26話 フロレスト
盗賊達を縛り上げ、こちらの様子を伺っている騎士の元へと向かう。
「大丈夫ですか?」
「何処のどなたか存じませんが助かりました、ありがとうございます」
騎士が頭を下げる、後ろからは騎士に隠れた少女がこちらをチラチラと覗いている。
「助けていただいて申し訳ないですが我々急ぎますので」
騎士は馬車に向かいそそくさと立ち去ろうとしていた。しかし横転した馬車の車輪は完全に壊れてとても走れる様には見えない。
「何処へ向かうんですか?馬車はどう見ても走れなそうですが」
「フロレストに行くなら私達これから行く所だから乗っていけばいいじゃない」
ジュリアの提案に対して騎士は
「いえ、我々フロレストから来まして、理由は言えませんが戻るわけにはいかないんです」
恐らくだがさっき狙われていたのは少女だろう。貴族の娘か何かなのだろう、だとすれば何とか腑に落ちる。
この騎士はかなり強い、さっきから会話中でも隙がない。俺とジュリアでもいい勝負になる筈だ、2人なら負けないが。そんな強さの騎士を護衛にしている奴なんて今までは見たことない。
ましてやフロレストから来たという事は王都に住む貴族の娘という可能性も上がる。ただ上流貴族だとしたら護衛が1人ってのは少なすぎるが。
追われる理由や逃げなければいけない理由はさっぱり分からないが見過ごす事は出来ないよな。
「なら一緒にフロレストの近くまでは乗りませんか?歩いて行ける距離まで近づけば、俺達は歩いてフロレストまで行きます。その後馬車は使って貰って構わないですから」
「しかし、そこまでして頂くわけには・・・」
何故か騎士は渋っている、俺達が警戒されてるのか?
「あなた達に関しては何も知らないですし聞きません。ただ馬車が使えないこの状況で、その子を連れては何処にも行けないでしょう」
「確かにそうですね・・・申し訳ないですがお言葉に甘えさせて頂きます」
「私はジュリアでこっちはゲイルよ。さぁ早く乗って」
少女と騎士を乗せてフロレストへ向けて出発した。向かい合わせで座っていたが会話は俺とジュリアのみだ。少女は出会ってから話もしなければ笑わない、こちらをチラチラ見るぐらいだ。
見た感じ俺より少し年下だろう、7、8歳と言った所か。
フロレストまで5km程の位置まで来た。
「ここら辺で止めようか、あまり近づきすぎると危険だろうから」
俺とジュリアの荷物を持ち馬車を降りる。
「じゃあ後はこの馬車は好きに使ってください。無事を祈ってますから」
「ゲイルさん、ジュリアさんありがとう、助かりました。もしまたいつか会える時には必ずこの恩返させて貰います」
最後にジュリアが少女へ手を振り、少女はお辞儀をし馬車は再びヴェルンドの方向へと走っていった。
「結局何だったのかしらね」
「名前も何も分からなかったけど悪い人達じゃなさそうだし、人助けすると気分はいいね」
「そうね。さて早くフロレストへ向かいましょう」
30分程でフロレストが見えてくる。ヴェルンドと同じ様に周囲は大きな壁で囲まれている。大きな門から入るとそこには見渡す限り人、人、人。どこかの店からは活気のある売り子の声が聞こえてくる。
ひとまず落ち着くために宿をとることにした。
「はぁ、宿に来るだけで一苦労だよ、凄い人だね」
「ここまでとは思わなかったわ、まさか歩くだけで疲れるなんて」
その日は休息をとり情報収集は翌日からにした。




