10話 シアン救出作戦 対決
俺が先行し洞窟内に進む。10mくらい後をクライフがついて来る。進んでいくと火の光が見えると同時に開けた場所に出た。そこにはやはり大柄な男が3人と女が1人とその後ろに女の子が縛られている。シアンだ。
「どうした?ゲイル、…シアン!」
「馬鹿クライフ、何であんたが来てんのよ」
クライフを落ち着かせなければこのまま突っ込みかねないな。
「まぁ感動の再会かも知れねぇが少し静かにしてもらおう」
1人の男が手で合図すると女がシアンの口に布を噛ませる。
「その子を解放して貰えると助かるんだけど?」
「それは無理な話だ。お前らはここで死ぬんだからな」
特にガタイが良く2m近い背の男が受け答えをするあたりリーダーなのかもしれない。どうにか2対2に持ち込みたい。
纏気を足に集中させ一気に他の2人の懐に入り右腕が相手の腹部へ刺さる。その場に倒れ込みあっという間に2対2だ。
「誰が死ぬって?」
「なっ、この糞ガキやりやがるな」
「クライフ、このおっさんは俺がやるからお前はあの女を倒してシアンを助けろ」
「よし、任せとけ」
クライフはシアンの元へ走り出す。すると男は瞬時にクライフの前へ出て拳を打ち下ろす。
「そう思い通りにならねぇよ」
「だから、おっさんの相手は俺だって。今だ、行けクライフ」
両手で男の拳を受け止めクライフを守る。
「ほう、今のも止めるか。ガキだと思って舐めてると痛い目見るな。悪いが本気で行くぜ」
男が詠唱を行うと周囲に岩が20個程浮遊している。その全てが俺へ向かってくる。即座に土の壁を出現させガード。男はその場を動かず次の詠唱を終えていた。男の右手には先端が三つに分かれた銀の三叉槍が握られていた。
「俺の最強攻撃魔法だ。これで生き残った奴は今までいない。これで終わりだ、全てを貫け、グングニル」
投擲された槍は俺に目掛けて一直線に飛んでくる。速いが避けられない速度ではない。1mの位置まで来た瞬間にダッキングでかわす、頭上を掠め髪が少量舞っていた。同時に地面を蹴り相手と間合いを詰める。
「こんなもんか?案外拍子抜けだな 」
不意に背後から風切り音が聞こえる。振り返ると槍が追尾している。避ける余裕は無く腹部に突き刺さる。
「このグングニルは相手の魔力を感知して追尾するんだよ。相手を貫くまでは止まらねえ。だから皆死んでいくのさ」
ふとそこである事に気付く。いつもなら相手を貫き手元に戻って来る槍が未だ戻らない。ゲイルは男へ振り返る。そこにグングニルは存在していなかった。
「なっ、お前何をした。あの槍は全てを貫く最強の槍だぞ」
ゲイルの手にはファイアーボールが出現され、丁度槍の刺さった筈の場所にある。
「追尾は焦ったが結局は銀だ。溶けるんだよ」
「しかし、たかがファイアーボールでどうやって?」
「これはただのファイアーボールじゃ無いぜ、魔力を大量に込めて全てを熱量に回せば簡単に1000度は超えるんだ」
男の動きは重く、顔色もかなり悪くなっている。恐らく魔力切れを起こしたのだろう。強力な魔法だったからな、相応の魔力は必要だろう。
「さて、魔力切れの様だしこれで終わりだな。だが俺の友達に危害加えたんだちゃんと罰を受けてもらうぞ」
右足で顔面を蹴り飛ばすと壁へ突き刺さる。流石に殺しはしないよ、俺は優しいからね。
クライフの方はと言うと丁度終わった所で女は気絶していた。
「流石、やるなぁ」
「ゲイルの方が強かっただろうが」
「そんな事より早くシアンの元に行ってやれよ」
クライフがシアンにかけより縄と口の布を解いた。
「シアン!無事か?」
「バカクライフ、あんたが来てどうすんのよ!自警団の皆に任せとけば...ぐすっ、2人も無事で良かった」
不安から解放されたのか安堵して泣き出すシアンそれを抱きしめるクライフ。こいつらに何も無くて本当に良かった。ところでこの犯人達はどうしてくれようか?自警団にでも突き出してやろうかな。
しかしそうなるとグレン達に怒鳴られる未来しか見えないが他にいい案が浮かばない。溜め息を吐きながら諦めて自警団へ突き出すことにした。