41話 和解
「何しに来やがった。邪魔すん・・」
再び無言の平手打ちで言葉を遮られる。
「いい加減にしなさい。いつまで子供みたいな事をしてるの」
突然怒鳴り声を上げたリリィにダリルは完全に萎縮している。まさに悪戯をして怒られている子供の様だ。
「城を飛び出した時は私の甘さのせいで止められなかった、けどあなたなりの考えでヴァンパイアの事を守ろうとしてるのも理解してたわ。けどそろそろ現実を見なさい」
「現にゲイル君に対してあなたはこの様よ。あなた風に言うなら人間如きにヴァンパイアが、ね」
現にボロボロになっているダリルは何も言えない。
「とは言えあなたの気持ちも分かるのよ。親が親なら子も子なのよね。30年前の私と全く同じだから」
「リリィさん、30年前ってもしや・・」
「えぇ、30年前に滅ぼされたヴァンパイアを率いたのは私だったの。あの時の私も人間を見下してたわ。ヴァンパイアロードが止めるのも聞かずに、追い返してやるって息巻いて戦ったの」
「でも結果は話した通りよね。目の前で仲間が尽く薄青色の炎に包まれ消えていったわ。あの時程自分が無力だと感じた時は無かったわ」
此処に来てたのは炎聖か、30年前って事はアルフレッドの前任者か。どちらにしても炎聖は血の気が多いらしい。
「その時に本能で理解し、怯えたの。人間が我々と同等、それ以上の力を持つと。前ヴァンパイアロードのお陰で丸く収まって私は心を入れ替えたの」
「それからは仲間が目の前で消えて行くあんな思い、誰にもさせないって自らに誓ったわ。その中には勿論あなたも入ってるのよ、ダリル」
リリィは自らの右手首を切りダリルの右手首の傷の上へかざす。リリィの血液がダリルの傷へ触れた途端傷がみるみる癒え、ダリルの魔力も感じられる様になった。
「リリィさん、今のは?」
「ヴァンパイアの力の源はご存知の通り血液よ。それを使って戦えばより大きな力を得られる、しかし今のダリルの様になる事もあるわ」
「血液を補充すれば回復はするけど、最も効果が高いのがヴァンパイア同士の血液を取り込む事なの」
それで一瞬で傷や魔力が回復したのか。
「でも本当に最終手段なの、自分の身も危険に晒す事になるわけだから。それに細胞を分け与えるも同義だから私達の中では特別な意味を持つの」
「なんとしても守りたい者にしか行わないわ」
リリィがダリルを抱きしめる。
「さて、ダリルよ。リリィさんがここまでしてくれてんだそろそろ大人になれよ」
「うるせぇ、分かってるよ。俺もそこまで馬鹿じゃねえ。・・・俺の負けだ。人間を襲うの止めるし城にも帰るよ」
ダリルが部屋の扉を開け外に出る。すると砦中に響き渡る声で
「我、ダリルは人間、ゲイルに敗れた。これより我らはヴァンパイアロード・リリィの元へ戻り人間と共存の道を歩む事とする。異論は認めん」
ちょっと強引な気もするがこれで元通りになるか?
気付けばリリィが隣に立っていた。
「ゲイル君、ありがとう、あなたのおかげよ。それに来てくれたのがあなた達で良かったわ」
確かに、他の部隊、ましてや地獄の番犬だったら問答無用で滅ぼされてたかもな。
「仲直りと言っていいか、とにかく良かったです」
リリィと話していると、後ろからダリルが
「おい、ゲイルって言ったな。何か困ったら俺に言いやがれ。助けてやらん事も無い」
「ダリル、口のきき方に気をつけなさい」
「いいんですよ、素直に言えないんでしょう」
「おう、心強い仲間が出来たと思って頼らせてもらうぞ」
照れくさそうにダリルは立ち去っていく。
こうして今日の敵は今日の友となったわけだ。




