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電波女、見参 その②

暗めの話ですみませぬ……

僕は、いじめられていた。


最初はそのことを認めたくなかった。なんだか恥ずかしいことのように思えたからだ。いじめられる方にも原因がある、という論調を知っていたし、いじめられているということは弱くて男らしくない者が受ける罰のように感じていた。

実際、僕は男らしくない見た目だった。童顔で、肌は白く、電話に出れば女子に間違われる。その外見がいじめられる直接の原因でないことはあとでわかった。間接的な原因だったのだ。

ある日、女子に「かわいい」と言われた。次々に女子たちがその意見に同意した。僕は女にかわいいと言われる類の男だった。モテているとは少し違うと思うのだが、注目されるタイプではあった。それを面白くないと感じたのは男子たちである。男の嫉妬というのは実はある意味で女より怖い。彼らはある一面で女子より暴力的でガキだからだ。翌日、僕はいじめの標的にされた。


「オカマ」

「ホモなんだろ?」


言われ慣れて、もはや親しみすら覚える悪口ツートップ。テレビに出ているオネェたちに一時期は殺意が湧いていたが、彼らもしくは彼女らは悪くない。運がなかったのは僕だ。僕の見てくれだ。

本に落書きをされてカッターでずたずたにされたことがある。好きな作家の初版本だったので、割と大事に読もうと思っていたのだが、ぼろぼろにされてはいた仕方ない。見つけたときの何とも言えない気持ちをまだ覚えている。ああいうとき、すぐに怒りは湧いてこないものだ。最初は驚きというか、放心に近い。

本のことが二位。一位はネットに悪口を書かれたこと。悲しくも芸能人の気持ちがわかってしまった。学校に行きたくないどころか、外にすら出たくない。書き込まれていたのは学校の裏サイトと呼ばれるものだったが、誰が僕への悪口を見ているかわかったものではない。全校生徒に名が知れていると思うと、死にたくなった。晒されることの恐怖。

ネットのことを教師に言ってくれた生徒がいたようだ。その人とは友人でも知り合いでもなかったが。元いた友人たちは、僕がいじめているとわかると、自分たちへの波及を恐れて僕から離れていった。それでも、正義感のある人間がこの学校にもいたのだと、この学校も捨てたものじゃないと、僕は教師たちになけなしの義憤と拙い言葉で訴えた。教師たちはこう言った。


「お前は人に嫌われやすい性格だから」

「お前が大人になればいいだけだ」


僕はその言葉にショックを受けた。その通りかもしれないと洗脳されかけた。違う。教師たちはそれほど僕の性格を知っているわけではないし、僕が子供だからいじめられたわけでもない。いじめた彼らがもっと子供だったからだ。当然の話ではあるが、教師たちは見かけの取り調べは行ってくれたが、僕の心までは救ってくれなかった。暴力を振るわれることはなかったが、それ以上の傷を僕は負ってしまったのかもしれない。いじめは一旦終息した。相変わらず僕は無視されているし、友達もいない。

いじめが最も酷かった頃、あの頃、僕はどんな気持ちで学校に通っていたのだろう。一年前のことなのにはっきりしない。トラウマにでもなっているのだろうか。登校拒否にならずに学校に歯を食いしばって行ったのはただの意地ではある。自分を褒めてもただ虚しい。


「どけよ。邪魔」


肩をぶつけられる。高校生になったのにまだ続くのか。僕には休み時間に席を立ってトイレに行く自由すら認められていないらしい。

授業を受けることは苦痛ではない。先生の話を聞いていれば、何か考え事をしていれば過ぎていくから。いじめによって成績が下がったと言い訳はできるが、それもなんだか虚しい。それに、授業中はいじめられない。

帰宅の時間になっても、僕に話しかけてきた人間はゼロだった。記録更新。三日間、学校で誰とも話さなかったぞ。

次回、魔法少女?登場です。

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