15話 ドラゴン討伐
扉を開くと唸り声と共に突風が吹いて一歩後ずさる。
30m四方の広間の奥には5mの巨大な体が鱗で覆われ、背中からは左右に羽が生えている魔物が居た。鋭い牙を向けて威嚇されている。
ゲームとかではよく見た事あったけど、マジか…ドラゴンかよ
「なんでドラゴンがこんな所に?ドラゴンって普通にいるもんなの?」
「そんなわけないじゃない。滅多にお目にかかれないし、見つけても逃げろって教わったわ」
そりゃそうだ、目の前の奴を倒そうだなんてまず思えない。引き返そうかとも思ったがドラゴンの口からファイヤーボールが放たれ、後ろにあった扉が天井から崩れ埋まってしまった。
「こりゃ閉じ込められたね」
「私達は餌ってことね。もうやるしかないわねじゃないと殺られるわ」
覚悟を決める。今の攻撃を見る限り火竜で間違い無いだろう。
「ジュリア、まずは俺が魔法を放つからそこで隙を見て突っ込んでくれ。でもあまり無茶はせず回避に全力を尽くしてくれ」
「分かったわ、こんな所で死にたくないものね」
俺はまずアイシクルで巨大な氷柱を10個用意する。
アイコンタクトでジュリアがドラゴンに向けて駆けていく。それより速くアイシクルがドラゴンに到達する。火には氷が効くんじゃないか?
そんな考えを打ち砕くようにファイヤーブレスで溶かされる。
その隙に背後に回っていたジュリアが左脚に切りかかるが、鱗に守られ深くは傷つけられない。
よし、全く攻撃が入らないわけじゃない。
次のアイシクルの用意を終えると同時にドラゴンの尻尾が唸る。
「まずいジュリア、尻尾だ」
反応が遅くジュリアは壁に叩きつけられる。俺はアイシクルを放ち即座にジュリアのもとへ駆け寄る。剣と防具は砕かれているが何とか息はしている。
衝撃で気を失っているので治癒魔法をかけて安全な場所へ移す。
アイシクルはファイヤーブレスで防がれていた。
1対1か、いけるか?
まず魔法は遠距離では当てるのが難しい。ならば奴と接近戦をしなくちゃならない。全身の纏気を最大出力にし全力で地面を蹴る。
正直今まで全力にした事がないのでどれ程の力になるか分からない。
気付けばドラゴンの懐にいた。
えっ、速くない?
ドラゴンは見失っていた。思い切り胴体を殴る。呻き声を上げるドラゴン。
よし、効いたな。即座にアイシクルを発現し畳み掛ける。2発胴体に突き刺さり血が滴っている。残りご突き刺さろうとした時、ドラゴンの体が炎を纏う。
即座に距離をとり観察する。全身を炎が纏っているので攻撃するとこちらの腕が焼けてしまいそうだ。
ワイズ、なんだよあれ?
『 魔装 です
自らの魔力を纏う闘神の纏気と似ていますが魔法による属性付加が追加されより強力になっています』
なるほど、厄介だな。でも待てよ、それなら俺も出来るか?
『可能です』
よし、纏気にアイシクルを合わせるイメージで発動させると体から冷気が立ち込める。これが魔装か、さしずめ氷魔装ってところかな。
地面を蹴り再び懐に潜り込む、魔装が相殺しているためか熱さは無い。胴体を殴ってみるが俺にダメージは無い。よし、いけるな。
数発殴るとドラゴンはよろめき頭が下がる。チャンスは見逃さず頭部へ駆け出す、と共に手には魔力を込めて絶対零度の氷剣を創り出す。
氷剣を頭へ向かって振り上げる。炎魔装により徐々に溶けていくが紙一重の差で刃が首を切り上げる。振り返るとドラゴンの首が落ちている。
俺の勝ちだ。無意識にガッツポーズをしていた。
鱗など素材になる部分や高く売れる部分を切り取っているとジュリアが目覚めた。
「えっ!ゲイル1人で倒したの?」
「まぁ、なんとかね」
「強いとは思ってたけとここまでとは驚いたわ」
「そんな事より無事で良かったよ。大方剥ぎ取ったからそろそろ帰ろうか?」
そう言ってジュリアと共にキシリスへの帰路についた。