第2章 FILE25:内乱15 コウレクト河畔の戦い
「敵軍が来ます。数およそ2,000」
物見の兵が広間に、飛び込んできた。
「親父。敵は我が方の半分だ。今なら力でねじ伏せられる。出陣を!」
セルの意見に、ファルが反対意見を叫ぶ。
「バカな。敵はこちらが砦から出るのを待っている。それに踊らされるのはごめんだ」
そんなファルにラスはツッコミを入れる。
「まあ、長引かせても国王軍が、増強されるだけだけどな」
「ラス!」
ファルが咎めるように怒鳴る。
「事実を言ったまでのこと。戦わねば勝てない」
しかし、ラスは淡々と返す。
「分かっている。だが、敵の手の平で踊るのは不愉快だ」
「では、兄上に策はおありか?」
「うっ……」
言葉につまるファル。
「たとえ罠であっても、罠ごと食い破ればよいだけではないか。兄者は、危険ばかり見すぎて臆病になっているだけだ」
ラスの援護に交戦論が優勢と見たセルのセリフに対し、ファルが顔を真っ赤にした。
「何だと? 誰が臆病だ。わかった3,000の兵をお前に預けてやる。結果を出せ」
そんなやり取りを今まで黙って見ていたロス公爵が、豪華なイスから立ち上がった。今までの流れから勝てる戦と確信したらしい。
「いや、全軍を出せ。ワシも戦場に立つ。ファルは残りの兵を率いてワシを守れ。ラスはどうするか?」
ラスは頭を下げ恭しく言った。
「わたくしめには、ファル兄上のような知略もなければ、ラス兄上のような力もございません。守備兵たちと供に、砦を守りましょう」
「それでは、手柄は立てられぬがよいか?」
「ご心配なく。私の役目は、戦が終わってからありましょう」
ラスの顔には笑みが浮んでいた。
「敵軍、布陣しています」
見ればわかる事を、兵の一人が叫んだ。目視で約4,000の兵力だ。
「アイオリア様、敵は乗ってきましたね」
リュエルが馬をアイオリアの側に寄せてきた。
「敵も、罠の存在は気が付いているはずなんだがな。こっちの方が数で劣っているように見えるからかな。さて宿題の回答だ、ちゃんと付いて来いよ」
アイオリアは剣を掲げた。
「全軍突撃!」
2,000の軍が動き出した。
「がはは、来たぞ来たぞ。弓隊前へ出ろ」
セルの命令で騎馬隊の前に弓隊が配置された。弓を引き絞り狙いをつける。
「まだだ、ひきつけろ」
国王軍は騎馬隊を先頭に、突っ込んでくる。騎士たちが脇に抱えたランスの一撃は、重装歩兵ですら貫く威力がある。
「放て!」
騎馬隊に向け一斉に矢が放たれた。
後にコウレクト河畔戦いと呼ばれる戦いは、こうして幕を開けた。
次回予告
ぶつかり合う両軍。
アイオリの策が動き出す
次回 内乱16 激突
風は貴方にどんな物語を残しましたか?
なんてセリフばかりの場面(笑
いや、笑い事じゃないのだけど…… まあ、いいか。
さて第2章もラストに向けてGOGOだ。