第2章 FILE26:内乱16 激突
両軍の兵がぶつかり合い、辺りに血の匂いが広がる。ランスに貫かれた兵士、弓や槍に貫かれた騎士、泥にまみれ、血にまみれた死体が休むことなく生産されていく。
「セル様、駄目です。中央前衛部隊が突破されます」
「役立たず共が…… 本体を前進させろ」
「は、はい!」
セルは、愛馬に拍車を入れる。
「兄者にあれだけの大口を叩いたのだ、引くわけには行かぬ。こうなれば、直接相手をしてくれる」
セルは、2メートルはある戦斧を構え前線に出た。
アイオリアの一振りで、重装歩兵が首を飛ばされ崩れ落ちた。
「リュエル、ヒルト。指揮しやすいところまで下がる」
アイオリアはなれない馬上において奮戦している2人に声をかけ、馬首を返す。それに続き、アイオリアの直接指揮下にある騎士たちが続いた。
「リュエル、ヒルト。この戦況、どう思う?」
「このまま、押せそうですね」
と、リュエル。
「反乱軍の両翼が、まだ動いていません。用心が必要かと思います」
と、ヒルト。同じ戦場にいて、見えているものが違うというのは面白い。
「ヒルトの言うとおりだな。リュエル、指揮官はできるだけ広い視野で戦況を見ることだ。目先のことに惑わされると、足元をすくわれるぞ」
アイオリアは2人から目線をはずし、戦場を見つめる。
「よし、敵の後方部隊も動き出したようだし頃合だな。全軍に通達。部隊を2キロほど下げる。ただし、ゆっくり、整然と」
「敵部隊、下がります」
部下の報告に、セルが大声で指示を出す。
「今だ、押し戻せ。右翼、左翼の部隊も投入しろ!」
命令と同時に、伝令の兵が飛び込んできた。
「ファル様より伝令」
しかし、伝令の内容を聞いたセルは激昂した。
「深追いはするな。だと、兄者に伝えろ。戦いには機というものがある。それに乗れなければ勝てる戦も勝てないとな。全軍突撃だ」
アイオリアは、部隊を湿地と森に囲まれた地形にまで下げた。反乱軍がいくら数で勝っていていても、一度に攻撃を仕掛けられる部隊は限定される。
「さて、ここからが正念場だな。アルゴ百騎長に伝令。俺と共に残り殿を勤めろ。他の部隊は所定の位置まで撤退」
アイオリアは、リュエルとヒルトに向き直る。
「2人は他の部隊と共に下がれ」
「側に置いてください!」
「僕らも戦えます!」
2人の言葉にアイオリアはため息をついた。いつもは素直に言うことを効く2人だが、様子を見るにこれだけは譲ってくれそうもない。
「しかたないな…… 離れずについて来いよ」
「敵軍、さらに後退します」
兵の報告にセルが忌々しげに答える
「ぬう。押さんか。一兵たりとも逃がすな!」
「無理です。湿地と森に阻まれ、兵を配置できません」
セルは側に立っていた木に、戦斧を突き立てた。
「ええい、騎馬兵を先頭に立て追え! いや、お前らには任せられん! 俺が直接指揮する!」
セルは突き立てた戦斧を引き抜くと、直接指揮下にある部隊を前進させた。
次回予告
後退する王国軍。それを追う反乱軍。
そこに待っているものは。
次回 内乱17 罠
風は貴方にどんな物語を残しましたか?
うむ。今回もセリフが多い6:4ぐらいか……
せめて逆の割合だったらもう少しマシなものになりそうなのですが(汗
しかも今回は場面変化が激しい(汗汗
自身の描写力のなさが嫌になります(泣
合戦の描写として参考になるものってないだろうか……
追伸 27日0316時
誤字の報告、ありがとうございました。メール返信できませんでしたのでこちらでお礼を申し上げます。