12話 ギルド
村を出て街道を1人歩き続ける。まずは王都を目指して旅をしようと考えている。王都までは早くても3ヶ月程かかるらしいが急ぐ旅じゃないしゆっくり行こう。
平らに整備されて馬車などが走れる様にはなっているがそれだけだ。時折周囲の森や茂みから魔物が飛び出してくるが大した敵では無い。王都周辺の街道になれば魔物を寄せ付けない魔法が施されているらしいが、田舎の方には行き届いていない様だ。
まずはアルス村から1番近くの街へ向かっている。道のりは5日程でそこまでは何も無いので、野宿をして進む。
食料は問題無いが寝床が問題だ。1人では寝ている間に周囲を見張ってくれる仲間がいない、その為土魔法で家を作る。
家と行ってもただ寝るために四方を囲って天井をつけた簡単なものだ。順調に旅は進み4日が経った。もうすぐ街が見えてくるはずだが。
「キャー」
突然森の方から人の悲鳴が。すぐに周囲の状況を探知すると、1人の女性が魔物4匹に囲まれている。すぐに駆け出して向かう。あれは…ゴブリンだ。
まずはファイアーボールを放ち1匹を焼き尽くし、注意を引きターゲットを俺へ切り替える。次にロックバレットで3つの岩を出現させる。残り3匹が襲い掛かってくるのにカウンターで顔面にぶち込んでいく。最後にまとめて燃やし尽くして終了だ。
胸まであるだろう金髪を後ろでまとめた綺麗な女性だった。
「大丈夫ですか?」
「助かりました、強いんですね。えっと」
「俺はゲイル・オルコットって言います。どうしてこんな所でゴブリンに襲われてたんですか?」
周りを見た限り仲間がいる訳では無さそうだ。女性が1人で街の外に出るなんて余程の理由か、腕に覚えがあるかのどちらか。
「ありがとう、ゲイル。私、ジュリア・オズウェルト。冒険者になりたてでゴブリン討伐なら1人で出来ると思ったんだけどね…」
確かにジュリアは綺麗に磨かれた剣や防具を身に付けていた。新品なのだろうが自分の力を見誤るとは危なっかしいな。
「それで、この後は?」
「街に戻ってギルドに報告しなくちゃ、討伐失敗ってね」
ギルド、丁度いい。これからの金を稼ぐためにもギルドには寄らないといけないと思ってた所だ。
「それなら一緒に行っていい?俺も街に行ったらギルドに用事があったんだけど」
「そうね、じゃあ一緒に行きましょう。街までそんなに遠くないから」
ジュリアと話しながら歩いて1時間程で着いた。街への魔物の侵入を防ぐ為周囲は巨大な壁で囲まれていた。入ると活気があり、村とは比べ物にならないくらい広い。都会に出てきた田舎者の様に辺りをキョロキョロと見ていると
「ここが私の生まれたキシリスよ」
大きな胸を張りドヤ顔で言ってきた。
「すごいね、村と全然違うよ人も建物も多いしね」
「でしょ? じゃあさっさとギルドに報告して街を見て回りましょう」
街を褒められ気を良くしたのか街の案内までしてくれるらしい。
ギルドは酒場の様な雰囲気だった。多くの机が並べられその奥にカウンターと依頼を張り出す掲示板があった。昼間から酔っ払った奴がそこらじゅうにいやがる。カウンターに向かい報告を済ます。何やらカードを提示して数秒で終了した。
「あと、この子の登録をして欲しいんだけど」
受付の娘がこちらに目をやり
「えっ、ジュリアこの子は?まさか彼氏…」
「なわけないでしょ! 助けて貰ってギルドに用があるって言うから案内してあげたの」
顔を赤くして否定しちゃって可愛いな。でもそんな食い気味に否定されるとちょっと傷つきます。
「冒険者になるのに年齢制限とかはあります?俺まだ10歳なんだけど」
「大丈夫よ、何歳だって登録出来るわ。ただし何があっても自己責任だけどね」
受付の娘に出された紙に名前を記入するとカードを手渡された。俺の名前とFと書かれている。
「それが名前とランクね、依頼を成功させて受付に提示すると記録されていくからそれによってランクが上がっていくの。」
ランクはSS,S,A,B,C,D,E,Fとなるらしい。
「それとこの隣にあるのが掲示板ね、依頼書が張り出されてるからそれを受付に提出して依頼をこなしてくるの。大体こんな所かしら、また分からない事はジュリアに聞いてみて一応は先輩だし」
「はい、わかりました」
無事に登録も出来た所でギルドを後にする。
「ゲイルってまだ10歳だったのね、あれだけ強いから年上かと思ったわ」
ジュリアは15歳で年上だった。この世界では15歳で成人となるらしく、成人前の冒険者は珍しい様だ。その後は街を案内して貰い日が落ちてきた為宿を探そうとすると
「私の家に泊まらない?まだお礼らしいお礼も出来てないし」
とんでもない申し出があった、出会って間もない美女からそんな事言われるなんて思いもよらなかった。しかし平静を装いながら
「良いんですか?じゃあお言葉に甘えて」
ジュリアの家へ向かう。
ジュリアは一人暮らしだった、冒険者になる事を親に反対され家を飛び出して来たのだと言う。
「ちょっと待ってね、すぐに食事の用意するから」
慣れた手つきで調理しすぐに食卓に並んだ。パンとスープに鶏の照り焼きだ。良い嫁さんになるんだろうと思いながら1口
「美味しい」
お腹いっぱいになりお風呂まで入らせて貰い至れり尽くせりだった。
「この後はどうするの? すぐに次の街へ向かうの?」
「確か馬車があったよね? あれに乗って行こうかと思うんだけど…」
「確かに楽だけど結構お金かかるわよね」
「うん、だから暫くはここでお金を貯めるよ。依頼はいっぱいあったし」
手持ちは500クラウンあり馬車は300クラウンとほとんど無くなってしまう。ちなみに1クラウンは1円だ。なので少しお金を増やす為にもここで働く事にした。
「それなら一緒にパーティー組まない? ゲイルが居ると私は心強いし、ゲイルには邪魔かも知れないけど。それとここを使ってもらっていいし、駄目?」
やばいな、その少し上目遣いのお願いは破壊力が半端無い。何でもOKしてしまうだろう。
「そんな邪魔だなんて思わないし、寝る所も貸して貰えるなんてむしろこっちがお願いしたいくらいだよ」
「じゃあ決まりね! 明日から頑張りましょう」
こうしてキシリスでの生活が始まった。