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第2章 FILE29:内乱19 セルの最後

 戦場は血の匂いであふれていた。先ほどまで肩を並べていた戦友が、物言わぬむくろとなって地に伏す。仲間を助けるどころか斬り捨てて我先に逃げ惑う。狂気と混乱が流血に拍車をかける。

 反乱軍の指揮系統は完全に崩壊していた。

 敗走する反乱軍に、王国軍の部隊が容赦ない追撃をかける。矢を放ち、騎士がランスを押し立てて追い詰めていく。

 地形を利用した縦深陣じゅうしんじんに誘い込まれ指揮系統を失い、烏合うごうの衆と化した反乱軍と、少数の部隊に分散しているとはいえ、敗走ルートの要所ようしょ要所ようしょに配置された王国軍の執拗しつような攻撃。

 それは既に戦闘と呼べるものではなくなっている。

「もう一度言う! 武器を捨て、投降の意志を示す者は殺すな。兵達に徹底させろ。破るものは、武勲ぶくんのある無しに関係なく犯罪者としてさばく! 忘れるな!」

 王国軍の指揮官達は、勢いに乗る兵達をコントロールすることに必死だった。

 戦闘が一方的になると、血に酔った兵士たちが暴走することが少なからずあるからだ。

 無抵抗な投降兵を皆殺しにし、近隣の村になだれ込み、焼き、奪い、犯し、殺す。古今東西、何処の戦場でも見ることのできる光景だ。




「ええい、こうなれば誰でもよい! この中に誇りある騎士は居ないのか!」

 3メートルはある長槍を持った歩兵が十重とえ二十重はたえに取り囲む中、セルがえた。

「ふん、勝敗の決まってからの一騎打ちに何の意味があるというのだ?」

 リヒッター百騎長は鼻で笑った。

「第1部隊、構え! 突け!」

 リヒッターの号令に、セルを取り囲んだ兵達が一斉に長槍で突く。

「うぐっ…うがぁぁ」

 セルが己の身に突き刺さった槍を戦斧でなぎ払う。それと同時に前方に居た兵と、後ろに居た兵が入れ替わる。

「第2部隊、構え! 突け!」

セルの身体に、さらに十数本の槍が突き刺さる。

「ぐっわっわぁぁぁっ」

 セルは雄叫びと共に槍をへし折りながら、斧を振るう。運の悪い兵士の頭が、柘榴ざくろのようにカチ割られ、絶命する。

「第3部隊、構え! 突け!」

 突かれると同時に、セルがリヒッターに向けて戦斧を投げた。リヒッターはその斧をかろうじてよけたが、バランスを崩し愛馬から転げ落ちる。

「何をしている。討ち取れ!」

 しかし歩兵達は槍を突き出しまま固まったように動かない。しばらくして、歩兵達がリヒッターとセルの間を開けた。

 セルは十数本の槍で身体を突かれたまま斧を投げた体勢で立っていた。リヒッターは己の剣を抜く。動かないセルにおそるおそる近づくとセルは絶命していた。

「一人でここまでやるとは敵ながら…… よいか! 遺体は、敬意を払い丁寧に扱え」

 リヒッターは副官にそう命令した。




 次回予告


 砦に逃げ帰るロス公爵。そこでロスが見たものは。


 ラスの刃がロスに迫る。


 次回 内乱20 目的


 風は貴方にどんな物語を残しましたか?


ここのところ誤字が多くて……

ご指摘してくださり、ありがたく思っています。

今回も推敲はしたつもりですが……


さて、セルさんがフルボッコにされて戦死です。

一騎打ちの無視については、リヒッター百騎長のセリフの通りです。

勝敗がすでに決していることと、時代が集団戦闘重視に移り変わっており一騎打ちが重要視されていないことが理由ですね。

でも、開戦前の一騎打ちは現在でもありえると言う設定です。



追記 1日0224時

下手こいたー 

orz まだ誤字がありました。

ご指摘ありがとうございました。

『そんなおかんけいねぇ!』とは開き直れませんしね。

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