかしたらその裏にいる奴も相手にする可能性も考えて頼んだって訳さ」
なるほど、把握は出来た。
「それなら事前にそう言ってくださいよ」
「魔導具の水晶を取られて余興に使われちゃって、壊れちゃったんだ。はぁ、あれ高いんだよな。弁償かな?」
情けない顔でこっちを見てくる。今の所この人全く頼りないが大丈夫か?本当に強いのか、不安になってきたな。
「これからどうしましょうか。落ち着いてもう1度トレスカと話をしてみますか?」
「うーん、そうだね。同じ事かも知れないがもう1度話してみよう」
不意に地面が揺れる。と同時に背後から凄まじい衝撃音と岩の崩れる音がした。
「な、なんだい今の音は」
「分かりませんが急ぎましょう」




