プロローグ 魂の行方、存在の彼方
よろしくお願いいたします。
君と別れてからもうどれくらいの月日が経っただろう。
だいぶ昔のことだから僕は思い出せない。君も覚えてはいまい。
君は忘れっぽい質だから。僕のことなんか忘れて楽しくやってるんじゃないかと思う。僕は少しいじけるかもしれないし、あるいは僕も君のことなんか忘れて楽しくやっていることだろう。君はあのときの君ではないし、僕はあのときの僕ではない。二人が一緒に生きていたことを、神様が存在していたことを、誰が証明してくれるのだろうか。
もうみんなどこかに行ってしまったのに。誰が見ていてくれたのだろうか。
ねぇ。君と僕の始まりはいつだっただろうね。遠くの、遠くの過去の景色が見えるかい。たぶん、いつかのいくつかの山と海と星を越えなければならないだろうね。時間も空間も僕たちを隔てるものでしかないとわかったとき、僕は少しだけ途方に暮れて、すぐに諦めた。
ひょっとしたら、僕と君は二人でひとつだったなんてことがあるのかもしれない。宇宙が、世界がひとつだった頃、二人が一人でありえたかもしれない。その終わり。その終わりに僕と君は出会って、始まったんだ。終わりが始まりだなんて素晴らしく前向きじゃないか。でも僕は君にはなれないし、君は僕にはなれない。永遠に叶わない何か。触れることはできたけど、心はつなげられただろうか。
旅はまだ続いている。僕は一人旅路を行く。とても暗くて、記憶の中の星の光しか頼るものはない。君を星にたとえても虚しい。君を世界にたとえるほど押し付けがましくもない。君は今の僕を見てくれてはいないのだから。ただ果てしない夜だけが僕を見ている。この夜が僕なのだ。
旅は終わる。終わることを信じているだけだ。もし、終わりが始まりなのだとしたら。僕は君に会えるだろう。もう一度だけ会えたとして、伝えられる言葉が見つからないのだけれど。
世界の果て、約束の場所に辿り着いたとして、そこに君はいるのだろうか。何もないところだったら嫌だな。逸り焦る気持ちはもうどこかに置いてきたけど、希望だけはまだ持っているよ。
願うことはただひとつ。君のもとへ。
いずれ二人は出会います。