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第1章 FILE08:降伏勧告

 ルノアが通された部屋には、十騎長以上の部隊指揮官たちがあつまっていた。一番奥の席に亜麻色の髪をショートカットにした女性が座っている。

「ルノア司祭、2ヶ月ぶりだな。あの時は同じ陣営にいたが、今は敵か」

「はい、ヴァネッサ様。捕虜となった者達と拘束されている間に、この国での任期が終了しましたのでそのまま残りました」

「そうか、残念なことだ」

 ヴァネッサはルノアから書状を受け取り、目を通す。そして、降伏条件を読み上げる。


 一.一般兵士は、武装解除の上、速やかに砦より撤退すること。


 一.十騎長以上の者はルノア司祭による束縛の魔法を受けた上での解放か、捕虜になること。


 一.砦は現状維持のまま引き渡すこと。破壊工作等が行われた場合、降伏勧告を無視したものと見なす。


「なお、この降伏勧告を拒否した場合。総攻撃を開始する。以上だ」

 書状をハットに渡す。書状を読んだハットがルノアに問う。

「2番目の条件ですが、あの魔法は本来、罪人に罰を与える為の魔法ではないですか?」

「はい。しかし、無条件での解放は出来ません。レイバ様が出した条件は戦場の忌避きひ、解除するまで戦場には立てないでしょう」

 会議室内が、ざわめきにつつまれる。

「ハット。束縛の魔法について説明してくれ」

「ヴァネッサ様。束縛の魔法とは、本来、罪人が再び罪を犯さぬようにする魔法です。たとえば、盗みを禁じられた者が盗みを犯そうとすると、立つことも出来ないほどの頭痛に襲われます。解除自体は、それ程難しくはありませんが決められた期間内の解除は難しいと思われます」

「何故だ」

「解除には各教団の許可が要ります。特に今回のように降伏条件に、なっていますと解除の許可は降りません。無断で解除すると犯罪人として教団から追われます」

 ハットの説明を聞いて、ヴァネッサはルノアに視線を向ける。

「ルノア司祭、期間はどれほど考えている」

「はい、1年間です」

「長いな。しかし、捕虜になればいつ解放されるか、わからないか」

 沈黙が会議室を包む。しばらくしてヴァネッサが発言する。

「ルノア司祭、条件はすべて飲む。私は捕虜となるが、解放を望む者にはそのように取計らってくれ。引渡しは明朝9時。では、皆そのように準備を頼む」

 男たちが部屋を出て行く。ルノアはヴァネッサに話し掛ける。

「御決断、ありがとうございます」

 頭を下げる。

「いや、礼を言わねばならないのは私だ。おかげで兵たちを家族の元に帰してやれる。司祭がいなければ全滅するまで戦っていただろう。ハット、お前はどうする?」

 ヴァネッサが隣に立つハットを一瞥いちべつして問う。

「貴女と一緒にいますよ。私たちは国ではなく、教団と自分が認めた者に仕えるのです。私は貴方の傍にいたい」

「好きにしろ」

 ヴァネッサが、少しだけ頬を紅くして言った。

 聖神暦124年6月23日。フィロス砦は無血開城した。




次回予告


フィロス砦の無血開城が実現した。


だがその時に事件は起こった。


次回 暗殺


風が物語を貴方に運ぶ。


はじめて目を通していただいた方、ありがとうございます。

毎回読んでいただいている方、いつもありがとうございます。


戦記と銘打っておいて、戦闘シーンなしです(笑

タイトルに偽りありですが、まあそのうちにやります。たぶん2章あたりで(笑


構成ですが、1章が魔王というかルノア中心、2章が国王軍中心、3章で両軍の激突となる予定です。

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