40話 圧倒
ダリルの眼の色が変わり瞳孔が開く、さながら獲物を前にした獣だ。更に爪が伸び、鋭利な凶器へ早変わり。街の人々を殺ったのはあれだな。
脚に魔力が集中するのを感じる。移動する前にこっちも準備しないとな。
纏気に魔力を込めて60%まで出力を上げようと少し気をそらした隙に一瞬で背後に移動していた。
ビュンッ、ヒュンッ
「うわっと、危ねぇ」
首や心臓の急所目掛けて躊躇いもなく攻撃してきやがった、まぁ避けたけどさ。
「今のでは殺れん事は分かっている。しかしいつまで続くかな?」
更に俺に向かって前進しながら爪を使って切りつけや突きを放ってくる。しかし全て予備動作で何処に来るか分かってしまうんだよ、ワイズには。
それが瞬時に知らされれば、後は避けたり手でいなしていればいいだけだ。
「そろそろ俺も手を出させてもらうぞ」
ダリルの突きの軌道情報が入って来る、と同時に後ろ足に力を込める。右斜めに踏み込み右フックがカウンターでボディに入る。俺の左脇腹のローブは裂けていたがダメージは無い。
片膝をつき少量の血を吐き出すダリル。
「どうした、もう終わりか?こんなもんか?」
ブツブツ呟くダリルを煽る。すると突然立ち上がり自分の右手首を切りつけ出血させる。
「我に仇なす奴を切り刻め。黒血刀」
流れ出ていた血液が次第に刀の様に形作られダリルの手へ収まる。
「お前、終わったな。これで切られる未来しかない」
刀を構えながら突撃してくる。さっきとは段違いの速度で。
腰に携えた剣に手を伸ばす
「間に合うか?」
既にダリルは目の前で刀を頭上から振り下ろさんとしていた。
ガキッ
居合の要領で振り下ろされる刀を弾く、黒血刀の刀身は半分が無くなっていた。が俺の剣にも刃こぼれが見られた。
「中々の切れ味だな。魔装で更に強化させてもらおう」
瞬時に纏気を氷魔装に切り替える。剣が氷で覆われ耐久力、切れ味共に大幅アップだ。
「これで終わりと思うなよ?」
右手首から更に血が流れ、無くなった刀身の部分へ集結し、再び長い刀身が現れた。
「なるほど、そういう仕組みか。だかそれだと長引いた場合お前の命が危ないんじゃないか?」
「それまでに終わらせる」
ひたすら斬りつけてくるダリル、延々と金属の衝突音しかしない。魔装に切り替えた途端傷付ける事すら出来なくなった。時折黒血刀は耐え切れなくなるがその度、血で補う。
「おい、そろそろ限界だろう。もう止めよう」
血を使い過ぎたダリルは最早立っているのが精一杯に見えた。
「ふざけるな、俺が人間に敗れるなどあってはならん」
言う事は威勢がいいが身体がついてこない。俺は剣を鞘に戻す。
「貴様、剣を戻すとは馬鹿にするな」
「いい加減認めろ、お前は弱い」
最後に黒血刀を叩き折る。
「お前より強い人間は山ほど居るんだよ。俺以上の奴も居るはずだ。そんな中で共存の道を歩もうとしてるのがリリィだろう。それを邪魔するのだけは許さねぇ」
「くそ、くそ、くそ、もっと血だ。血を注ぎ込めば強くなる」
更に黒血刀へ血を使おうとするダリル。
「馬鹿、お前それ以上は本当に死ぬぞ」
「人間に敗れる位なら戦って死ぬ方がマシだ」
右手首から血が流れ出すその瞬間
パチンッ
乾いた破裂音が響いた。
俺とダリルの目の前にはいつの間にか、金髪のツインテール、ゴスロリの様な衣装を着た少女、リリィが現れた。




