21話 炎獄の番犬
先頭に立つ深紅の鎧の男が剣を抜く。
「我らに楯突くとは身の程知らずもいいところだ」
お前らなんか知らねえよ。
「ゲイル君と言ったかな、アビウスから大体は聞いた。悪い事は言わん今すぐ逃げるんだ、奴らと戦って無事で済むとは思えん」
アビウスのお父さんと他のエルフの人達は治癒魔法で応急処置を済ませ多少動ける様になっていた。
「友達の村が襲われて目の前で罪の無い命が失われかけている、そんな時に逃げ出すなんて出来ませんよ。出来る事はやらせてください」
「しかし彼らはアルステリア王国が誇る六聖将の1人、炎聖のアルフレッドが率いる炎獄の番犬だ。かなり手強くご覧の通り我らもこの様だ」
なんと、六聖将の1人が居るのか?それはやばそうだが。
「何とかしてみますだから皆さんは逃げてください。それから他のエルフの人達は?」
「他の村の者は逃しておいた。我らで片付けるつもりだったのだがすまん、1度退き態勢を整えて戻って来るまで耐えてくれ」
「もしかしたら終わってるかも知れないですけどね」
さて、アビウス達は魔王の領域へと撤退を始めたので目の前の4人へ集中する。恐らくだが炎聖のアルフレッドとやらはこの場に居ないだろう。この4人は一部隊と言った所か、とは言え近くに居る可能性も考え油断は出来ない。
「さて、始めようか炎獄の番犬さん」
「余程死にたいらしいな、良いだろう望み通り殺ってやる」
残り2人も剣を抜き、最も後ろの1人は杖を取り出した。魔導士が一人居やがる。ほかの3人は詠唱を邪魔させないつもりだな。
詠唱開始と同時に兵士の1人が駆け出し距離を詰めてくる。俺も剣を抜き臨戦態勢へ入る。まずはロックバレットを魔導士へ向けて放つが、前の兵士に弾かれる。そう簡単にはいかないな。
「今のは無詠唱か?こんなガキが?」
まずは兵士を片付けないと駄目だな。兵士の1人が目の前までやってきた。大きく振りかぶり俺目掛けて振り下ろす。バックステップで躱し、すかさず反撃に出ようとするが、魔導士の邪魔が入って思う様に動けない。しっかり連携が取れている、ちょっと厄介だな。各個撃破で確実に数を減らすしか無いな。
幸い残り2人の兵士は魔導士の側から離れない。ならば目の前の兵士からやっていこう。再び剣を振り下ろしてきた、今度は下がらず剣を頭上に掲げ受け流しながら前に出る。これなら兵士の影になり魔導士も手が出せまい。そのままの勢いで胴体へ一撃。その場へ崩れ落ちる兵士。安心せい峰打ちじゃ、なんてね。流石に殺しはしない。
「さて次は誰だい?」
「おのれ、少し見くびっていたようだ。2人でかかるぞ、援護を頼む」
兵士2人が駆け出した、魔導士は一人になったが2人を相手にしながらでは攻撃する事はできないだろう。まぁ相手にする前ならどうってことない。纏気を脚に集中させ即座に魔道士の背後へ回る。
「なっ、何処へ行った」
兵士は完全に見失っている。さっきの戦闘が本気だと思われたなら心外だな。とりあえず魔導士には静かにしておいてもらおう。
「あとはあんたら2人だよ。少し本気を出すとこんなもんか」
「いつの間に背後へ、あの動きまるで・・・いやありえんあんなガキがあの方と同じ力を持つなど」
ぶつぶつと何かを言っているが無視だ、さっさと片付けてしまおう。ロックバレットを20個発現させそれぞれ10個ずつ放つ。防御に必死になっている所に背後へ回り一撃。
残るは隊長らしき奴1人だ。こいつも直ぐに片付けてしまおうとした時。
「おいおい、これはなんてざまだ。子供1人にやられてんじゃねぇか。どういう事だ、クリス」
突如聞こえてきた方を向くと1人の人間が向かって来ていた。黒髪に鋭い眼光、筋骨隆々の肉体、顔や身体の見える所だけでも無数の戦闘による傷痕。かなりの実力者だと見て分かる。
「アルフレッド様申し訳ございません。もう少しでエルフ共を殲滅と言う時にこのガキの邪魔が入りまして、中々の実力者でしたもので」
やはりこいつが炎聖のアルフレッドか。
「まぁいい。任務は終わりだ帰るぞ」
「しかしエルフ共はまだ・・・」
「逃げた奴らも全員燃やしてきた。魔王の領域なんて俺から見たらこっちと変わんねぇよ。あんなのに手こずりやがってお前らもまだまだだな」
よく見るとアルフレッドは魔王の領域から来ていた。そしてその背後からは煙が上がっている。
「嘘だろ、アビウス・・・。待ちやがれ」
「なんだ小僧、まだやるのか?そう死に急ぐな」
「このままで終われるか、お前ら絶対許さねえ」
駆け出した瞬間、目の前にアルフレッドが現れた。奴は右腕を振りかぶり腹部へ突き刺さる。咄嗟に纏気でガードをしたが間に合わず吹き飛ばされる。衝撃をガードしきれず気を失いそうになる。
「そこまでエルフに肩入れする理由は分からんがこれ以上は本当に死ぬぞ。次、俺らに歯向かうなら容赦はしない。そうなりたくなければ俺の前に現れないか、相応の力をつけてくるんだな」
そう言い放ち去っていく炎獄の番犬、何も出来なかった悔しさと歯痒さを噛み締めながら気を失った。




