24話 ジュリアの過去
商業区の外れにある食事処に入り客が2、3組なのを確認して席に着く。
「それじゃあまずジュリアの知ってる事を教えてくれないか」
ええ。あれは5年前位の話よ、私が10歳くらいね。私には5つ上のハロルドって兄が居たの。兄はAクラスの冒険者で強くて私の憧れだったわ。
依頼で家に居ない事はよくあってあの日も2週間ぶりに帰ってきた時だったわ。父と母は用事で出ていたから家には私1人だったの。
あの日は突然雨が降ってきたから洗濯物をしまっていたら、お隣さんに
「さっき広場でハロルドを見たわよ、帰ってるのね」
と言われたの。私は大喜びで、急いで洗濯物をしまったわ。
そしてちょっと驚かせようと思ってリビングにあるクローゼットに隠れてたわ。帰って来た所に飛び出してやろうと思ったの。
それから10分くらいすると玄関が開く音がしたから少し隙間を開けて覗いてたの。すると兄がリビングにやってきたから飛び出そうとしたら。
「今日は珍しく誰もいないのか。さて出て来いよ分かってんだ」
私の事が分かったのかと思ってびっくりしたわ、でも出ていこうとした時玄関の方からもう一人足音がしたから怖くなってそのまま隠れてたの。
そしたら現れたのあの男、ビシアスがね。
「流石はハロルド、バレてたか」
「お前は誰だ、知らん顔だな用はなんだ」
「お前が持ってるんじゃないのか?この家に伝わる秘宝アレスティアを。あれが欲しいだけなんだ」
私の家リアレス家は中流階級の貴族なんだけど、我が家には代々受け継がれるアレスティアと言うネックレスがあるの。奴はそれを狙っていたのね。アレスティアにはリアレスの血が流れる者の生命の危機を護ってくれる特別な力があるんだけどリアレスの血が流れない者にはただのネックレスになる筈だから狙う意味は分からなかったわ。
ビシアスの手が光った途端手には銀の三叉槍が握られていたわ。
「答えなくていい、勝手に探すからな。いきなりで悪いが終わりだ。全てを貫け、グングニル」
兄はグングニルに貫かれ、その場に倒れた。何も出来ずに。ビシアスは兄の身体を調べて見つからなかったから諦めて玄関へと去っていったわ。
私はすぐにクローゼットから飛び出して兄のそばに駆け寄った。
「兄さん、大丈夫?」
「なんだジュリア隠れてたのか?良かった、お前が無事で。聞いてただろうが奴はアレスティアを狙っていた、その事を母さんと父さんに伝えてくれ、そうすればお前を守ってくれるはずだ」
そう、アレスティアは私が持っていた。アレスティアはリアレス家の女性が身に付けている場合のみ最大の効果を発する為、代々女の子が産まれると受け継がれていた。
「ジュリア、すまない俺が守ってやるはずだったのにこんな事になってしまって。お前だけはどうにか生きて・・く・れ」
私の目の前で冷たくなっていく兄、現実が理解出来ず固まっていたわ。その後しばらくして帰ってきた両親に抱きしめられてようやく我に返る事が出来たの。
その後兄に何があったか、アレスティアが目的だった事を話した。しばらく厳重な警護を敷かれて何も出来なかった。その時の私はビシアスの事を何も知らなかったから何者か突き詰めて殺してやる事しか考えて無かったわ。
それが2年間続いて少し警護が緩くなって私に自由な時間が出来たから、ビシアスの事を調べたわ裏の世界では有名な奴だった。任務や依頼の為なら人の命は何とも思わない、仲間すら。
調べるのに1年使い、そこから身体の鍛錬を行ったの。基礎は兄に鍛えられていたから剣を使った戦い方は頭に入ってたわ。でも身体が付いてこなかった。2年間の鍛錬を終えて両親に冒険者となって兄の仇を取る事を打ち明けたの。
もちろん反対された、けど諦められるわけないから家出同然に飛び出したわ。その後は知っての通りゲイルに助けられるって訳。
「なるほど、そんな事情があったなんて。でも奴は死んだよ」
「ゲイルがやったの?」
「いや、俺の村で起こった誘拐事件の犯人達がビシアスのパーティーだったんだ。捕らえたのは俺だけどその後自害したんだ」
恐らくそれも何かの任務だったのだろうと今では思える。
「ビシアスと今回の件が関係あるかと思って調べてたんだが、結果よく分からないな」
「そうでもないかも知れないわよ。ビシアスは王都に拠点を置いて活動していたの、だから王都に行けば詳しい事を知ってる人間に会えるかも知れないわ」
ジュリアの情報はとても有益で助かった。だがこれ以上旅をするのは危険な様に感じたので帰る事を勧めた。
「ビシアスの事を教えてくれて助かったよ。でもどこの誰がアレスティアを狙っているか分からない、家に戻った方がいいんじゃないか?」
「嫌よ、兄が殺されたのもきっと誰かの依頼によるものだわ。だったらその依頼者にも罪を償わせなきゃ。それにゲイルが一緒なら大丈夫よ、私もあれから強くなったし万が一の時は守ってくれるでしょ?」
ジュリアの決心は強く、説得は無理だと感じられた。
「はぁ、仕方ないな。ハロルドさんの代わりに俺がジュリアを守ってやるよ」
言っといて何だかすごく恥ずかしい。顔から火が出るとはこの事だ。
再びジュリアとの旅が王都へ向けて始まった。




