16話 別れ
無事にキシリスへと帰って来た。
早速ギルドへ報告に向かう。迷宮内部の魔物、ボスについて、トラップの有無を細かく確認した後ランク付けされる。今回の迷宮はボスが火竜だった事からBランクに設定された。
俺とジュリア、パーティーランクもそれぞれBランクへと一気に上がった。ちなみに迷宮のボスは新たな魔物が生まれるらしく、その都度新たなマジックアイテムも生まれる為冒険者は後を絶たないとの事。
今回の迷宮ではマジックアイテムを1つ手にいれた、火竜が守っていた物だ。
50センチ程の両刃剣で刃には陽炎の様な紋様が刻まれていた。マジックアイテムには特殊な効果が付与されていて、この剣には抜剣した時に火竜の炎魔装が発動された。
自分で魔装が発動出来るようになったから要らないのもあるが、今回の戦闘でジュリアの剣が砕かれてしまったのでジュリアにあげる事にした。
最初、私は何もしてないからと断られたが何とか受け取ってくれた。何だかんだ言いながらオモチャを買ってもらった子供の様に嬉しそうに剣を眺めていた。
これで少し不安だったジュリアの腕力不足は解決されるだろう。
報告も終わりジュリアの家へ帰る。疲れもあり食事の後はベッドへ向かい眠りにつく。
翌日は商業区へ向かいドラゴンから取った素材を売却や装備品に加工する。俺は普段魔法主体の遠距離戦闘なので鎧等の防具ではなく属性耐性のあるローブを身に付けている。なので今回の収穫から角を使用し火魔法威力増加のブレスレット、高い火耐性のついたローブを手に入れた。
そして1つ残念な事実が判明した。金が貯まってしまった。
今回で俺の手持ちは5000クラウンを超えかなり余裕のある状態になった。つまりキシリスから旅立つ時が来たのだ。
あまりにジュリアとの生活が楽しすぎて忘れていた。何時までもジュリアの世話になる訳にも行かないしな。少し寂しいがしょうがない。
その日の夜
「ジュリア、金も貯まった事だし次の街に出発するよ」
「そっか…寂しくなるね。でも今回の依頼で私の力不足を痛感したしどれだけゲイルに守って貰ってたか分かったわ」
そんな事は無い、俺の援護が必要な時は数える程でジュリアの力は本物だ。ドラゴンは少し相手が悪すぎたが。
「だから今は黙って見送るわ。そして私は強くなる、ゲイルを助けられる程にね」
笑うジュリア。
「ありがとう、また2人で一緒に冒険しよう」
次の日いつも通りトレーニングを行い、汗を流すためお風呂に入り、あがると朝食が出来ている。いつもの風景だった。
朝食を終えると身支度を済ませ門へと向かう。門の周りにはいくつもの馬車が待機し、何時でも出発出来るようになっていた。
「じゃあさようなら、またいつか会おう」
「そうね、また会いましょう」
俺が馬車に乗り込むと馬車は出発する。
外ではジュリアが笑顔で見送ってくれていた。